教育ICTリサーチ ブログ

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惺山高等学校 授業レポート No.1(2024年6月6日)

 2024年6月6日に惺山高等学校(山形県山形市)を訪問し、授業を参観させていただきました。惺山高校の生徒たちは、一人1台のChromebookを普段遣いの端末として活用していて、どんな場面でどう使うかを自分たちで考えているそうです。校内を案内してくださった髙橋亮 先生は、先生方にとっても生徒たちにとってもChromebookを活用することの利点は「思考のスピードを速くする」ことであり、そのうえで「Chromebookを使う場面・使わない場面については、きちんとけじめをつけて使ってもらいたい」とおっしゃっていました。
 生徒たちだけでなく、先生方も授業でChromebookを使うか使わないかを、授業のゴールが何であるかによって判断しているそうで、この日に参観させていただいた授業でもChromebookの活用方法はそれぞれでした。の様子をレポートしていきます。

2年生 情報

 この日の2年生の情報の授業では、Google Colaboratoryを使ってブラウザ上でPythonのプログラムを書いて実行する課題に取り組んでいました。配布された課題のプリントに書かれた練習問題に取り組んでいきます。

 惺山高校では2年間、Pythonにみっちり取り組むカリキュラムを組んでいて、最終的には3人以上のメンバーで協力しながらプログラミングする「モブプログラミング」で、Web APIを作ることを目指しているそうです。
 Web API以外にも、Pythonでドローン編隊飛行をプログラムしたりもするそうで、そうしたプロジェクトに生徒たちが取り組む過程で、プログラミングを活用する場が用意されているのだと感じました。
 Web APIにせよドローン編隊飛行にせよ、プログラミングを学ぶ入口がプロジェクトになっていて楽しくなっていて、そこで「もっと専門的にやりたい」と感じた生徒たちは大学や専門学校で学び続けられる、そんなふうにカリキュラムがデザインされていると感じました。

1年7組 公共

 朝田宗治 先生が担当する1年7組の公共の授業では、プロジェクタにNHKの動画教材を映して、探究をどのように進めていくのか、問題を多角的に捉える手順をみんなで確認していました。それからワークシートを配布してアクティビティに入りました。

 この日のアクティビティのテーマは「生命と科学技術の問題と倫理」で、「私たちは生命をどこまで操ってよいのでしょうか」という今日的な問いに取り組んでいました。

 こうした問いについて自分で考えた内容を口頭でプレゼンテーションしたり、論理立てて論述したりするには、何度も資料や原稿を推敲する必要があります。こうして推敲しながら思考を磨いていく過程で、一人1台のChromebookは役に立ちます。Chromebookを使って何度も自分の考えを検討し直して推敲し、クラス内でディスカッションの機会を何度ももつことで、問いに深く多角的に迫ることができると思いました。

1年6組 ビジネス基礎

 鈴木剛 先生が担当する1年6組の政治経済の授業では、先生からスライドで提示された問いに、生徒たちが一人ひとり自分の考えを書いていきました。先生が映すスライドには問いだけでなく、ヒントとして「どんなふうに考えたらいいか」も書かれていました。
 例えば、この日の問いのなかに、「普段の生活の中で、希少性があるものは何か考えよう」というものがありました。この問いへのヒントとして、「欲しがる人は多いけど、全員に行き渡るほどには十分ではないものには何があるだろう?」「自分の持ち物の中で、希少性があるものは何があるだろう?」というふうにヒントが出されていました。

 このヒントをもらって、生徒たちはスクールタクトで配布されたワークシートに自分の考えを書き込んでいくことが求められます。
 スクールタクトのワークシートには、「考えよう」と書かれたテキストボックスだけでなく、「話し合おう」や「他の人の考え」と書かれたテキストボックスも用意されていました。自分の考えをまず書いたら、他の人と話し合うことで考えを交流するようにワークシートがデザインされていました。

 鈴木先生は、「“考えよう”のところに何も書いていないのは、まずいですよ。正解・不正解はないので、“私はこう考えます”というのを、はずかしがらずに伝えるようにしましょう」と言っていました。授業の活動のなかでこういう場面が何度もくりかえし用意されていて、先生がこうした言葉を何度もかけ続けることで、しっかり自分の考えを書いて、それを他者と交流させていくことができるようになると思います。

さまざまな産学連携

 その他にも、惺山高校では、スポーツサイエンスコースの生徒たちがスポーツの映像分析を行うことができる映像分析ソフトウェア「ダートフィッシュ」を使っていたり、クリエイティブコースの生徒たちがメディア企業と連携して地域情報サイト「ローカリティ!スクール✕惺山高等学校」で情報発信をしたり、産学連携をどんどん進めているそうです。髙橋先生は、学校の姿勢として「生徒の“やりたい”を学びとして実現させる」、という表現を使っていましたが、外部との産学連携は、まさしく「生徒の“やりたい”を学びとして実現させる」ということに繋がると感じました。

 No.2に続きます。
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(為田)