C.M.ライゲルース、B.J.ビーティ、R.D.マイヤーズ『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』をじっくり読んで、Twitterのハッシュタグ「 #学習者中心のID理論とモデル 」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。
今回は「第9章 自己調整学習のためのインストラクションのデザイン」を読んでいきます。そもそも、「自己調整学習とは?」というところから話は始まります。
「自己調整学習(self-regulated learning: SRL)とは、積極的かつ意図的に学習のゴールを設定し、それらを達成するために認知、行動、動機づけ、および環境をモニターし、調整し、管理・評価する学習者の能力を指す」(p.244)→「能力」ではなく学習スタイルだと思う。 #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 6, 2020
自己調整学習を「自分で勉強できるようになってほしい」くらいの定義で言うならば、初等中等教育で重要だと思われているものだと思いますが、これを「学習者中心」で自己調整学習を行う、となるといままでの学校や授業とはだいぶ形が変わってくるように思います。
最近、自己調整学習(SRL)は再び注目を集めているらしい。「これは、学習者中心の教育への関心が高まり、SRLを可能にする教育技術が開発されたことによる」(p.244) #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 6, 2020
「教育の役割は大量生産向けの工場労働者を育てることから、継続的な革新と知識創造へ向けた知識労働者を育てることへと変化した。そして、教育の焦点は、学習者を選別することから全学習者の学習を促進することに移ってもきた」(p.244) #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 6, 2020
教育の焦点が「学習者を選別すること」=受験から、「全学習者の学習を促進すること」に移ってきている、というのはいい言葉だと思います。どちらのほうが、中長期的に重要かは明らかだと思います。
「学習者中心の教育では、学習者が学習過程においてもっと積極的な役割を果たす必要があるという前提がある。(略)学習者中心の教育では、学習者が自分の学習活動をもっと制御する」(p.244) #学習者中心のID理論とモデル
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「現在の情報時代の教育パラダイムでは、学習者中心の教育が中心的であり、SRLは21世紀の学習者にとって不可欠なスキルまたはコンピテンシーとして注目されてきた」(p.244-245) #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 6, 2020
自己調整学習(SRL)は、「学習者は自分のゴールを達成するために自分の認知、行動、動機づけ、および環境を調整する、というもっとプロセス指向の概念である」(p.245)←初等中等教育では、新しい知識の必要性を自分で見出す「自己主導型学習」よりSRLが近いと思う。 #学習者中心のID理論とモデル
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「学習者中心の教育では、学習者は学習のオーナーシップを持ち、学習は個別的な違いに合わせてカスタマイズされる。」(p.245) #学習者中心のID理論とモデル
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さまざまな研究から、完全習得学習には「個別の学習者の違いに基づいて各々のチューターが学習方略や学習ベースを調節する個別チュータリングが、学習体験をカスタマイズするための最良の指導方法である」(p.245-246)とわかっていたが、リソース不足で不可能だった。 #学習者中心のID理論とモデル
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「技術の発展により、真正なオンラインマルチメディア学習環境やコンピュータによる適応型チュートリアルなど、教育における新しい学習形態が可能になった」(p.246)→ここはEdTechのキュビナやatama+(アタマプラス)などアダプティブラーニングサービスに繋がる。 #学習者中心のID理論とモデル
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学習ゴールを達成するうえでの自己調整学習(SRL)の「重要性を、指導者と学習者の両方が認識していることが重要である。学習を自己調整する能力は、学習者が学習課題を達成してゴールに到達するのを助ける」(p.247-248)だけでなく、学習者を効果的な生涯学習者にする。 #学習者中心のID理論とモデル
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「自己調整スキルは教育の効果を向上させる。自己調整することで学習者による制御と興味関心の追究を可能にし、それが教育の魅力を向上させる」(p.248) #学習者中心のID理論とモデル
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自己調整学習(SRL)のための教育方法が常に含むべきなのは、「学習者が効果的に対応できる限り、学習内容、学習方法、学習時間、学習場所について学習者に制御させる」(p.248)など。これだけのことを先生が手放して、児童生徒に信頼して任せる。すごいこと。 #学習者中心のID理論とモデル
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自己調整学習(SRL)スキルを教えるための方法が6つ紹介されていました。以下にメモを公開します。
自己調整学習(SRL)スキルを教えるための方法(p.249-259)
- 問題指向またはプロジェクト指向のタスクを使用する
- 学習者が現実社会の課題に従事している場合に学習はより促進される
- 問題基盤型の学習、プロジェクト基盤型の学習、探究型学習などの学習者中心のアプローチが望ましい
- 指導者はインストラクターではなくガイドやメンターの役割を果たす
- 準備のための十分な時間とガイダンスを学習者に提供する
- 学習ゴールと課題を明確にする
- ゴールの個人差を受け入れる。「指導者は設定するゴールに個人による違いがあることを受け入れるべき」
- 学習者が関連する過去の経験を思い出すようにする。
- 継続的な評価を確実にする
- 自己調整学習での評価は、モニタリングとフィードバックの方法を重視する
- 学習者のためにSRLのモデルをみせる
- 応用の機会を学習者に提供する
- SRLスキルと知識に関する直接的指導を学習者に提供する
- 「学習者が特定のSRLスキルと関連知識に精通していない場合には、学習に対するオーナーシップと責任を彼らに与えても、学習の成功は保証されない。最悪の場合には、学習者がSRLで困難さだけを経験し、最終的に学習への興味と動機づけを失うかもしれない。」
自己調整学習(SRL)教育の実現には、時間も手もかかるのはもちろんのこと、「児童生徒を信じて任せる」ということがなければいけません。そのうえで、「どうやったら自己調整できるようになるのか」をモデルを見せたり、方法を伝えたり、転移させたりといろいろしなければなりません。
自己調整学習(SRL)教育では、「問題基盤型学習やプロジェクト型学習(PBL)のような学習者中心のアプローチが必要である。通常、それらの教育には、準備と実施に時間がかかる。さらに、効率を向上させるためには、学際的な課題が有益である」(p.262) #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 6, 2020
No.10に続きます。
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(為田)