2017年1月17日に、新潟大学教育学部附属新潟小学校を訪問し、6年生の授業を見学させていただきました。日本デジタル教科書学会の会長でもある、片山敏郎先生 のクラスを見学させていただきました。
見学した5時間目の授業は、総合的な学習の時間。前時に何をしていたのか、説明をしてくれました。今回のテーマは「少子高齢化時代の介護の人手不足にどうAI・ロボットを活用していくのか」です。
出席していた児童39人が、4~5人ずつ、全部で8グループに分かれて座っていました。一人1台のiPadを持っています。
議論の可視化のために、書記を児童に任せる
授業の最初に、前時にどんなことをしたのかを、為田に説明する意味もあり、児童が紹介してくれました。「ロボットが世話をするビデオなどを見た」「リハビリ支援、生活支援、コミュニケーションなどのためにAIやロボットが使われていることを調べている」などと説明してくれました。
児童が発表を次々にするようになる前に、片山先生は「可視化していこう、見えるようにしていこう」と言って、自分のiPadを児童の一人に預けました。先生のiPadの画面は電子黒板に投影されていて、そこに表示されているマインドマップに、児童から出た意見を追記していく役割を児童に任せていました。
話を聴くと、以前は片山先生が司会も書記もやっていたそうですが、やはり両方やると思考が分散してしまうということで、書記の方を児童に持ち回りで任せているそうです。また,子どもの思考整理の手本としての役割や子ども主体の学習形態にするねらいもあるということです。任せられた児童は責任重大です。「しっかりやらなければ!」と思って議論を聴くのではないかと思いました。すらすらと議論の要点を追記して、マインドマップのブランチ(枝)がどんどん増えていきます。ある程度増えてきたあたりで、先生が議論のまとめとふりかえりをし、そこでまた児童が意見を積み重ねていき、それに合わせてマインドマップでの要素の場所を付け替えるということもしていました。
マインドマップを書くのに使っているのは、iPadアプリの「SimpleMind」です。いきなりiPadでマインドマップを作っていくには、タイピングの速度などの制約があるので大変かもしれませんので、付箋でやってみてもおもしろいかもしれません。付箋に書く人、ホワイトボードに貼る人、というふうに役割を分担する方法も可能かもしれません。ただ、デジタルでマインドマップを作っておけば、前回のマインドマップも簡単に読み込み、それに追記できるので便利かもしれません。こうしたところは、端末配備とICTの利点とのバランスの問題かな、と思います。
ツールを児童に選ばせる環境作り
前時のふりかえりが終わると、片山先生は、「この5時間めの授業では、何をしたい?」と質問しました。この質問、とてもおもしろいと思います。先生と児童のやりとりは以下のような感じでした。
児童
「調べたことをまとめて、プレゼンにしたい」
片山先生
「発表まで、今日いける?」
児童
「無理」「今日は無理」
片山先生
「マインドマップでまとめたところまでなら?」「中間発表まではやりたい」
児童
「いけたところまでで、中間発表する」
片山先生
「何を使ってまとめるつもりですか?」
児童
「マインドマップ」「動画」「写真?」
片山先生
「ロイロ使うチームもある?」
児童
「あ、ロイロ」(と手を挙げる)
こうして、授業の中で使うアプリやツールを選ぶことができる環境になっている授業は、実は珍しいと思います。
この後、各自で調べた内容をグループで共有するときに、「何で送る?メール?」「ロイロでいいね」…とやりとりをしながら、メールの画面を出して文面を書き始めたのをやめて、ロイロノートスクールでデータを送っていました。また、「AirDropでもいいかな?」という感じで迷っている子もいます。メールも、一人ひとりがicloudのメールアドレスを持っているそうなので、メールも送る選択肢に入ります。
こうして、「自分の作業と最終的なアウトプットを考えて、何で送るのがいちばんいいのだろうか?」というのを複数の手段から選択をする、というのは、実はICTを活用した授業ではあまり見られません。何か決まったアプリでやっていることが多いと思います。ですが、現状の作業と最終のアウトプット、グループのメンバーが今していること、というのを組み合わせて、どんな手段を使って協業するかを自分たちで決められる活動というのは、児童たちにとって非常に重要なのではないかと思いました。
「こういうのはめずらしいですよね。でも、普段僕らが仕事で使うときはこんな感じですね…」と片山先生に言うと、「たしかにそうかもしれません。うちの授業では、実社会で使えるように、ということを念頭に置いているので、自由にツールを選べるようにしています」ということでした。
No.2に続きます。
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(為田)