教育ICTリサーチ ブログ

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『教育「変革」の時代の羅針盤 「教育DX×個別最適な学び」の光と影』ひとり読書会 No.1 「はしがき――教育「改革」の時代から教育「変革」の時代へ」

 石井英真 先生の『教育「変革」の時代の羅針盤 「教育DX×個別最適な学び」の光と影』を5月にじっくり読んでいました。たくさんのページに赤線を引いて、何度も読み返しています。

 サブタイトルの「教育DX×個別最適な学び」の光と影のとおり、いまの仕事において考えておいた方がいいことのヒントがたくさん書いてあり、ひとり読書会として読書メモをまとめていこうと思います。
 今回は、「はしがき――教育「改革」の時代から教育「変革」の時代へ」の読書メモを公開します。

教育「変革」の時代へ

 ここ数年、学校を取り巻く状況は本当にどんどん変わってきていて、教育委員会の皆さんも学校の先生方も学校を変えていく努力をされていると思います。社会のデジタル化、コロナ禍、GIGAスクール構想など、いろいろなことが変わってきているからだと思います。
 ささやかながら教育業界で仕事をしてきて、大きく状況が変わってきたな、と思ったのは、経済産業省の「未来の教室」プロジェクトが始まってからかな、と思っています。文部科学省が積み上げてきたものと、経済産業省の「未来の教室」プロジェクトの両方が揃って、大きく変わってきたな、と思っています。それは「改善」とか「改革」ではなく、「変革」なのだ、ということが書かれていました。

近年、教育改革構想の提案が繰り返される背景には、変化の激しい社会における子どもたちの学習・生活環境や学校の構造変容があります。特に、GIGAスクール構想や「個別最適な学び」は、ICT活用や自由進度学習等の新たな手法や学習形態の提案に止まるものではありません。既存の枠組みをある程度生かしながら「改善」や「改革」を進めるのみならず、履修主義や学年学級制、標準授業時数、学校に集って教師の指導の下で学び合うことを自明視しないなど、日本の学校の基盤となるルールや制度的・組織的枠組みやシステムをゼロベースで見直し、「変革(transformation)」しようとする志向性が強まっています。
後述するように、この教育「変革」政策は、「Society 5.0」という政策アイディアを軸に、「個別最適な学び」と「教育DX(デジタルトランスフォーメーション)」とを掛け合わせ、レイヤー構造のプラットフォームビジネスをモデルとして構想されています。(p.v)

 既存の枠組みを大きく変える「変革(transformation)」が志向されていると書かれています。

デマンドサイドからの視点で考える教育「変革」政策は、「教育」の供給主体を「学校」のみに限定することなく、社会・民間との積極的な連携を重視し、学校内部においても、教員に依存せず多職種協働の組織への転換を志向しています。「子どもが教育を選ぶ時代」(野本 2022)という言葉が象徴的に示すように、学校や教師や授業や教科書を必ずしも経由しない学びのあり方が、「子ども主語」「自律的な学び」「エージェンシー」といった言葉と結びついて理想化される状況もあります。(p.vi)

 ここ、すごく興味があるところです。僕は幅広く社会に影響を与えるという観点で、公教育の大切さを信じているので、「学校や教師や授業や教科書を必ずしも経由しない学びのあり方が、「子ども主語」「自律的な学び」「エージェンシー」といった言葉と結びついて理想化される状況」という石井先生の表現に賛同もしますし、これってどういう意図だろう、とより詳しく知りたくなりました。

本書では、教育「変革」政策の展開を概観しながら、その基本的な枠組みとそれをめぐる論点を整理します。タイトルに「光と影」とあるように、本書は、「変革」のもたらすポジティブな側面だけでなく、むしろ懸念される負の側面や課題などについても取り上げ、その克服のために何が必要かも論じます。(p.vii)

 光と影、両方学びたいと思います。「懸念される負の側面や課題」を知っておくことは大事です。

まとめ(というか、気づき)

 最初の「はしがき」から、こんなに赤線を引くとは思っていなかったのですが、読み進めるのがすごく楽しみになりました。僕は学校でデジタルを使うことは賛成だし、子どもたちが思考や表現のツールとしてどんどんデジタルを使ってほしいと思っています。でも、そのためには「懸念される負の側面や課題」についても学んでいきたいと思いました。


 No.2に続きます。
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(為田)