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富士見市立針ケ谷小学校 授業レポート No.5(2023年9月13日)

 2023年9月13日に富士見市立針ケ谷小学校を訪問し、半田恵里 先生が担当する5年2組の国語の研究授業を参観させていただきました。今回の授業は、「たずねびと」を読んで、人物像や物語などの全体像を具体的に想像したり、表現の効果を考えることを目標としていました。
 授業の最初に半田先生が黒板の右側に貼った模造紙には、「たずねびと」は悲しいだけの話なのか考えよう、と単元のゴールが書かれていました。
 黒板の左側には、「たずねびと」をどんな視点で読むのかを子どもたちが決められるように、変化(心情・関係)、登場人物、情景、セリフ、心内語などの視点が書かれていました。ここに書かれている視点を手がかりに、子どもたちは自分で「どのような視点で」読むのかを決めて教科書を読んでいきます。

 このように視点を決めて自分で「たずねびと」を読む活動は前時から始まっていたので、子どもたちが書いた前時のふりかえりを最初に見ました。「今日はセリフなどをざっと読んだので、つぎは場面ごとにどんな気持ちで言っているのか調べる」「今回は最初と最後の川の様子を見つける事ができたから、次回こそ綾とお兄ちゃんの情景を調べる」「お兄ちゃんは、頭がいいということが分かったから次も違う人物について調べたいです」などのふりかえりが書かれていました。

 自分の書いたふりかえりと、クラスメイトが書いたふりかえりを読んで、子どもたちは今回の授業で、どの視点で「たずねびと」を読むのかを考えて、自分の名前が書かれたマグネットを黒板の模造紙に書かれている視点のところに一人ひとり貼っていきます。
 こうして、誰がどの視点で読んでいるのかが可視化されているのはとてもいいなと思いました。オクリンクの提出BOXでみんなで共有することもできますが、今回のように各自で課題に取り組んでいるときには、自分でやっている作業を一度止めてわざわざ見るのは少し手間がかかります。パッと前の黒板を見て、自分と同じ視点で読んでいるのが誰かがわかったら、その子のところへ行って、「どう?」と話しかけたりもできます。こうしたところは、教室という環境やアナログの強みだと思います。

 どの視点で読むかを決めたら、各自で「たずねびと」を読み、自分の設定した課題に取り組みます。情景を読んでいる子もいますし、登場人物の性格に注目して読んでいる子もいました。また、「たずねびと」に出てくる表現の意味を調べている子もいました。子どもたち一人ひとりが、自分が決めた課題に取り組んでいました。一人で考えるだけでなく、グループで考えている子たちもたくさんいました。

 自分の課題についてまとめていくときにも、オクリンクにまとめる子も、ノートにまとめる子も、画用紙にまとめる子もいました。自分で設定した課題に取り組むときに大事なのは、最初に書き出す勢いとスピード感だと思います。そのときに、デジタルよりも紙にどんどん書いていった方が勢いがつくように僕は感じることがあります。デジタルだとタイピングのスピードが出ないというだけでなく、決められたフォーマットに入れる不自由さが勢いを殺してしまうのではないかと思うのです。
 そうした点から、今回の授業で画用紙にどんどん書いていって半田先生に説明をしている様子や、ノートに不揃いな大きさの文字が(ちょっと汚くても)びっしり並んでいる様子を見ると、先生が黒板に書いた内容をただ書き写したのとは違う、子どもたちが自分たちで考えたことの過程が見えるようでいいなと思いました。

(為田)