C.M.ライゲルース、B.J.ビーティ、R.D.マイヤーズ『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』をじっくり読んで、Twitterのハッシュタグ「 #学習者中心のID理論とモデル 」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。
今回は「第10章 教育的コーチングのデザイン」を読んでいきます。この章のタイトルにもなっている「教育的コーチング」は、生徒たちの学びに寄り添っていく手法としてのコーチングではなく、「指導者が上達するのを手助けすることに焦点を合わせている」とのことで、弊社が目指している「Help Schools Become Future Ready」を実現するのに役立ちそうだと思いながら読みました。
「過去20年の間に、(専門職の能力開発としての)教師を対象としたコーチングを学校でどのように実施できるかについての関心が高まっている」(p.268)→ここでのコーチングは、教師の指導と学習者の学習を改善するための、コーチによる教師に対する1対1のトレーニング #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 8, 2020
教育的コーチング(Instructional Coaching)は、米国の学校で広く実施されているコーチングへのアプローチで、「1対1のコーチングに典型的なゴール設定、問いかけ、およびデータ収集が、説明やモデリング、およびフィードバックと統合される」(p.268) #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 8, 2020
「教育的コーチは教師と協力して、教師が研究に基づいた教育実践を自分の指導に組み込むことを支援する。」(p.270) #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 8, 2020
「教育的コーチは、指導実践についての十分な知識を持ち、頻繁にモデルレッスンを提供し、教師を観察し、教師と共有する指導実践についての説明を簡素化する」(p.270) #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 8, 2020
教育的コーチングの背後にある理論=パートナーシップアプローチ:「教育的コーチは、教師のプロ意識を尊重する。コーチと教師は、自分たちの関係を専門家と初心者との関係ではなく、対等な真のパートナーシップとみなすという基本的な信念に基づいて関わる」(p.270) #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 8, 2020
ここで書かれているパートナーシップアプローチは、個人的にとても共感できると思いました。「専門家と初心者との関係ではなく、対等な真のパートナーシップと見なす」のももちろんだし、そもそも子どもたちに日々関わっている先生方を信頼しなければ、学校で何かを成し遂げることはできないと思っています。
お手伝いできるところをする、モデルを提示できるならばする、事例を紹介しそれを各校の状況に合わせて比較する、いろいろなことができますが、最終的にはその学校の先生方がイニシアチブを持つべきなのです。このあたり、Action Reseachの考え方にも近い(のだと僕は理解しています)。
では、そのパートナーシップはどのような価値観に基づいて行われるべきなのか、まとめられていますので、メモを公開します。
パートナーシップは教育的コーチが行うすべてのことを形作る価値観に基づく(p.270-271)
- 対等
- パートナーシップは対等であり、すべての人の考えと信念には価値があると考える。
- 各個人は異なっているが、どの個人も他者のことを決めることはしない。
- 選択
- パートナーシップでは、ある個人が別の個人のために決定を下すことはない。
- パートナーは自身で個別の選択を行い、協働して決定を下す。
- 対話
- 相互に受け入れられる決定に到達するために、パートナーは対話を行う。
- 1人の個人が他者を強制、支配、管理はしない。
- その代わりに、パートナーは対話をし、アイデアを模索しながら一緒に学ぶ。
- 行動化(praxis)
- 声(voice)
- パートナーシップに参加しているすべての個人が自分の考え方を述べる機会を多く持つ。
- パートナーシップの主な利点は、各パートナーがすでに知っていることを単に繰り返すのではなく、他のパートナーから学ぶことにある。
- 互恵的関係(reciprocity)
- パートナーシップでは、誰もが他のすべての人の成功、学習、または経験の恩恵を受ける。
- パートナーシップアプローチをとる人々は、学ぶことを期待して会話を始める。
そして、教育的コーチングのプロセスについても全部で6つのプロセスにまとめられていました(p.271-277)。自分なりのまとめメモを公開します。
教育的コーチングのプロセス(p.271-277)
- 観察とゴール
- 個人の成長には、(1)現在の現実についての鮮明な描写 (2)個人にその現在の現実を越えて動く動機づけを与える鮮明なゴール が必要(ロバート・フリッツ)
- 教師の現在の現実を観察し、データを収集する。
- 教師とコーチがデータを確認した後で、一緒にゴールを特定する。
- 投資効果が高い実践
- 教師がゴールを同定した後、コーチは、ゴールを達成するために教師が実施する可能性のある根拠に基づいた実践を提案する
- 学習内容の計画
- 形成的評価の実践
- 指導の実践
- 共同体構築
- 教育的コーチング中、教師による実践は、学習者のゴールを達成するのを助けるためにのみ行われる。教師が新しい実践を学ぶのを教育的コーチは手助けするが、教師のゴールを達成するためだけにそれを行う。
- 明示的な説明
- 教育的コーチは、新しい教育実践を説明するとき、明確で行動しやすい説明をする。そうでないと教師は新しい教育実践を教室に転移できない。
- 一方で、実践をどのように実施するかを教師に伝えるだけでは、教育的コーチングのパートナーシップアプローチと一致しない。そのため、教育的コーチは実践を詳細に説明するが、暫定的に扱う。
- モデリング
- 意図的な練習とゴールに向けた進捗
- 新しい実践方法について聞いて、それがモデル化されているのを見ることでコーチングのプロセスが始まる。
- 教師は新しい実践を練習し、コーチは実践の影響に関するデータを収集して共有する。
- 省察
「教育的コーチと教師との関係は、ある信頼レベルが確率されたときに最も効果的である。コーチが特定の教師の有効性の評価者として行動するように求められると、その信頼関係は揺さぶられ、多くの場合に深刻な被害を受ける。」(p.278) #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 8, 2020
「教育的コーチの役割を、教師を評価するものではない、と定義することは、効果的なコーチングモデルの重要な側面である」(p.278) #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 8, 2020
「教育的コーチは、より多くの学習者のためのより良い方法を教示が見つける助けとなるために教師と協力することにより、学校の改善に非常に重要な貢献をする」(p.279) #学習者中心のID理論とモデル
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) September 8, 2020
この第10章で書かれていた、「教育的コーチ」についての内容は、いまの弊社の、自分の仕事について非常に大きなヒントになりましたし、明確に持っていなければいけない価値観だな、と感じました。いやー、すごい。ちゃんとこうしたことがまとまっているのですね。本当にすごい。
…ということで、No.11に続きます。
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(為田)