教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

教員志望大学生に対する「ICTを活用した授業ができる人材育成」レポート@東京学芸大学 櫻井眞治ゼミ 前編(2016年2月8日)

“先生”と“これから先生になる学生”の繋がり

 2月8日に、東京学芸大学の櫻井眞治教授(教育実践研究支援センター 教育実習指導部門)のゼミ生を対象に、多摩市立愛和小学校の先生方によるi和designチームが講師となって、「ICTを活用した授業ができる人材育成」のための勉強会を開催しました。
 この勉強会は、ICT CONNECT 21「教育現場発!ニーズをシーズへ」SWGでのディスカッションのなかで出た、【2.大学と連携し、教員志望大学生に対し「ICT活用した授業ができる人材育成」イベントの開催】というアイデアが元になり、多摩市立愛和小学校の松田校長先生の紹介で、東京学芸大学の櫻井研究室に協力をしていただき、実現したものです。

 i和designチームの中では、校長である松田先生、副校長である田畠先生、それからスクールタクトを使ってデモ授業をする予定の才記先生の3人が、東京学芸大学卒業とのことでした。また、10数名いた参加者の中にも、櫻井研究室のOBが2人参加していました。今は2人とも東京都内の小学校で勤務されているそうです。このようにOBが縦につながって、新しいテクノロジーに触れ、共に教材研究をするというのは素晴らしいことだと思います。
f:id:ict_in_education:20160214173252j:plain


 この勉強会の模様を、レポートしていきたいと思います。

どんなふうに授業をしたいか

 参加者の事前課題として、5年生の日本の国土の単元について、指導案を考えるように課題が出ていたそうです。ゼミ生は、「どんなふうに教えたいか」ということを発表していきました。いくつか出た意見を紹介したいと思います。

  • 社会科のイメージとして、教科書を読んで学ぶという感じがする。例えば、「日本にある島の数が6800」など、具体的ではないので、これを具体的に示せたらいい。
  • 位置関係は、実際に見せることが大事。「どこに6800も島があるの?」というのは、見ないとわからない。
  • 領土はどこまでだと思う?と質問して、地図に色を塗らせて知覚化させるといいと思う。
  • 本時の終わりには、「沖ノ鳥島などの場所を子どもたちがかけるようになる」というふうにしたい。沖ノ鳥島の不思議などを調べてもいいと思う。
  • iPadで国際情報のニュースなどを見せるのもいいと思う。

 こうしたさまざまな意見が出た後で、実際に上田先生が日本の国土についての授業をやって見せてくれました。参加してくれたゼミ生たちに、iPadChromebookが配布され、いよいよ上田先生の授業のスタートです。
f:id:ict_in_education:20160214173408j:plain

5年生「日本の国土」について授業提案(上田先生)

 多摩市立愛和小学校の上田先生が、5年生に日本の国土について紹介する単元の導入部分の授業を提案してくれました。
 まず、ロイロノートスクールを使って、日本の領海について、どれくらいだと思うかを線で描いてもらいます。参加してくれたゼミ生のほとんどはロイロノートスクールに触るのは初めてだったようですが、上田先生の指示と近くにいる人同士のサポートで、ほぼ問題なく作業に入れました。
f:id:ict_in_education:20160214173442j:plain

 領海部分を線で塗ったら、それを先生に提出します。上田先生は、参加者全員分から提出された地図を見て、特徴的な2つをピックアップして比べます。それぞれ、どうしてこういう領海を描いたのかを質問し、意見をまとめていきます。教材を配布し、提出してもらい、並べて比較する、ということを、体験してもらいました。
f:id:ict_in_education:20160214173521j:plain

 次に、Google Earthを使って、教科書に載っている場所を検索し、その場所の地形などの特徴がわかる写真を、スクリーンショットで撮るというアクティビティを行ないました。撮影した写真を、今度は4人ずつでグループになって見せ合い、グループの中でベストなものを選び、それぞれのiPadをプロジェクタで映して、発表をしていきました。
f:id:ict_in_education:20160214173551j:plain
f:id:ict_in_education:20160214173609j:plain

 「石狩平野の平坦さは、教科書の写真では一部しか見えないので、わからない」。だから、Google Earthを使って、それがどれくらい続いているのかを見せるようにすればいい、という説明が、上田先生からされました。
 これは、最初にゼミ生から出た、「具体的に見せたい」という意見に合致するもので、そのための手段としてICTが使ってみる、という体験をゼミ生たちはできた、ということになります。

「現場でどうICTが使われているか」を学ぶ意味

 上田先生の授業の間にも、ゼミ生の皆さんは、本当にたくさんのメモをとっていました。すでに現場に立って、ICTを使っている先生からの言葉、教え方などから、多くのことを吸収しているようでした。
 「ICTでできること」を知ることが大切だと思います。こういう機能があるのだ、こういう教え方ができるのだ、ということを知っておけば、それを教室現場に立つ時の選択肢として持つことができるからです。そうした機会になるように、今回の勉強会は企画をされています。
f:id:ict_in_education:20160214173706j:plain

 松田先生は、今回の勉強会のねらいとして、以下のように言っておられたので、まさにねらいどおりだったと言えるでしょう。

ねらい: 教職を志す学生にICT教育の一端に触れさせ、その効果とこれからのtechnologyを用いた教育・授業実践をめぐる議論を通して、ICT教育推進の担い手としての意欲を喚起する。

 参加してくれたゼミ生は全員が小学校で社会を教える先生になるわけではないと思います。ですが、校種や科目を横断してICTが役立つ場面というのはあると思いますので、そうした場面をぜひ考えられる先生になってくれるといいな、と思いました。
f:id:ict_in_education:20160214173751j:plain


 後編へ続きます。
blog.ict-in-education.jp

(為田)