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袋井市立三川小学校 「未来の教室」実証事業 公開授業レポート No.1(2019年1月25日)

 2019年1月25日に、袋井市立三川小学校にて行われた、経済産業省の「未来の教室」実証事業の公開授業を見学させていただきました。この授業は、「未来の教室」実証事業のなかの、初中等向けプログラムとして採択されているもので、凸版印刷袋井市立三川小学校で実証授業を行っているものです。
 実証授業のテーマとしては、以下のような点となります。

  • 公立小学校の算数の授業に凸版印刷が開発した自習用算数教材「やるKey+」とアダプティブドリル教材「やるKey」を導入し、タブレット一人1台の環境での新しい授業スタイルを実践。
  • デジタルツールを活用し、教科学習効率化による学習生産性向上を目指す。
  • 学習の生産性が向上したことにより生まれる学習時間で、協働学習実現を目指す。

 公開授業は、大堂浩平 先生が担任されている5年生の学級で行われました。凸版印刷が開発した自習用算数教材「やるKey+」とアダプティブドリル教材「やるKey」を利用して、単元「円と正多角形」を新しい授業スタイルで学んできました。

 大堂先生が書かれた指導案の「単元について」では、以下のように新しい授業スタイルについて言及されています。

 本単元では、習得した技能や知識を活用する力を高めることを重点とした単元を構想した。習得部分では、凸版印刷株式会社の「やるKey+」を使い、個別学習を進める。レデイネステストや定着度調査の結果を元に習熟度別の4グループを構成し、習熟度が高いと考えられるグループ(A層とする)は自分のペースでどんどん習得を進め、さらに習熟を深めるために「やるKey」で学習を進める。中層(B層、C層とする)は、友達と教え合いながら自力解決を基本とした習得を進める。習熟度が低い層(D層とする)へは自力解決を基本としながらも、分からない問題について友達に聞いたり教師に聞いたりしながら、確実に習得を進めるようにする。結果、通常授業で必要な授業時数より、習得にかかる時間を1時間分短縮することができる。
 習得のための授業時数の短縮によって生まれた1時間を使い、単元の最後に知識を活用する授業を位置づける。

 この日の授業は8時間目で、学習内容は「円周率を用いて、円周や直径の求め方を理解する」でした。
 授業の最初には、大堂先生が前回の学習を振り返り、記述内容を児童に想起させていました。さらに、本時の課題について紹介し、学習の進め方の確認をして、最後に到達目標を児童に選んでもらいます。その後は、一人1台のiPadで、自分のIDとパスワードを入力してやるKey+を起動し、個別学習がスタートします。
 今回の授業で公開された個別学習をベースとした新しい授業スタイルは、スタート前はこうした先生による前回のふりかえりなどもまったくなく、完全に個別学習を進めるという企画も考えられていました。しかしそれでは十分に学習が定着しないのではないか、という懸念もあり、最初に時間をとって、先生からクラス全体に向けて前回のふりかえりや学習内容の紹介、到達目標の設定などを促す時間をとる授業スタイルとなりました。
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 今回の授業範囲では、円周率を用いた計算を行うので、電卓を配布して計算をしていきます。すべての問題は自動出題されます。ヒントを表示するボタンなども用意されているので、各自が自身の必要に応じて問題の解き方を選べるようになっています。間違えた問題については、解説を読み、再度解くように画面が表示されます。
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 本時の学習内容を早く終えた児童は、アダプティブドリル教材「やるKey」に進み、補充問題に取り組みます。やるKeyは、間違えた問題に合わせて次の問題が出題されるようになっているので、以前の授業範囲でつまずいている児童がいれば、小単元をまたがって前の問題が出題されます。こうした仕組みを使って、児童一人ひとりが自分にあった学習ができるようになっています。

 授業の最後には、大堂先生からロイロノート・スクールを通じて、クラス全体で取り組む問題が出題されました。iPadに表示された問題をノートで解いていきます。
 どのように解いたのかを、グループで解き方を説明し合うことで、一人ひとりが問題をできるようになるということにとどまらず、自分の考えを言語化することや、他の人の思考を助ける姿勢を育むこともできていたと感じます。こうした時間は、大堂先生がこれまでも学級経営のなかで大切にしてきたことだという話を伺いました。ICTを活用することで、こうして先生が大切にしてきている学級経営の方向性をサポートできるのは素晴らしいことだと思います。
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 No.2に続きます。
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(為田)