教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

石巻市立河南東中学校 授業レポート(2020年9月4日)

 2020年9月4日に、石巻市立河南東中学校の藤原英治 先生が、3年生の技術・家庭科の授業で先日ブログで紹介した、茂木外務大臣の会見の記事と動画を生徒たちに見てもらい、素直に感じたことを書いてもらうという授業をされたそうです。藤原先生から伺った情報をもとに、授業レポートをします。

 授業では、先日問題となった茂木外務大臣の記者会見に関する記事と、記者会見動画を教室でみんなで見ました。生徒たちは、つい最近の出来事だと知り、とても興味をもって取り組んでいたそうです。
www.youtube.com

 こうして、起きてすぐのニュースなどを教材として使うことができるのは、ICTを活用することによる利点の一つだと思います。

 記事と動画を見た後で、どう感じたかを課題として提出できるように、藤原先生がGoogleフォームを作りました。授業の流れは、以下のようでした。生徒たちはPC室でGoogleクラスルームからアクセスして答えました。

  1. 記事の説明
  2. 全体で動画視聴
  3. 個別で課題作成
    • Googleクラスルームにより動画とフォームを配布
    • 自分のタイミングで動画を再視聴しながら、課題に取り組む
  4. 課題提出
  5. 授業終了
  6. Googleフォームで集計結果確認

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 Googleフォームでは、「茂木外務大臣と外国人記者のどちらの発言や態度が気になりましたか?」「記事と動画を見て感じたことを書きましょう」という質問に答えてもらいました。
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 藤原先生に見せていただいた回答結果を見ると、回答総数25人のうち、「茂木外務大臣の発言や態度が気になる」「外国人記者の発言や態度が気になる」と答えた生徒はそれぞれ数人だけでした。そして、半数以上の生徒たちが「その他」の回答になっていました。どちらも悪い、というような印象をもった生徒がほとんどだったようです。

 「記事と動画を見て感じたことを書きましょう」の回答には、以下のような書き込みがありました。
 今回の授業では、生徒たちは一斉に動画を見た後で、個別に課題に取り組んでいるときに、自分の好きなタイミングで何度も動画を見返すことができます。それによって課題の記述内容が濃いものになったのではないか、と藤原先生は言っていました。

  • 記事だけを見ると茂木外務大臣が悪く見えた。動画を見て外国人記者側の質問の仕方が難しいと思った。
  • 私は記事を見て茂木外務大臣が圧倒的に悪いと思ってました。ですが、実際に会見を見て記者の人の英語で返された時の反応も強く言いすぎではないかなと思いました。(略)記事の書き方でこんなに印象が変わるんだなとびっくりしました。
  • 会見の動画を見て僕は、外国人記者も茂木外務大臣もお互いの気持を考えて話すべきだったと思います。茂木大臣は英語で話したほうがわかりやすいと思って英語を使ったのだと思います。しかし、外国人記者は馬鹿にされたように感じたのだと思います。これは二人が自分の言葉に対する責任が足りなかったから起こったのだと思います。これから、自分の言動に責任を持って生活していきたいです。
  • 私は、この動画を見て、茂木大臣は相手の記者のことを思って英語で言ったと思いました。だから私は、茂木大臣は悪くないと思うし、外国人の記者の捉え方がすれ違ったと思いました。記事を見たときは、茂木大臣が悪いと思ったけど、動画を見て考えが変わったので、自分なりに調べたり、考えたりしてこれからニュースを見ていきたいです。
  • 私は動画と記事を見て、二人のすれ違いだと思います。大臣側は記者さんの日本語を聞き取ろうとしていた場面もあったし、英語の返しもよかれと思ってやったのではないかと思います。記者さんは、それを馬鹿にされてると思った。たしかに、最後の一言は余計だったけどそこは見逃してもよかったのではないかと思います。結果、二人がもっと相手のことを考えていればこんなことにはならなかったと私は思います。

 「記事と動画とを見て、感じ方が変わった」と書いている生徒が何人かいることに気づきます。こうした体験をするのも、ICTを活用することの良さだと思います。
 あらゆることは、それを伝える人の視点が入りますし、編集の仕方によって感じ方が変わることもわかります。メディアから公平に情報を得ることができるようになるよりも、「たくさんのメディアに接して、自分で判断をしなければならない」と実感することはとても大切だと思います。そのために、多様なメディアに接する機会を授業の中でもち、それをクラス内でみんなで見ていくことは重要だし、学校で学ぶ意義が大きいところだと感じました。

 今回のこの授業では、記事と動画に簡単にアクセスするという箇所と、Googleフォームを作り、実施し、簡単に集計するという箇所に、ICTを活用しています。こうしてテクノロジーを簡単に教室で使えるようになれば、「先生がやりたい授業」をより簡単に実現できるようになると思っています。テクノロジー+先生方の授業設計力で、どんどん学びの幅を広げていってほしいと思います。

(為田)