教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

福生市学力ステップアップ事業講演会 「タブレットは子どもの学力を高めることができるか?」(2016年7月27日)

 7月27日に福生市民会館大ホールにて開催された、福生市学力ステップアップ事業講演会の第1部のパネルディスカッションに、コーディネーターとして登壇させていただきました。
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 会場には400人くらいの来場者があったそうです。パネルディスカッションの最初に、「先生はどれくらいいらっしゃいますか?」「保護者の方はどれくらいいらっしゃいますか?」と質問をしてみましたが、先生が半分ちょっとくらい。保護者の方は、お子様連れでいらしている方も多かったです。
 パネルディスカッションのテーマは「タブレットは子どもの学力を高めることができるか?」でした。このテーマへの関心の高さが伺えると思いました。
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 福生市では、為田が開発に参加している、凸版印刷アダプティブ学習サービス「やるKey」を、福生市立第三小学校、福生市立第五小学校での小学校3年生の算数の授業で活用してもらう実証研究を行なってきました。
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 パネルディスカッションの中では、実証研究を行なった拝原先生と鹿子木先生にパネリストとして参加していただいていたので、「どういった授業を行なったのか」ということと、「どういった点がよかったか」ということを説明していただきました。
 ここでは、実際に授業の様子を撮影した写真を見せながらでしたので、「タブレットを授業に活用する」ということが、「授業のすべてをタブレットを使って行う」というのとは違うのだ、ということがイメージを持って理解してもらえたように思います。
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 タブレットを使ったほうがいい部分と、タブレットを使わなくてもいい部分(使うことで、今までの授業の良さが失われる部分)と、見極めて使っていくことが必要だということについて、ディスカッションをすることができました。
 重要なのは、どんなシステムを使っていても、先生がそのシステムをどう使うのか、ということだと思います。例えば、やるKeyは算数の問題をそれぞれの児童に適した問題を適宜出題するシステムですが、それで「やっておいて」というだけでは足りず、日々の先生方の算数の授業がベースにあって、やるKeyを使った学習の様子を先生がリアルタイムに確認することができ、その様子を見て、教室で児童の様子をみとって、声かけをする、そうした“現在の授業のスタイル”を補完するというか補強するというか、そうした形になって初めて効果が出るのだと思います。
 パネリストだった2人の先生も、おっしゃっていました。

  • タブレットを渡しただけではダメ。先生が褒めたり、こうしたらいいんじゃない?と言わないとダメ。(拝原先生)
  • ただ単にタブレットを渡すのではなく、ご褒美のトロフィーや自分の成長につながる、ということを、子どもたち自身に伝え、動機付けをする。教師からの声かけを大切にしている。子どもたちの学習状況をチェックして、算数が苦手な児童に「がんばってるじゃん!」と伝えるようにいする。(鹿子木先生)

 タブレットを使って、子どもたちが学ぶ形が変わっても、それを楽しめて、それを授業の中にどうやって活用できるだろうか、と考える先生は、タブレットを使って学力を高めることができるのだろうな、と感じます。
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 タブレットの導入は全国で進んでいますが、福生市はこの日の講演会の第2部で登壇された慶應義塾大学の中室牧子 准教授による研究も行なっており、第三者による評価をしっかりしていこうとしていることもあり、今後のこの分野について注目を集める自治体になるのではないかと思います。
 僕自身も、福生市のこの試みに参加できていること、このようなパネルディスカッションに登壇し、先生方と意見を交換できたことは非常に感謝しています。

(為田)