5月15日に、慶應義塾大学総合政策学部 中室牧子准教授の担当されている、情報経済学の授業にゲストスピーカーとして呼んでいただきました。
SFCは今年が25周年です。僕は5期生で入学したので、それから20年ということですね。おそろしく時が流れるのははやいですね…。
教育×ICTについての概要を説明
ゲストスピーカーとして話したテーマは、「教育×ICT について考える」です。授業の最初に中室先生から、「今回のテーマについては正解はありません。だから、話を聴いて、自分たちで考えてほしい」というコメントをいただきました。
そのため、最初にざっと現場でどんなふううにICTが使われているのか、概要を伝えることにしました。主に話した内容は、以下のようなものです。
事例紹介については、このブログでも出しているものをダイジェストで伝えました。
ict-in-education.hatenablog.com
ict-in-education.hatenablog.com
ict-in-education.hatenablog.com
ict-in-education.hatenablog.com
また、ICTの導入目的9類型も、2014年の教育ITソリューションEXPO(EDIX)で話したことをまとめてあります。
ict-in-education.hatenablog.com
教育現場へのICT導入の効果は測れるか?
中室先生は、教育経済学の研究者です。以下、eduviewのインタビューの抜粋です。
「教育経済学は、教育政策の費用対効果を統計的に分析・評価するものです。ある政策に効果があるというエビデンスがあれば、そこから広げていくことができますよね。日本だと学力テストをやること自体が序列をつけると言って反対されることもありますけど、私は米国のコロンビア大学で教育経済学を学んで日本に帰ってきてから、エビデンスベーストを徹底しないといけないと言い続けています」
教育×ICTのテーマにひきつけて言うのであれば、これまでの学校の授業の形を変えるために、ICTを導入する。その際に、導入の目的は何か?目的が達成されているかどうかをどう測定するのか、それがエビデンスベーストの考え方だと思っています。
実際、ICTを導入するに際して、「基礎学力を上げる」「進学率を高める」「授業の際の理解度を上げる」など、具体的な目標を掲げて政策が実施されているジレはまだ少ないのが現状だと思います。
例えば、電子黒板の配備が進められていますが、その目的は何なのでしょうか?「授業をわかりやすくするためですか?」ならば、どういうデータがとれたら、「授業がわかるようになった」と評価するのでしょう?こうした部分をしっかり議論して、政策を実施し、評価していくことが必要でしょう。
そうした点で、教育にICTを導入することについて、賛成か反対か、教室で挙手をしてもらい、それぞれの意見を述べてもらいました。
ここでも、さまざまな議論が出ました。きちんとロジカルに考え、実施してエビデンスをとれそうな意見もありましたし、やや曖昧でエビデンスがとれなさそうな意見もありました。ですが、それがリアルなところであり、そうした噛みあわなさを考えることも、今の教育×ICTをテーマにするならば重要かな、と思い、時間ギリギリまで、ディスカッションをしました。
論理と感情の衝突?
結局、教育関係の議論は、ICT導入だけでなく、少人数学級の実現なども含めて、論理と感情の衝突なのかな、と感じることがあります。
例えば、中室先生が講義の中で例として出しましたが、「40人学級を35人学級にしたときに、学力を上げる効果はそう大きくない」「そのために、コストが大きく上がる」どちらをとるか、というのは、論理で考えれば、「40人学級でいいんじゃないか」ということですが、感情としては「少人数学級で手厚く子どもたちを教えるべきだ」になるのではないかな、と思います。この衝突を、「論理と感情がすれ違っている」ことを認識して、きちんと相対するようにして、議論を深めていく必要があるのだろうなと思いました。
ディスカッションに積極的に参加してくれた学生の皆さんに感謝いたします。