前編から続きます。
スクールタクトを使った意見交換(才記先生)
勉強会の後半では、才記先生が授業支援ツールであるスクールタクトを使って、意見交流をデモンストレーションしました。才記先生は最初に、「どう教えるか」ということよりも、「どう学ぶか」という視点を持ってほしい、ということを説明してくれました。「どう学ぶか」という視点からだと、「見て学ぶ」「聞いて学ぶ」「話し合って学ぶ」など、さまざまな形があり、それをICTも使って実現していく、という授業を見せてくれました。
スクールタクトで、各自のChromebookに課題を配布し、上田先生の授業を受けての「疑問を青い字で」「違い・発見は赤い字で」「意見・感想は黒い字で」書いてください、と色分けして伝えます。そこからはしばらくキーボードに向かって文章を入力していきました。
時間が来ると、みんなの意見をまとめて、気になるところを紹介していきました。疑問に関して、実際に上田先生に答えてもらったり、というふうに授業を進行していきます。
発表する人が立候補で出ないときには、お互いの書いたものを見られるモードにして、それぞれの書いたものに「いいね」を押したり、コメントをつけたり、ということをしました。コメントにまたコメントがついて、そこで話し合いになることもあるそうです。
発表のやり方として、自分の意見を発表するということもできますが、自分がいいと思ったクラスメイトの意見を発表する、というやり方もあります、と才記先生は言いました。こうした発表の仕方は、手を挙げて、声で伝えていた今までの形だけでなく、新しい形となりえます。発表の仕方(させ方)に選択肢が増えるということは、いいことだと思います。
2つ目の課題として、「ICTで何ができるのか」「ICTで子どもの学びは…」という課題を出し、それについてもディスカッションを行ないました。才記先生が例として出すエピソードが、どれも教員らしくてとてもいいと思いました。
- 黒板が見えないから、iPadで撮影して拡大する。
- 卒業作文の下書きを、ICTを使ってやった。なぜなら、その方が直すのが速いから。
- 学級経営でも使っています。ICTは分断するものではなく、繋ぐもの。
こうした言葉を聴くことができたのも、この勉強会の大きな意義ではないかな、と思いました。
サウンドエデュケーション(小林先生)
最後に、小林先生がGarageBandを使ったサウンドエデュケーションを紹介してくれました。教室で、音に傾聴するように言ってみると、車の音や、隣のクラスの声や音、さまざまなものが聞こえてくるということに、児童たちが気付いた、と言います。最初は、音に注意させるために、文字で「ガー」などと書いてもらっていたそうですが、それをGarageBandでサンプリングし、リズムに合わせたり、曲のようにしたりする、ということを授業で取り入れているそうです。テレビの音やエアコンの音など、今まで気にしなかった音をどんどん探してきてくれるそうです。
実際に声や音を録音して、サンプリングに使ってみます。
こうして実際に声や音を録音して、自分たちなりにそれぞれが違うものを作れる、というのはやはり非常に盛り上がります。
小林先生は、教科の中だけでなく、学級経営の中にも、GarageBandを使った、というエピソードを話してくれました。こうしたエピソードを聴けたのも、よかったと思います。
ゼミ生によるディスカッション
最後に、勉強会に参加してくれたゼミ生たちによるディスカッションが行われました。櫻井研究室では、模造紙にまとめていくという手法でディスカッションをしているようで、研究室の壁にはたくさんの模造紙に、さまざまな学校の授業や取り組みなどがまとめられていました。
以下、ゼミ生から出た意見をいくつかまとめます。
- あせった。
- 選択肢の一つとしてICTを使えるといい。
- 天体など、概念のイメージなどを体験的に学習できる。
- ICTを使いながら、その中にアナログな活動を入れるのが技だと思った。いろいろな実践を見たいと思う。
- 興味関心を惹くことができる。
- 子どもはICTをどれくらいやれば使えるようになるのだろうか。
- ICTが得意でないと、スピード感についていけないところがあった。ついていけない子はどうなるのか?
- 一人一人に渡せるようになったら、個に応じた指導ができるようになる。
- 人に意見を見られたくない児童もいる。全部が全部見えることはよくないかもしれない。
- 意見を見られたくない、ということに関して、発表するのが苦手な子は、キーボードで入力するだけで、自分の考えを他の人に伝えることができるのでいいと思う。
- 自信がなくて見られたくない、という子は、コメントをもらうことで、自信を持てるということもあるかもしれない。
こうしたディスカッションも、ICTを活用する意義を具体的に考えることにつながります。いつでもICTを使うことが正解ではないので、こうした賛否両論、両方を、ICTを使ってみたうえで、判断をしていくことができればいいのではないかと思います。
「ICTを使って、こういうことができるんですよ~」という知識を持った新規採用の先生が学校に入ることで、「ちょっとやって見せてよ」と先輩の先生から言われる、みたいになってほしいな、と思います。
今回の仕掛け人であった、多摩市立愛和小学校の松田先生と、ICT CONNECT 21「教育現場発!ニーズをシーズへ」SWGのリーダー関島さん。学生たちのディスカッションを、嬉しそうに眺めているのが印象的でした。
ゼミ生が感想や質問などをスクールタクトで書き込んでいる間にも、次の動きなど打ち合わせをしている、才記先生と上田先生。こうした小さいところにも、「チームでICTを教えている」という感じが出ていると思います。
こうしたチーム感こそが、愛和小学校がICTを上手に活用できている大きな要因ではないかと思っています。
櫻井先生は、「あのゼミ生の参加人数が、ICTを活用した授業実践への問題意識を表しています。ICTだからこそできること、アナログにこだわる必要のあること等、今後考えていく契機となったことでしょう。」と、後日お話しくださいました。
今回の勉強会に参加したゼミ生の皆さんが、向こう数年でどんどん学校現場に出て行って、こうしてチームでICTを使って、児童生徒の「どう学ぶか」を変えていく先生になってくれればいいな、と思っています。
(為田)