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『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』 ひとり読書会 No.2「第2章 コンピテンシー基盤型教育の原理」

 C.M.ライゲルース、B.J.ビーティ、R.D.マイヤーズ『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』をじっくり読んで、Twitterハッシュタグ#学習者中心のID理論とモデル 」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。

 今回は「第2章 コンピテンシー基盤型教育の原理」を読んでいきます。コンピテンシー基盤型教育(Competency-Based Education=CBE)について書かれている章です。おそらく、あまり理解度が高くないと自己評価しています。読んでいて、実例というか授業の形が自分で思い描けていない感じがするのです。

 受動的な座席時間=授業を受けていればOK、ということではなく、学習成果をきちんと実演できる(=パフォーマンスが示せる)ことを求めるということで、学習に新しい見方を提供する、ということなのだと思います。履修主義と修得主義の考え方に近いかたちになっているのでしょうか。

 パフォーマンスを示すような活動(プレゼンテーションだったりプロジェクトだったり)を授業のなかに取り入れやすそうなので、大学だとたしかにコンピテンシー基盤型の学習はやりやすそうだな、と思っていたら、「CBEモデルは、学生生活以外の他の義務に悩まされ、時間が貴重な年長の学生のライフスタイルに適合している」(p.38)とも書かれていました。ライフスタイルの問題と言うよりは、授業スタイルの問題のようにも思いました。
 初等教育中等教育でのコンピテンシー基盤型教育(CBE)について知りたいな…と読み進めていくと、小学校での大切な教育課題だと僕が思っている、「完全習得」との関連が書かれていました。

 ここも、自分的にはあまりわからず、そのまま読み進めていくことにしています。(こんなのばかりになってきて不安…)

 言葉として書かれている文章はわかるものの、こうした基礎知識がない僕には、「じゃあ実際にどんなコンピテンシー基盤型教育(CBE)が設計できるのか」「それがどんな授業になるのか」、そして「子どもたちがどんな感じに学んでいくのか」を見ないとわからないんだな、と力不足を痛感します。

 と言いながら、コンピテンシー基盤型教育(CBE)設計について具体的に書かれているところへ進みます。まずは、コンピテンシー基盤型教育の根底にある価値観です。

コンピテンシー基盤型教育の根底にある価値観(p.42)

  • 個人と個人の学習の成功に焦点を当てる
  • 学習は明示的かつ測定可能である
  • 評価への期待を確立する上で学習者は重大な要素である
  • 学習者がすでに知っていることと、学習者が知る必要があることとの間の明文化されたギャップが学習経験を促進する
  • 実演は学習が生じたという紛れもない証拠を提供する
  • 時間は重要である。特に他にやるべきことがある個人にとって
  • 時間は学習の尺度としては不完全である
  • 情報提供者から学習促進者へ指導者が役割を転換することは、学習者と指導者自身にとっても健全なことである

 「個人と個人の学習の成功に焦点を当てる」「学習は明示的かつ測定可能である」「学習者がすでに知っていることと、学習者が知る必要があることとの間の明文化されたギャップが学習経験を促進する」というところは、授業設計のときには気にしたいと思っているところだし、「情報提供者から学習促進者へ指導者が役割を転換することは、学習者と指導者自身にとっても健全なことである」というのも、ICTを活用している授業などでこうした姿勢の先生方を見てきていて、本当にそのとおりだと実感しているものです。

 続いて、コンピテンシー基盤型教育(CBE)の設計原理が書かれています。全部で8項目、それぞれの項目メモを書いておきます。

コンピテンシー基盤型教育(CBE)の設計原理(p.42-50)

  1. 学習者に期待されるパフォーマンスに基づいてコンピテンシーを記述する
    • 学習者は、成功に必要な明示的なスキルと知識の完全習得を実演できたとき、コンピテンシー基盤型のカリキュラムを前に進める。
    • 完全に記述されたコンピテンシーが、完全習得の判断基準となる。
      • コンピテンシーの基本要素として、「学数社が特定のコンピテンシーに対して、認知、情意、精神運動スキルを実演する必要があるかを記述する」「予想される学習者のパフォーマンスを特定する」「測定の文脈を決定して記述する」「学習者の完全習得の閾値を識別する」「要求されるパフォーマンスが、学習者のこれまでの経験や適性、および特性とどのように関係するか」
    • コンピテンシーを記述するときには、「良い」「効果的な」「適切に」「迅速に」「ゆっくりと」などの修飾語は避ける。パフォーマンスを学習者自身が確認できるように、定量化できる単語を含める必要がある。
  2. コンピテンシー全体の達成を支援するために足場かけを用いる
    • 足場かけは、学習者が一連のコンピテンシーを達成するための明確な経路を示す。
    • すべてのコンピテンシーをカバーする領域マップ(domain maps)をあs癖医師、それらが互いにどのように関連しているかを示すことができる。
  3. 学習を加速させるようにコンピテンシーを構造化する
    • 学習者の進捗は、学習時間ではなく完全習得に基づくべきである。
  4. コンピテンシーの評価は、基準準拠型で、個人に合わせたもので、柔軟であるべきである
    • 学習者を互いに比較して評定をつけるのではなく、個人に合うようにコンピテンシーが設計されるべき。
  5. コンピテンシーの記述文が適切な評価を決定する
    • 学習者が「事前に」どのように評価されるかを知ることができると、学習者とファシリテーターがそれに向け、コンピテンシーに至る過程にて何を完全習得すべきかを知ることが可能になる。
  6. 各教育現場で開発された評価と、市販の評価ツールの利用とのバランスをとる
  7. CBE追跡システムを実装する
  8. CBEを成功させるには評価が必要である

 「コンピテンシー基盤型教育(CBE)」についてじっくり読み進めてきましたが、わかるところとピンとこないところがまだらにある感じです。時間で測らないこと、習得したかどうかの評価が重要であることなどは実感が伴ってわかる部分だし、日々苦しんでいるところなので、このあたりを軸にさらに周囲を学んでいきたいと思います。

 No.3に続きます。
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(為田)