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渋谷区立千駄谷小学校 授業レポート No.3(2023年6月2日)

 2023年6月2日に渋谷区立千駄谷小学校を訪問し、鍋谷正尉 先生が担当する5年1組の算数「小数の筆算」の授業を参観させていただきました。鍋谷先生はモニターに指導者用デジタル教科書を投映しながら授業を進めていきます。

 デジタル教科書で表示されている問題をみんなで見ながら、鍋谷先生がする質問に子どもたちが答えていきます。デジタル教科書があるので問題文などを黒板に書くことはしなくてよくなりますが、子どもたちが発表した考えを黒板にまとめて整理して、次にどう考えたらいいのか思考のプロセスを示すために黒板は変わらず使われます。

 小数の筆算のやり方を考えるために、デジタル教科書に書いてある「80×2.4」の計算をどうやって筆算でするのかを考えていきます。「今日は最後に解説動画を作ります。自分できっちり説明できるようになりましょう」と鍋谷先生は言います。黒板を使って筆算のやり方をみんなで確認するときには、子どもたちが自分の言葉で説明ができるように、クラス全体でやりとりをしていました。

 「80×24」と「80x2.4」の筆算で、何が違うのかをノートに書いてもらいます。ここでも、鍋谷先生は、「自分の言葉で書くのが大事で、そのためのガイドになるのが教科書です。苦手な人は写すことからでもいいから、自分なりの言い回しを使えるようになりましょう。自分の言葉で書くチャレンジをしていきましょう」と言っていました。

 紙のノートでまとめている子だけでなく、OneNoteを使ってまとめている子もいました。アナログとデジタルで、それぞれに良さがあるので、どちらでも自分の好きな方でまとめていいというルールになっていました。

 小数の筆算のやり方を説明した後で、デジタルドリル「インタラクティブスタディ」に取り組む時間を作って、クラス全体の習熟度を確認します。子どもたちはインタラクティブスタディにログインして、鍋谷先生が出題しておいた問題に取り組みます。

 インタラクティブスタディの先生画面で、クラス全員の習熟度を概観して確認することができます。取り組んでいる問題のところに記号が表示されるので、それを見てサポートが必要な子どもをチェックしたり、全体の習熟度が低いときにはもう一度丁寧に説明を繰り返したり、授業の進行をその場で調整することができます。

 インタラクティブスタディで習熟度を確認した後で、いよいよ解説動画を作り始めます。共有の「算数」フォルダから、PowerPointファイルをデスクトップにコピーして開いてもらいます。「ファイルをデスクトップにコピー」という作業を、一人ひとりが自分でできるのは、情報活用能力の視点からみても、基礎スキルとして大事だと思います。
 PowerPointのファイルには「80×2.4」の筆算がすでに書かれていて、子どもたちはその上に指やペンを使って書き込みをしながら自分の言葉で解説する動画を作ることになります。

 解説動画の作成に入る前に、鍋谷先生は評価の基準も紹介しました。今回の解説動画については、「計算の仕方を説明できている」「意味をつけ加えている」の2つの点で評価します、ということを伝えていました。

 最初は、鍋谷先生がモニターに映しながらすべての操作を行い、実際に解説動画を作る様子をみんなで見ます。子どもたちからの「声も入るんですか?」という質問に、鍋谷先生が「入るんですよー」と答えると、「すげえ!」と盛り上がりました。新しい機能を紹介するときは、こうして「便利だ!」「すごい!」という驚きとともに紹介する方が、操作が楽しくなると思います。
 PowerPointの「記録」→「画面記録」を押すと、カウントダウンが始まって、その後の画面に書き込んだ内容と、マイクに向けて話した内容がすべて動画として記録されます。

 鍋谷先生が作った解説動画をみんなで見てみます。いま自分たちの目の前で鍋谷先生が話した内容がそのまま動画になっているのを見て、自分たちのすることのイメージが湧いたように思いました。
 この後、子どもたちはそれぞれに自分の解説動画作りに取り組んでいきます。子どもたちは、思い思いのスタイルで解説動画を作ります。机を壁に向けて一人で集中して取り組む子もいれば、2人で説明を分担している子たちもいました。
 教室全体で一斉に解説を話すと声が混ざって聞き取りにくくなるかもしれないので、「イヤホンマイクを口元に寄せてやってみてね」と鍋谷先生は言います。

 自分で筆算のやり方を説明した動画を取り終えると、「できた!」と歓声があがっていました。自分で聞き直してみて、「もう1回やり直そう」と言ってチャレンジしている子もいましたし、自分は準備をしっかりしてからやりたいという子はまず原稿書きから始めていました。こうして、みんなが「自分はどうやったらうまくできるだろうか」と考える機会になっているのがいいと思います。

 授業の最後で鍋谷先生は「自分にあったスタイルを見つけてください。一人でやっても、何人でやってもいいです。自分にあったスタイルを見つけてください。原稿書きから始めている子もいました。とてもいいと思います。みんなも自分で考えて自分で手順を作ってみてね」と子どもたちの活動にコメントをしていたのがとても印象的でした。

 No.4に続きます。
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(為田)