8月8日にプレミアホテル中島公園札幌を会場に行われた、D-project北海道 創設10周年記念セミナーに参加してきました。中川一史先生(D-project会長、放送大学教授)による基調講演「深い学び・対話的な学び・主体的な学びとICT」について、レポートしたいと思います。
講演の後半で、中川先生は「私が訴えたいこと」として、3つのことを示してくれました。
1.「型の習得」→「脱・型」にどう向かうのか。
情報教育において、「技能を習得すること」と「醍醐味を実感すること」を両輪とすることの重要性を中川先生は言います。「醍醐味を実感すること」は、学習のねらいには入っていないかもしれないが、情報教育では非常に大切。一方で、技能を習得することも大事。
発表をする授業を例としてみると、「脱・原稿」という話があります。ある学校で、3人のグループで話し合いをしていて、持っている発表の仕方シートみたいなものに従って「僕はこう思いますけど、みなさんはどう思いますか?」という原稿を読んでいることがあった。原稿は自転車の補助輪のようなもの。補助輪をとれるのはいつなのか?原稿をもつことが悪いことではないが、いつ原稿を持たなくなるかまで考えていなければいけない。
また、発表に置いては、「伝えること」ももちろん大事になります。インフォーマルな発表も含めて、原稿がなくても、グループで見せ合うこともできるようになればいい。こうした小さいグループでインフォーマルな発表であれば、教室にプロジェクタがなくても行なうことができます。
2.映像情報と言語情報の行き来をどう意識するか。
日本の国語科は「話す・聞く」「書く」「読む」の3領域ですが、中川先生が研究しているビジュアルリテラシーにおける「見る」「見せる・つくる」も3領域の中に入ってきていると中川先生は言います。国語の教科書を見ると、挿絵が入っている。挿絵を使った活動などがあるので、ビジュアルリテラシーの「見る」「見せる・つくる」も入ってきていると言えるそうです。
また、デジカメで撮影した写真のプレゼンテーションなどもしていますよね。これも、ビジュアルリテラシーの「見る」「見せる・つくる」が国語の3領域と結びついている学習活動と言えると思います。
このように国語の3領域と「見る」「見せる・つくる」は切っても切れない関係ではあるものの、今の学習指導要領では入っていないそうです。
中川先生は、どんなふうに段階を踏んで、ICTで撮影したものを説明で使うのか、示してくれました。
いずれにしても、「映像情報と文章の行き来」は、「理解することと表現することの行き来」につながります。映像と言語を行き来する学習活動を、たくさんやらせています、とのことでした。
3.タブレット端末の新奇性をどう払拭していくか
最後は、タブレット端末の新奇性について言及されていました。これから、タブレットが40台学校に配備されていくとして、どれくらい子どもたちが日常的に使う場面が増えていくでしょうか。中川先生はある学校に行ったときのことを話してくれました。
ある学校に行ってみると、子どもたちがタブレットを使って目をキラキラさせて学習しています。聞いてみたら、タブレットを使うのは2回め。それでは、目新しさがとれないだろう。目新しさで目をキラキラさせていてはだめ。それはただの「目新しさ」だろう。道具の新奇性が残っているだけだろう?
道具は、新奇性がとれないとダメ。いつまでもそれでは道具にならない。無意識になっていかなくては。そのために、どれくらいの頻度使えばいいのか。限られた台数で。そこを考えることが必要。
中川先生のおっしゃる、この新奇性の払拭は非常に大きなテーマだと思います。この点に取り組まないと、「本当に学びが深まったのか」「本当に学力が上がったのか」がわからないし、その原因もわからない。原因がわからなければ、それを再現することもできません。新奇性にはいつまでも頼ることができないわけで、スタートダッシュは(ICTの目新しさもあって)いいけれど、その後はこれまでどおりに逆戻り…というケースを増やさないためにも、早く新奇性を払拭して授業の中にICTを入れていきたいと思います。
今までは教師が提示用に使うということを行ってきましたが、ここから児童生徒がツールとして使っていなくてはならない。デジタルノートになるほどに、各自がタブレットを自分の道具として使うようにならないとだめ。個々の思考ツールとして使うようになると…教科書にどんどん書き込むという例も出てくる。また、自分たちが、どうやって発表するかを選んでいる学校がある。千葉県立袖ヶ浦高校では、紙で研究発表をしているのですが、それの補助ツールとしてタブレットを使っているというケースもある。
さまざまな場面でICTを使うようになって、その成果を評価するためには、非常に重要な考えるべき要素だと思いました。
最後に
今回で20回目となったD-project北海道の立役者の2人、北広島市立双葉小学校 加藤悦雄先生と札幌市立発寒西小学校 山田秀哉先生が、中川先生から紹介されました。
以下、中川先生の言葉を引用します。
D-project北海道の立役者の2人にお礼をいいたいと思います。引っ張ってきつつ、スタッフが尽力してくれて、今があります。10年間、20回を引っ張ってくれた二人にお礼を込めて、拍手をしたいと思います。現在進行形でD-project北海道を引っ張っていってほしいと思います。積み重ねて続けていく。その積み重ねでしか、尊い20回と言うのは出てこないので、続けてきた偉大さがあると思います。本部からも感謝をしたいと思います。
充実したワークショップ、実践発表、最後の鼎談、いろいろとお土産をもってかえってもらいたいと思います。
No.4に続きます。
blog.ict-in-education.jp
(為田)