2018年1月13日に、三重県教育工学研究会の2017年度 冬季セミナー「次代を生きる子どもにつけたい力と教師の役割」に参加してきました。サブタイトルには「これからの情報教育のあり方を探る」とあり、情報教育について考えるきっかけをいくつもいただいたように思います。
会場から、Twitterで発信もしていたものをまとめます。その場で聴きながらのものなので、誤記等がありましたら、それは為田の責任です。
No.1では、南伊勢町立南勢小学校校長、三重県教育工学研究会会長である、中村武弘 先生による講演、「主体的・対話的で深い学びをめざした授業づくり 〜子どもの情報活用能力を育てる〜」のメモをまとめます。
情報はどこに隠されているかわからない
中村先生の講演は、壇上に8名の会員の先生方が児童役として上がり、模擬授業を含む形式で行われました。ステージに視力検査で使うパネルが表示されました。
おじいさんとおばあさんが視力検査。「おじいさん、この丸の右側が開いている方、どっちが開いていますか?」「右じゃのう」→さて、これは何を検査している?「視力検査」「聴力検査」 #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
視力検査のパネルを前に写しているから、視力検査だと思い込んでしまう。情報はどこに隠されているかわからない。今日はそういう、情報を読み解くと言う話をしていきます。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
なるほどと思いました。自分が知っている場面に近いものが見せられているから、早合点してしまうけれども、よく考えると違う、ということを体験できておもしろいテーマだと思いました。
この「視力検査?いや、聴力検査です」のネタは、桂文珍さんの創作落語が元ネタだそうです。おもしろい事例!「どこに情報が隠れているかわからない」というメッセージを子どもに伝えるときに、おもしろく伝えられそう。 #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
写真のトリミングの話
その後、中村先生は子どもたちが掃除をしている様子を映した写真を見せてくれました。
朝から掃除を自主的に始めた6年生の写真を撮影したときに、意図をもって撮影し、意図的に情報を操作している。ダメダメ実践として写真を撮るのではなく、よかったところにフォーカスするように撮影した。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
その後でどんなふうに見せるのかという意図によって、どこを切り取るのかは変わってきます。「ここができていない」という叱るべき場面を撮影するのではなく、「ここがよかったね」という褒めたくなる場面を撮影することで、その後に「こういうことをやろう」と波及するように意図をしているということです。この写真を見せることで、他の学年の子たちも掃除を自主的にするようになってきたとおっしゃっていました。
「情報を見抜く目」
ここから、情報活用能力のなかの「情報を見抜く目」をテーマにして、5年生の算数と社会の合科模擬授業に進んでいきました。
情報活用能力のなかで、「情報を見抜く目」にテーマを絞って、今日は話していきます。情報活用能力のなkで「どこからそう言えるのか?」を、教科での事例として模擬授業のなかで見ていきます。5年生の算数をベースに合科の形でやります。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
9種類の路面電車の画像を見せて、4年生で習った複合グラフで、「路面電車の走る都市の数と路線の長さの変化(1902年から2012年)」を読み解く授業。折れ線グラフと棒グラフで左右に単位が入っているグラフ。子どもたちに考えたことを発表してもらう。1932年が最盛。 #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
複合グラフを見ながら、中村先生と児童役の先生方(以下、児童と表記)のやりとりがおもしろかったです。児童が「都市の数が増えるほど、線路の長さも増えている。都市の数が減るほど、線路の長さも減っている。」と言えば、中村先生は「都市の数は減っているんですか?」と質問します。すると児童は、「路面電車の走る都市の数、です」と言い直します。“正確な情報を伝えること”を大事にする授業だと感じました。こうしたやりとりは、最初はとても大変だと思いますが、繰り返すうちにだんだんと子どもたちはできるようになりそうだと思います。
こうした些細に思えるやりとりにも、「本当にそうだろうか」とか、自分が考えていること・思っていること、と、事実との差を意識させるなどのトレーニングになると思います。
「増えたところは、路線が増えたのではないか?」「本当にそうかな?」「わかりません」「わからないこと、根拠のないことは言っちゃいけませんね」(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
次の資料を見てみましょう。次の資料は「路面電車の1年間の乗客数」。2006年度と2011年度の2つのデータを、棒グラフで。 #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
児童役の先生方の気づき:「路面電車の走る都市の数は2006年と2011年で、ほとんど変わっていないのに、資料2で見ると、増えているように見える。」「なぜ広島の乗客数が東京よりも人数が多いのか、気になりました。観光スポットなのかな?」中村先生は「そうかな?」と応えていく。 #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
こうして算数の複合グラフの読み方から始まった模擬授業は、グラフで表されていたデータの背景にはどんな事実や事情があるのか、社会科の授業内容と結びついていきます。
そして、この話はメディアをどう読み解くか、メディアリテラシーに繋がっていくのでした。
ここで、Yahoo!で調べた資料をプリント(パピルス型コンピュータ!)を見て調べてみましょう。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
資料を見て、みんながいろいろなことを気づいて、さまざまな視点を共有することが大事。「文章や図表から、意味するところを読み取る」ことが大事。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
それから、情報を処理する知恵としては、「必要なときに的確に情報メディアを活用する」ということ。疑問に思ったときは、それはチャンスだと思います。それから、収集・分析・表現に積極的に使う。「調べる力」を身につけることがこれからは大切。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
調べた内容について「本当にその情報は正しい?」かを気にしなければいけない。「ニュースで見ました」「本当にそう?」多くの情報は、ニュースで見ただけ。そのニュースが正しいかはわかりません。その情報は本当に正しいんですか?誰かがその情報を出しているのです。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
記者や編集者の意図によって、ニュースの伝え方は大きく変わってくる。国民として、それを正しく評価する能力を国民は持たなければいけない。それは、情報活用能力の中で重要な能力になる。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
子どもを伸ばすための基盤
最後に情報活用能力を伸ばしていく方向性、子どもを伸ばすための基盤についての話がありました。
3つの方向性:1 学びの基礎力をつけるトレーニング、学習習慣。2 習得する(インプット) 3 場に応じて学ぶ 永野先生による整理。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
場に応じて学ぶということにおいては、「正解がひとつではない」「試行錯誤する」ということなどが大事。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
子どもを伸ばすための基盤。「子どもと教師がつながる(認め合う)」と「子ども同士がつながる(認め合う)」が土台にあって、そのうえに、「授業の技術(わざ)」がある。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
その子の「価値」を高めるつまずきへのアプローチ。問題のある部分を注意して、「問題を小さくする」というのではない。ほかの良いところをほめてのばすことで、「問題のない部分を大きくする=問題がある部分を小さくする」。(中村先生) #mieict冬セミナー
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年1月13日
ただ知識を覚える、教科の内容を知る、というだけではなく、それを場に応じて使えるようになる=学ぶということのためには、授業中にもある程度試行錯誤をしなければならないと思います。試行錯誤ができるタイプの発問をすることで、多様な意見を教室のなかで比較することができるのだと思いました。そして、そもそも多様な意見が教室のなかで出てくるためには、「子どもと教師がつながる(認め合う)」と「子ども同士がつながる(認め合う)」が土台になければならない、ということだと思います。
「これを覚えなさい」「こうやればいいですよ」というところから、さらに一歩進んで、「場に応じて使えるようになる」ことが、情報教育のあり方の一つの形だと理解しました。非常に勉強になりました(そして、めちゃくちゃおもしろかった!)。
No.2に続きます。
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(為田)