野中潤 編著『ICTで変える国語授業 ―基礎スキル&活用ガイドブック―』を読みました。
表紙の折返しのところには、次のような文章が書かれています。
インターネットの出現と情報端末の普及は、これまでとはまったく異なる次元で、知識を記録して共有することを可能にしました。だからこそ、国語科の教員は、情報の伝達や共有の基盤となる言語の教育に取り組む者として、ICTというツールのメリットとデメリット、可能性と不可能性を冷静に見極める必要があります。
教育ICTの導入、すなわちテクノロジーによって教育は大きく変化しています。これは、不可避で不可逆なものとなっています。こうした現実から、目を背けることなく、これまでの国語科教育の美質をいかに未来に手渡すことができるのかを、今から私たちは考え始めるべきです。
編著者である野中先生をはじめ、お世話になっている先生方が執筆をされています。たくさんの事例が紹介をされていて、このアイデアを読んだ読者の先生方が、さらにこれをバージョンアップ/カスタマイズして各校で使っていけば、いろいろな実践が増えていきそうだと感じました。
僕個人としては、ICTを活用して表現する手段/思考する手段をアップデートしてほしいと思っています。そのため、そういったポイントについて、いろいろと気になった部分をTwitterにハッシュタグをつけてメモしていきました。
「鉛筆やシャープペンシルの代わりにワードプロセッサーを使うことによって、語順を簡単に入れ替えたり、誤字や脱字をチェックしたり、迅速かつ的確に推敲できるようになります」(p.4) #ICTで変える国語授業
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年2月12日
「ワードプロセッサーを使って書いた文章は、クラウドサービスを使うと多くの人々によって簡単に共有することができるものになります。しかも、1つの文書に多くの生徒が同時にアクセスして、思い思いの箇所で同時にコメントを書き込むことさえ可能です」(p.4) #ICTで変える国語授業
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年2月12日
「生徒同士で誤字や脱字を指摘し合ったり、わかりやすいとか面白いなどとほめ合ったり、場所や時間を問わず、教室でも家庭でも協働して推敲することができます。(略)執筆段階から共有して互いに刺激し合いながら執筆作業を進めることも可能です」(p.4-5) #ICTで変える国語授業
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年2月12日
また、教材をPDF化することによって、教材の種類を多くすることができ、それによって学びの個別化を実現できるというのがおもしろかったです。教材がロングテイル化する、ということだと思います。ロングテイル化して、たくさんの教材を個々に対して提供することができるようになって、先生方が実現したい学びがどんな形なのかの幅が広がっていくと思っています。まずは簡単なところから、やってみて、それが自分の授業をどう変えるのかを実感してもらうのがいちばんではないかと思います。
「PDFなら大量の情報を流しっぱなしにできます。もちろん印刷や配布の管理の手間がいりません。仮にクラスのレベルをABCの3段階に分けたとして、「自分ができそうなレベルのプリントをやってごらん。ABC3種類でもいいし、簡単なAレベルだけでもいいよ」という感じです」(p.30) #ICTで変える国語授業
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年2月12日
「教材のPDF化のメリットはいろいろな生徒のレベルに対し、多様なプリントや資料を渡せることです。また、生徒が自分で判断して、レベルや量の選択をすることができます」(p.30) #ICTで変える国語授業
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年2月12日
「「あらゆる層に向けての広範な教材や資料を手軽に配布できる」、その手軽さゆえに生徒も興味のある、自分に合ったプリントを「自修」できるのです。」(p.31) #ICTで変える国語授業
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年2月12日
また、SNSなどを使って授業を行う事例も紹介されています。
ICTを使うことで、「単元や進度に合わせて時事的なことなどを授業中に教科書と結びつけるという硬直化がなくなりました。タブレットがあるといつでも「問い」を投げることができるからです。「教える・教わる」リアルな授業の他に、縦横無尽に常に「問い」を与えられる」(p.39) #ICTで変える国語授業
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年2月12日
実際にednityを使って授業でディスカッションをしている奈良女子大学附属中等教育学校の二田貴広 先生の授業を見学させていただいたことがありますが、たくさんの文章が書かれ、読まれ、相互にレビューしあって、さらにまた書き直されていくのが、静かではあるけれどとてもアクティブだと感じました。
blog.ict-in-education.jp
自分のことを振り返ると、大学に入ってICTを使うようになって、文章を書いたり考えたりする方法が劇的に変わったと思っています。いまやなくてはならない道具です。そうした体験を、初等中等教育のうちにしておいてもらいたいな、と思っているのです。
たくさんの事例が紹介されている『ICTで変える国語授業 ―基礎スキル&活用ガイドブック―』、おすすめです。
(為田)