2021年10月7日にオンラインで開催された、WEBセミナー 「WEBQU×まなびポケットCBT~学級経営が学力向上に役立つ理由~」に参加しました。
第2部は、早稲田大学教育・総合科学学術院 教授の河村茂雄 先生とNTTコミュニケーションズ Smart Education推進室の稲田友 さんによるクロストーク「学級経営が学力向上に役立つ理由」でした。クロストークの要点をまとめていきたいと思います。
学級経営と学力の関係性
クロストークは、まず「学級経営と学力の関係性」についての話から始まりました。
稲田さん 学級経営と学力向上の関係性について言うと、因果関係を調査したものとして、「埼玉県 学力・学習状況調査」が広く知られています。30万人の児童生徒の学力テストの結果をとり、項目反応理論(IRT)によって学力の比較ができるようになっています。WEBQUの学級状態と学力の関係を見ることができるようになっています。
河村先生 まさにこれがさきほど説明したことです。学級経営での活動は、認知能力と非認知能力の両方が出る場面です。学級活動のなかでは、子どもがどんなに正論を言ってもだめで、相手が納得するような言い方で伝えなければいけません。それは非認知能力なんです。
アクティブラーニングの流れは、本来日本の教育でやってきたことなんですが、それが、記憶の方に偏ってきてしまっていたと思います。
学習意欲だけが上がる、という子は少ないんです。友達関係が良くて、みんなと一緒に学習意欲が伸びていく子が多いんです。相関は高い。認知能力と非認知能力の相互作用なんです。「クラスに良くなろうとしている子がいますか?」という質問に高いスコアを出す子は、良いところを学び取ろうとしている子で、そうした考え方は学習方略にもつながります。だから、それがまた認知能力の高まりに戻ってくるんです。学校での学びでは、友人関係が悪かったら、学習意欲は落ちます。
統計的に、学力テストで全体がぐっと上がるためのポイントは、正規分布の真ん中のところが上がることが有効です。真ん中の子どもたちは同調性が高い傾向があり、したがって、クラスの状況が良ければ上がり、悪ければ下がるんです。
WEBQUではこうしたことが全部分析できています。学習も生徒指導も同じで、コンピテンシーを獲得することが重要です。自分で認知を深めていくのも方略です。自分で調べる、友達に訊く、先生に訊く、それらは非認知能力です。そうした非認知能力も学級の中で学んでいくんです。
いま学力の高い県、テストの正答率の高い県は、QUのデータを見ると、満足感の上位県です。学級生活の満足が低くて、学習意欲と学力が高い県はない、と思います。
稲田さん 主体的・対話的で深い学びのところも、集団がささってくるということでしょうか?
河村先生 WEBQUで訊いている学習意欲は、自律的な学習意欲です。やらないと怒られるから、という外発的な部分の強い学習意欲はとっていません。だから、固定的でクラスをまとめていた先生のクラスは学習意欲が低いんです。そうしたこともわかるようになってきました。データでこの図の有効性は示せるように思います。
主体性がない協働性は馴れ合いになります。だから、お互いただ「いいね」と言い続けていたら予定調和的になります。いろいろと考え方が違う人が対話をすることによって、はじめて新たなことが生まれてくると思います。
稲田さん 会社でも同じだな、と思います。
河村先生 学習する組織には、最低限の安定と活性度があることが大事、ということです。若い先生が意見を言えない職員室も、同じです。子どもだけの問題ではないな、と思います。「固定」「遂行」で上下関係のなかでやってきたが、時代が変わってきていると思っています。だから、WEBQUを作りました。やってよかったと思っています。動きが速い。コロナ禍で、スピードが加速していると思います。コロナが終わった後に、大きな変化が出てくるな、と思っています。
データ・エビデンスに基づく学級/学校経営・政策立案へ
次に、クロストークは「データ・エビデンスに基づく学級/学校経営・政策立案」についての話題になりました。
稲田さん QUはデータ・エビデンスに基づいてやっています。文部科学省が行っている全国学力調査・学習状況調査も2024年度以降、順次デジタル化され、2025年にはすべての中学校がCBTでやる、と言われています。
文部科学省のオンライン学習システム(MEXCBT)も含めて、学習eポータルを入り口にしてそれぞれのサービスが使われ、データが集まるようになり、いろいろな人が使えるようになっていきます。WEBQUの活用は重要性が高まり、データの活用は学校の最重要項目のひとつになると思っています。
MXTCBTも、WEBQUのようにデータを集計してすぐに先生に返せる、とういのが重要になると思いますね。
河村先生 今までの教育は、3K(経験、慣習、勘)でしたけど、これはもう終わって、エビデンス・ベースドになると思いますね。
稲田さん エビデンスとデータが3K(経験、慣習、勘)の代わりになると思います。
河村先生 先輩の先生の話を聴きながら、データを検索するような若い先生が出てくると思います。データをWEBQUで見て、「どうですか?」と先輩に訊くようになります。自分が疑問をもってから訊かなくてはだめ。どういうことか若手の先生は自分で調べて、そのうえで先輩に訊きにいけば、より高いレベルの学びになります。教員組織も学習する組織になるのではないかな、と思います。先生たちがそうした学習組織になっているのを見て、子どもたちの学級も学習する組織になるのではないかと思います。
稲田さん いまは学校現場は、世代的に中間層がいない、フタコブラクダですね。
河村先生 経験をもっているベテランと、ICTを使える若手が協働していくようになるでしょう。ベテランの先生方の動機づけと若手の動機づけは違うし、学習方略も違います。
情報化社会のポイントは、「どれだけ情報を集めるか」ではなくて、「どれだけ分析できるか」「分析を的確な行動に繋げられるか」だと思います。そのためにまなびポケットは使えると思います。
稲田さん 「データの活用」は、データを集めるだけでは意味がありません。集めたデータをどう分析するかのアテがないといけないので、そこでこれまでの先生方の3K(経験、慣習、勘)は役立つと思います。
河村先生 名人の勘はすごいです。きちんと聴くと、理にかなっているものもあります。ただ、理にかなっている先生もインフォームド・コンセント、アカウンタビリティが必要になる時代です。そのためにも、データ分析、エビデンスベースとも必要になってくきます。これは来るべくして来た流れだと思います。
稲田さん WEBQUだけでなく、日々使うコンテンツ、デジタル教科書や授業支援システム、個別学習コンテンツなどとも結び付けられそうですね。
河村先生 毎日使うコンテンツのデータを見ると、WEBQUの非承認群の子たちがいつも同じものばかり見ているとかがわかるかもしれません。そこに声掛けをしてあげるということが大事です。
大学生を見ていると、勉強の仕方がうまい、自分にあった勉強のしかたを身につけている、という学生が強いと思います。そうした学生は、社会に出るのに不安だけど、不安への対処のやり方も持っている。言われたことだけやってきた学生はそれができないんです。
自分がいちばん集中してできる場で、できる方法で、やればいい。全員が一人ひとり個性があって、それに応じて取り組めればいいと思います。
稲田さん それも個別最適化、だと思う。WEBQUでも、ひとりひとりの個性や状態がわかりますね。
河村先生 そこから、ひとりひとりの相互作用とベクトルで、学級の状況がわかる。そこで、個と集団がぐるぐるまわって相乗的に活性化していきます。
稲田さん 回せば回すほど精度が上がっていくのがデータの世界だと思いますので、それが回せればいいですね。
河村先生 「集団の学びを、今まで通りしていけばいいんでしょう?」と思っている先生は、大間違いです。子どもたちも違うし、目標も違います。支援の仕方をもっと細やかにしていかないと、伸びていきません。指導の仕方を変えていかなければなりません。
稲田さん 子どもたちの変化だけでなく、社会情勢の変化によっても変わってくると思いました。
河村先生 「学校へは行けないんだけど、オンラインで参加すればいいんじゃないか」というのもあります。いろいろな参加の仕方が出てくるのかもしれません。ICTを使った協働学習だったら、不登校の子でも参加できるかもしれない。いままでのパラダイムを大きくブレイクスルーしていかないとダメなのではないかと思います。
コロナが終わったら、大きく変わると思います。大学がCBTでの入試を準備していますし、そうすると学校の学びも変わっていくと思います。
具体的に学級経営と学力の関係性がWEBQUのデータでどのように見えるのか、またこれからそれがどのように活用されていくのか、「データをどう分析するか」がいかに重要か、考えるきっかけとなるクロストークだったと思います。
No.3へ続きます。
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(為田)