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『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』 ひとり読書会 No.6「第6章 メイカー基盤型インストラクションのデザイン」

 C.M.ライゲルース、B.J.ビーティ、R.D.マイヤーズ『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』をじっくり読んで、Twitterハッシュタグ#学習者中心のID理論とモデル 」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。

 今回は「第6章 メイカー基盤型インストラクションのデザイン」を読んでいきます。この章から第2部 学習者中心の教育パラダイムのより詳細なデザインになります。メイカー基盤型というのも、テクノロジーあってこそのものです。

 学校内にFab Labをもっているところもあります。3Dプリンタなど「自分で作る」ことができるようになる。そのためにデジタルを活用する。それによって自分で世界に関わっていくことができる。プログラミングと似ているのは、自分で作って世界とどんどん関われるところ。プログラミングと違うのは、実際に形のあるものを作るので、適用できるところがリアルな世界で端末もプラットフォームも何もいらないところ、だろうか。

 このメイカー教育の文脈を、プログラミング教育と組み合わせることがあまりされないのってなぜなのだろう。うまく組み合わせられればいいのにな、と思うのだけど。

 僕はメイカーについては、『MAKERS』で初めて知ったように思うのですが、ぽっと出てきたものではなく、古くからある学習理論と共鳴していると言います。


 この「できあがった作品よりも作るプロセスに重点」というのは理解できるけど、学校教育との相性が悪いところかもしれないと思っています。作るプロセスに没頭して膨大なムダをする、ということがとても大事だけど、なかなか学校教育の中でその余裕はない(評価もしにくい)ように思んですよね。

 続いて、メイカー教育の実践のために、教育環境をどのように整えるべきか、その土台にある価値観について書かれています。

  • 行うことによる学習:
    学習は意味のある文脈で何かを行うことによって促進することができる
    • 「メイカー教育の多くは、製作のための学習というよりも、学習のための製作という方向に価値を見出している」(p.151)=できあがった作品よりも作るプロセスに重点を置く考え方。
    • 「子どもたちはプログラムされたモノに囲まれ、それらとやりとりしながらデジタル世界に住んでいる。メイカー教育のプロジェクトによって、彼らが体験している世界でコンピュータ要素が実際にどのように動いているのかを理解し始めるかもしれない」(p.151)
  • 共同体の中に位置づける:
    イカー教育での学習は、コミュニティ内に位置づけられている
    • 「人の学習は、その環境の文脈の中にある」(p..152)
    • 「モデルや文章、その他の知識表現を作成することを学習者に要求するプロジェクトでは、コンピューティングの要素を追加することで、知識とスキルをコミュニティ全体に分散できるように変形させることができる」(p.152)→作ったものを社会に対して投げかけられる=分散できる、というのは社会という文脈に学びを接続するのでとてもいいと思っています。いま関わっているプロジェクトも、まさにこういうふうに考えてカリキュラム書いてます。
  • 能動的で自己主導的:
    イカー教育での学習は、大部分が能動的で自己主導的でなければならない
    • 「指導者やその他による制御を外してやることではなく、むしろ、手引された環境で価値を感じられるものを追求する自由を学習者に与えることによって、自己制御が促進される」(p.152)
    • 「メイカー教育の活動は、生産性の低い活動、あるいは非生産的な活動へさえも発展する可能性があることに留意することが重要であり、したがって、インストラクショナルデザインの重要性と役割を考慮する必要がある」(p.153)
    • プログラミング教育の授業で、「うーん」と僕が思うことの多くは、ここに起因していると思う。この「非生産的な活動」になっちゃっているけど、でもプロセスは素晴らしいということがときどきある(もちろん、いつもではない)。それをどう見つけてあげられるか。

 続いて、メイカー基盤型インストラクションのデザインを実践する際の普遍的原理が紹介されていました。

 項目を抜粋し、それぞれ関心があったところをまとめておきます。上の7つとそのまま対応する訳語をあてればいいのに…。もしかして原文では違う単語をあてられているのかな…(すみません、原本にあたる元気はなく…と白状します)。

イカー基盤型インストラクションのデザインを実践する際の普遍的原理(p.153-159)

  1. 出発地点を特定する
    • 「生産的で独創的なメイキングは、個人個人のひらめきや興味、あるいは相互作用に基づいた出発点から始ま」る(p.153)
    • 上記のような「興味に導かれた共同体を公的なものにし、それを教育課程に変換することの難しさの1つには、インフォーマルな学習文脈におけるメイカー空間の特徴が教室で容易hに再現できないことがある」(p.153-154)
  2. 道具、材料、資源を提供する
  3. 設計のゴールを策定する
    • 「設計のゴールは、文脈の中の重要な要素である。設計のゴールは主に学習者主導であるが、通常は何らかの方法で指導者と協働で構築される」(p.155)
    • テクノロジー中心(「私は何を作ることができますか?」と問うこと)の設計ではなく、人間中心(「なぜ私はこれを作っていて、それを誰が経験するのですか?」と問うこと)の設計であると考えられている。
    • 学校のプログラミングの授業で、人間中心に「なぜ私はこれを作っていて、それを誰が経験するのですか?」と問うことから見えてくるゴール策定を待っていたら膨大な時間がかかる。これをスモールステップで小さいゴールを見つけられるように設計をしてあげたいところ。
  4. 設計課題を構造化する
  5. プロトタイプ製作、失敗、洗練のサイクルを促進する
  6. 意味のある探究の問いを生成するように学習者を支援する
  7. イカー工房を超えた価値を促進する


 章の最後に、「おわりに:積み上げること」と出してあって、指導者=先生の役割についても触れられていました。

 多くの箇所で、「指導者」という言葉が出てきて、指導者がメイカー基盤で学ぶ場を、文脈の中に位置づけて、そこでどう学ぶかを設計し、さらに寄り添って作っていく、ということが書かれていました。
 この章の最後の、「テクノロジー実施の成功への鍵となる要因は、指導者のテクノロジーを扱う能力と社会的認識、そして、教室で成功する革新を生むために彼らの教育学的信条をテクノロジーと整合させる能力である」というところ、すごく好きです。あちこちの研修で言いたいです。

 メイカー基盤型インストラクションでFab Labなどの方を自分でやる予定は現在はないですが、ここで書かれている文脈をプログラミング教育の文脈に当てはめられないかな、と考えてみたいな、と思いました。非常に勉強になりました。

 No.7に続きます。
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(為田)