ルチアーノ・フロリディ『第四の革命 情報圏(インフォスフィア)が現実をつくりかえる』を読みました。
ICTが人間の生活にどんなインパクトをもたらすのか、について語っている本。タイトルの「第四の革命」は、アラン・チューリングによる革命であり、コンピュータに関わるもののことです。
第四の革命も、「我々がどのように自分たち自身を認識するのか」ということを考える機会を与えてくれています。コンピュータがただの計算機械ではなく、AIなどの発達を考えると、新しい革命だと考えることもできると思いました。
また、この本では、「オンライフ経験(onlife experience)」という概念が提唱されています。
我々は、ICTが、新しい現実を作り上げ、我々の世界とそこに住まう我々の生活の、あらゆる側面の情報的解釈を加速させているのと同じくらい、我々の世界を変更しているのである。インターフェースが次第に見えなくなるにつれて、こちら側(アナログ、炭素ベース*1、オフライン)とあちら側(デジタル、シリコンベース*2、オンライン)の境界は、どんどん不鮮明になっていく。しかし、これには両者それぞれに利点がある。(略)デジタルオンラインの世界は、アナログオフラインの世界にあふれ出て、それと同化していく。こうした現象の最近の姿は、「ユビキタス・コンピューティング(Ubiquitous Computing)」「アンビエント・インテリジェンス(Ambient Intelligence:環境知能)」「IoT:(The Internet of Things:モノのインターネット)」「拡張ウェブ(Web-augmented things)」などとして、広く知られている。私はそれを、オンライフ経験(onlife experience)」と呼びたい。それは情報化時代の発展の次の段階でもあり、すぐにそうなっていくだろう。我々は、次第にオンライフを生きるようになっているのである。(p.56)
デジタルオンラインの世界は、アナログオフラインの世界にあふれ出て、それと同化していく。そうした経験は、コミュニケーションの仕方などでも、すでに児童生徒でも体験できることのように思います。デジタルコミュニケーションとアナログコミュニケーションの関係、機能的な差異、相手に与える影響の差異。コミュニケーションスタイルも大きく変わります。既読スルーなどの問題や、対面しながらデジタルコミュニケーションを他者とすることに対する感覚など、変わりつつあるように思います(これは世代というよりも、一人ひとりの価値観や職場の文化なども大きいように思います)。
オンライフ経験を、初等教育・中等教育でどれくらいまでさせておくべきなのか。どういった文化のなかで、どういったデジタル環境(とアナログ環境)のなかで、どういうオンライフ経験をさせるべきなのか。そうしたことを考える機会になるように思いました。
(為田)