2020年6月1日に、京都教育大学附属桃山小学校で、髙橋詩穂 先生の5年生の音楽の授業を見学させていただきました。この日の授業は、髙橋先生は学校の音楽室から授業を配信し、児童は各家庭からオンラインで参加するという形で行なわれました。
最初に「きらきらぼし」を英語で歌い、それから階名(ドレミ)で歌いました。髙橋先生はカメラから離れてピアノに向かい、伴奏をしてくれました。ピアノを弾いている先生の姿が見られるのも、普段の音楽の授業の形に近づけるひとつの工夫だと思います。
児童は家でそれぞれ歌っていますが、マイクはミュートになっているので歌声は聞こえません。カメラはONにしている児童が多いので、歌っている顔が見えて、髙橋先生は「大きく口が開いていて、いいですね!」と声をかけていきます。
オンライン授業では、音声の遅延が起こることも多く、特に合唱などのように他の人の声を聴きながら自分で歌うというのはなかなか難しいのですが、その部分よりも先生のピアノの音を聴いて歌うところに集中しているのもいいと思いました。
次に髙橋先生は、「立って、ボディサインで階名を歌いながらやってみましょう」と言います。ボディサインとは、手の動きで音の高さやリズム、音楽の表情などを示しす方法です。「ド」を歌うときのボディサイン、「レ」を歌うときのボディサインと決まっているので、確認してからみんなでやってもらいます。オンライン授業であっても、こうして身体を動かす活動を授業の中に組み込むことができます。
カメラの前で児童もボディサインをやっているのを見ることができます。髙橋先生は、だんだんペースを速くしていきます。最終的には、「超高速で!」となり、児童は笑顔で歌に合わせてボディサインをやっています。オンラインでやっていても、こうした楽しさがあるのだなと感じました。
Zoomのチャットで「超高速は無理です…」と書いている児童がいて、これも普段の教室でのコメントも同じだな、と思いました。
続いて、「きらきらぼし」をリコーダーで吹いてみます。課題で「きらきらぼし」のリコーダー演奏を録音して、音声ファイルを提出してもらっていたので、それについてのコメントをしつつ、指使いについてのアドバイスをカメラに向かって髙橋先生はしてくれました。こうして先生が指使いを大きく見せられるのも、オンラインの利点だと思います。
リコーダー演奏だけでなく、「旋律だけの演奏」と「旋律+低音の演奏」を聴き比べて、ロイロノート・スクールのベン図でまとめる課題も出ていました。実際に「旋律だけ」のときと、「旋律+低音」のときと、どちらも髙橋先生がピアノで演奏してみてくれました。
この後で、まとめたベン図をもとに、ブレイクアウトルームで3~4人でどんなことを感じたのかを交流しました。髙橋先生は、「ああそうなんだ、で終わらずに、なんでそんなふうに聞こえるのかな?と考えてみましょう」と言います。
ブレイクアウトルームには、髙橋先生も回ってきてくれました。「合奏をしていても、低音ばっかり、高音ばっかりはきれいだけど、物足りない気がする」などの意見が出ていました。5分間の交流が終わった後、何人かの児童に意見を発表してもらいました。髙橋先生はホワイトボードに意見をまとめつつ、大切なポイントは、髙橋先生からみんなに見えるようにZoomのチャットにまとめて送っていました。
最後に、「キラキラ輝いている感じをイメージして、リコーダーで吹いてみましょう」と髙橋先生は言い、ピアノの伴奏をします。児童はiPadの前でリコーダーを吹いています。そのイメージを表現するためにどのような演奏の工夫をしたら良いのかを考えます。そして低音が旋律をより目立たせ、支えてくれるということから、「音の重なり」や「低音の働き」について説明していきました。
次回までの課題は、「低音を重ねることで感じた自分の表したい星空のイメージを表現する工夫を考えて演奏したものを提出してください。キラキラ輝く感じになるように、息をつないで吹いてみたり、ローローとタンギングを使ってやわらかく吹いてみたり、工夫をしてみてください」と髙橋先生は言います。
その他、ヘ音記号を書く練習などと合わせて、提出してもらう課題は3つありましたが、いずれもロイロノートで児童に送られます。次回までに、好きな時間に課題に取り組むことができる設計になっていました。
実技教科である音楽を、どんな方法でオンライン授業で教えるのだろうと思いながら参加させていただきました。オンラインで補完できる部分とできない部分を切り分けて、教科の本質の部分を伝える授業をする工夫というのができるのだと感じる授業でした。
No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp
(為田)