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静岡県立掛川西高等学校 授業レポート No.1(2021年7月15日)

 2021年7月15日に、静岡県立掛川西高等学校を訪問し、高柳有希 先生が担当する1年7組の英語の授業を参観させていただきました。
 高柳先生の授業では、先生のiPadの画面をApple TVと接続したプロジェクターで黒板に投映して進めていきます。iPadの画面なので、板書の代わりになるノートやストップウォッチなど、さまざまなものが表示されます。

 授業の最初に問題プリントに取り組んでいたときには、ストップウォッチが画面に大きく投映されていて、8分間で25問の問題に取り組みました。問題を解き進むスピードは生徒によってそれぞれですが、大きくストップウォッチが黒板に表示されるのは見やすくていいと思います。時間が終わると、隣同士でプリントを交換して、答え合わせをしていきます。
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 問題プリントが終わると、今回の授業のテーマである「動名詞」の解説へと進みます。高柳先生は黒板に文法事項や解説、例文などを書くことはなく、手元のiPadから黒板にノートを投映して説明をしていきます。授業の進度に合わせて、生徒たちが読みやすいように拡大表示しながら授業を進めていきます。すべてのことをその場で書いていくと、時間がかかってしまいますが、そうした時間を効率化することで、生徒たちとのやりとりをして、生徒たちの様子を見とる時間ができていたように思います。
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 生徒たちは、高柳先生が示す説明を自分でノートにとっていきます。先生が黒板に解説を書く時間がないぶん、スピードが速く進むように思いましたが、途中で「これまでにやってきた、“to+不定詞”と“動名詞”の違いは何でしたか?」と高柳先生が発問し、黒板の内容をノートに書き写すために時間を使うのではなく、隣の人と説明をし合う時間をとっていることなどが印象的でした。
 そのほかにも、参考書を見たり電子辞書を見たり、各自がそれぞれに自分に必要な学び方を選んでいます。ノートをただ書き写すことになってしまう時間を減らして、自分でどう学ぶかを考える機会がある授業によって、掛川西高校が生徒たちの求めている「主体性」や「協働性」を育む時間になっていると思いました。
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 授業の終盤では、授業で説明した文法事項を使った英作文の練習を行いました。高柳先生がKeynoteで日本語文を表示し、それを英訳していきます。ここでも、すべての問題をプリントやノートに書く、ということはしません。「出題された問題を英語にして、隣の人と話し合って」と高柳先生は言います。話し合いが進んで、多くの生徒が英訳に取り組み始めたくらいのところで、正解の英文が表示され、高柳先生が解説をしたら、次の日本語文が表示されます。
 「正解を全文書ける」ということに主眼があるのではなく、すべてを書く必要すらありません。出題される問題はプリントして生徒に配布されているので、あとで自分なりに復習をすることは可能です。ここでは、文法事項を全体で復習するようになっていました。
 こうした英訳問題などで、出題と回答を表示するためにKeynoteを使うときには、回答画面は段階的に表示する先生も多いと思います。例えば、最初は正解の英文の主語と述語だけが表示されていて、先生がクリックするごとに少しずつ文章や句が増えていって、それをヒントにしながら解説をする、という具合です。もちろん、生徒の習熟度にもよると思いますが、こうした形での回答の表示もいいなと思いました。
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 高柳先生のiPadのカメラロールには、この日の「動名詞」のノートだけでなく、たくさんのノートが収納されていました。一つひとつの授業用のノートをデジタルで作らなくても、手書きで作成したものを写真で撮影して投映するという方法も可能です。
 高柳先生は、授業の途中で「今日のノートがほしい人は、AirDropで渡せます」とも言っていました。授業支援ツールなどを使っていなくても、デジタルで作成したノートを黒板に投映したり、生徒と共有したりすることができるようになると、こうした授業もできるようになります。
 こうした方法がとれるようになると、プリントの作り方、プリントの配布の仕方、プリントへの取り組み方、授業の設計なども変わってくると思います。そうしたことを考えさせてくれる授業でした。

 No.2に続きます。
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(為田)