2017年8月30日に、小金井市立前原小学校の校内研修に、松田孝校長先生からお招きいただいて、参加してきました。松田先生が最初に話をしてくださった今回の研修テーマは、「個性的、個別的な学び」でした。「個性的、個別的な学び」を実現するために、必要な情報やスキルなどについて考える一日となりました。
最終回となるNo.5では、僕をこの校内研修へ招いてくださった、松田校長先生からのコメントを紹介したいと思います。
まず、「どのような思いで、今回の研修を計画したのかを教えてください」と質問してみました。
本校ではプログラミング教育の実践に取り組んできましたが、そこで得た知見が、子どもたちの豊かな「学び」は、個性的で個別的、そして協同のある「学び」にあるということです。この貴重な知見をいわゆる既存の教科学習の中で具現化しようと思い、今回の研修を企画しました。
戦後日本の授業実践を創り上げてきた教科教育の指導方法(基本、画一・一斉の教授)とは全く異質の考え方をもって実践することは、先生方にとっても大変勇気のいることです。しかし本校の先生方はプログラミングの授業で、子どもたちの素敵な「学び」の姿を目の当たりにしています。ICT環境も整い、活用できる秀逸なコンテンツもある。こんな状況にあって、新しい「学び」の創造に向かわないわけにはいかない。そんな思いもあって、実際に授業実践する先生方に本校の使命についても改めて考えてほしいと思いました。
情報端末は先生が効果・効率的に教えるためのツールではありません。子どもたちが「学ぶ」ための必要不可欠のツールです。個性的で個別的、そして協同のある豊かな「学び」こそが、子どもたち一人一人に21世紀を切り拓く「生きる力」を培うと考えて今回の研修を企画しました。
活発なディスカッションもあり、非常に良い研修だったのではないかと見ていて思いました。「研修に参加している先生方の様子を見て感じたことを教えてください」と質問してみました。
研修会当日の朝、私は先生方に次のように話しています。
「本日、一日の研修となりますが、2学期からの新しい『学び』の創造に向けた先生方お一人お一人にとって刺激的な一日となることを期待しています。(中略) その後、3つのグループに分かれてワークショップに入りますが、操作に慣れることはもちろん、いやここは皆さんなら初めに少し話を聞けばすぐ分かること。大事なのは、そのコンテンツを使って、子どもたち一人一人の『学び』をどう深めていけるのかを話し合ってください。操作説明を聞いて使えるようにするのではなく、それを子どもたちの『学び』にどう活かすか、を論議する時間にしてください」
また2学期からのeラーニングの実施に向けて、6月の授業公開後の朝会では次のように話しています。
「私の方針は、プログラミング授業の実践をきっかけに大量生産、大量消費を前提とした工業化時代の昭和が作り出した画一、一斉の授業モデルを、情報端末の絶対的活用による個性化、個別化を志向した豊かな『学び』を創り出すことにあります。以前にもお話をしましたが、今の教育が変わらないのは『誰かの怠惰や悪意』ではなく、人々の『努力や善意』こそが停滞をもたらしているのです。一斉授業の改善は「持続的イノベーション」で結局変わりません。ご自身の教育観、授業観に付き合わせ、経営方針に向かう、方向性を示す取り組みをお願いします」
さらには7月の校内研究の後の朝会では、先生方へ新しい授業実践の覚悟を迫りました。
「(前略)協同が成立するためには、主体的な学びが大前提ですし、そこを育てるためには情報端末をもっともっと活用することが必要だと考えています。算数。コンテンツが揃いました。2学期から、全く新しい『学び』を算数で創り上げていきます。覚悟をお願いします」
研修会全体を俯瞰した時、先生方は研修内容を切実なものとして、いかに子どもたちの豊かな「学び」に活かすことができるのか、という視点と主体性をもって参加していたと感じています。しかし研修の本当の成果は、2学期からの実践で明らかになります。
9月15日は英語活動の授業公開、11月25日には算数のeラーニングの授業を公開しようと考えています。是非とも皆様に研修成果を直接にご判断いただければ幸いです。
最後に、この日は「教職研修」(教育開発研究所)の岡本編集長も参観されていました。岡本編集長から参観のお礼を個人的にいただいておりましたが、了解を得ましたのでここに紹介させていただきます。
「こんなに(先生方にとって)刺激の多い校内研修を拝見したのは、おそらく初めてだったと思います。そして、ただいろんな話を押しつけてそれでお終い、というのでなく、それをふまえて各先生方がどのように展開していくかまでを考えてほしいとおっしゃっておられたことに、感銘を受けました。やるkeyでも、先生方が熱心に試され、質問されている様子が非常に印象深かったです。」
新しい取り組みを行っていくと必ず、「先生方はついてきますか?」との質問を受けます。従来の内容や方法と全く違う取り組みに、躊躇、違和感、抵抗も正直あると思いますが、先生方には「子どもたちのより良い成長に関わりたい!」という願いがあります。21世紀という時代をしっかりと認識し、そこを主体的に生き抜く子どもたちの成長に繋がる「学び」を創造することは、先生方にとっては最高の喜びなのだと考えています。
今回の研修、テーマは「個性的、個別的な学び」というふうにおっしゃられていて、そのために研修のカリキュラムを松田先生が考え、講師を外部から呼んでいます。社会に開かれた教育課程を作っていくために、こういった外部からの講師をどんどん取り込んでいく研修が増えていくといいと感じました。
今後、校内研修を企画される先生方の、何かお役に立てばと思い、レポートをさせていただきました。
(為田)