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『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』 ひとり読書会 No.1「序文」「第1章 学習者中心の教育パラダイム」

 C.M.ライゲルース、B.J.ビーティ、R.D.マイヤーズ『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』をじっくり読んで、Twitterハッシュタグ#学習者中心のID理論とモデル 」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。

 まずは序文から、気になった部分をレビューしていきたいと思います。

 それぞれについて詳しくは以下のようにどう変わるべきなのかが書かれています。

  • 第1に、教授管理に関して言えば、真に学習者中心の教授は、学習者の進歩が学習時間より学習成果に基づいていることを要求する。
  • 第2に、評価に関して言えば、真に学習者中心の教授では、学習者の学びは同級生の学習成果との比較(集団準拠)ではなく、学習者がいつ次に移行する準備ができたかを知るために到達度基準との比較(基準準拠)である必要がある。
  • 第3に、カリキュラムに関して言えば、真に学習者中心の教授は、産業時代の私たちの先駆者よりもはるかに複雑な社会における学習者のニーズに応えるために、何を学ぶかを決定する必要がある。

 序文からズシンと来る文章が並んでいます。「何を教えるか」「どう教えるべきか」「どのように評価するか」、すべて劇的に変わっていなければならない、ということについては大賛成です。が、これを学校での研修で伝えることはなかなかに大変です。結局、「何を教えるか、を変えましょう」と言えば、「どうやって評価するのか?」という話になるし、「どうやって教えるのか?」ということも合わせて提示しなければならないし、すべては繋がっています。すべてを同時に納得してもらえないと、なかなか効果が上がらない。

 続いて、「第1章 学習者中心の教育パラダイム」へ進みます。この章は、全体的な概観を抑えるところになっています。

 こうして見てみると、学習については焦点を当てているように思うけれど、個々の学習者がみんな違うのだ、という面ではいまの学校ではなかなか対応できていないように思いました。こうして「個々の学習者」と「学習」を分けて考え「個々の学習者の違いにもっと着目しましょう」と伝えることをもっとしていかなければいけないのかもしれない、と思いました。

 この2つをごちゃまぜにしている説明も多くあるかな、と思いました。社会レベルの方については、ここでは「なぜ学習者中心の教育のみがニーズを満たせるのか」についてまでは明確な説明が入っていなかったので、これも今後のテーマとして見ていこうと思います。


  1. 達成度基盤型のインストラクション(attainment-based instruction):
    • 学習者の進捗は、時間よりも学習進度に基づくべきである(p.16)
    • 学習者評価を成績分布に基づく集団準拠評価でなく、到達基準による基準準拠評価にする必要がある。第2章で詳述。(p.16)
  2. 課題中心型のインストラクション(task-centered instruction):
    • インストラクションは、真正な課題のパフォーマンスを中心に構成すべきである(p.16)
    • 内発的動機づけを育てるため。学習者が興味を持ち個々の発達レベルにとって適切なもの。第3章で詳述(p.18)
  3. 個人に合わせたインストラクション(personalized instruction):
    • 課題遂行時のインストラクションは、個人に合わせるべきである(p.16)
    • 学習ゴール、課題、足場かけ、学習評価、省察の性質を個人に合わせる。第4章で詳述(p.19-20)
  4. 役割の変化(changed roles):
    • 教育者・学習者・テクノロジーの役割を転換すべきである(p.16)
    • 指導者は「壇上の賢人から側にいてくれるガイドへ(From a sage on the stage to a guide on the side)」、学習者も能動的で自己主導へ。テクノロジーも指導者のためのツールから学習者のためのツールへ。(p.21)
  5. カリキュラムの変化(changed curriculum):
    • カリキュラムを拡張・再構成すべきである(p.16)
    • 認知的、身体的発達だけでなく、感情的、社会的、人格的な発達も含め、個々の学習者の発達における重要な側面すべてを扱っていく必要がある。第5章で詳述(p.24)

 どれも「そうそう」と納得いくものでありつつ、「では?どうやって?」という部分がとても気になります。この後、詳細に各章で書かれていくのが楽しみです。

 いずれも学校で実装できればとても意義があるものだと思っています。「なぜ」と「どうやって」をなるべく読み取っていけるようにしたいと思います。

 No.2へ続きます。
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(為田)