2019年10月4日に、工学院大学附属中学校・高等学校の図書館を訪問し、有山裕美子 先生にお話を伺いました。工学院大学附属中学校・高等学校では、電子図書館を開設して、生徒が電子書籍の「読み手」になることをサポートしているだけでなく、電子書籍の「書き手」「作り手」を育てる授業も行っています。
有山先生が担当されている、中学校2年生と3年生の授業「デザイン思考」のなかで、「電子書籍を作ろう」という単元を設けているそうです。そこでは、次のようなステップで電子書籍を作っていきます。
- 著者プロフィールを登録する
- Wordで作品を制作する
- 自分でデジタル出版する人を支援するツール「Romancer(ロマンサー)」を利用してEPUBにデータを変換する
- EPUBの原稿をグループで共有して、みんなで推敲する
- 電子書籍として公開する
EPUB形式にデータを変換した後で、Romancerにある関係者で閲覧する機能を使えば、何度も推敲することができます。公開範囲を決めることができるので、まずはグループ内で読み、その後でクラス全体で読み、それから全体へ公開する、ということができます。
最後に電子書籍として公開すると、きちんと表紙などもつけられて、電子図書館に並べることもできます。
Romancerでは、Word、PDF、画像ファイルを準備して、それを出版用データとしてEPUB 3形式に変換することができます。
Wordであれば、作文、小説、エッセイなど文字中心の原稿を扱えます。また、それだけではなく、PDFを使えば、写真集や美術などの授業で作った作品、漫画などを原稿として扱えます。また、画像ファイル(JPEGやPNGファイル)を連番でまとめることもできるので、手書きでまとめたレポートなどを原稿とすることもできます。
これによって、授業で書いた作品や文芸部の作品などを電子書籍として作成することができるようになります。生徒が書いた作品を、印刷・製本して配布するという授業もされている学校はありますが、電子書籍であれば、原稿作成(=入稿)のタイミングも生徒それぞれに合わせることができるようになりますし、授業が終わった後にも生徒たちが自主的に書き続け、書籍を作り続けるということも可能になります。また、コンピュータを使って書いたものだけでなく、手書きの原稿も電子書籍にできるので、学校でのアウトプットの多くを電子書籍化することが可能になります。
文芸部などの部活動で生まれた作品も、カラー印刷の費用を気にせずに、全編カラーで作成することも可能になります。また、作成したEPUB 3のデータは、各電子書店で販売用データとしても利用できるので、より広い層の読者に読んでもらうことも可能になります。
学校に通う生徒たちのさまざまな作品や制作物をRomancerを使って電子書籍にすれば、学校の電子図書館に並べることも可能になります。こうした活動を一年一年積み重ねていくと、学校に生徒たちの知が集積していくと思います。
電子書籍の読み手であり、同時に書き手にもなってもらう。文章やレポート課題とは違い、自分の書きたいものを書いてもらい、それを自分たちで電子書籍にできるようになれば、自分の好きなタイミングで本にできます。何冊でも作ることもできますし、学校の外に届けることもできます。
工学院大学附属中学校・高等学校の図書館では、毎年書いている探究論文を閲覧できるようになっています。この探究論文も電子書籍化することで、検索も簡単になり、自分のテーマに似た先行探究を探しやすくし、先輩たちの探究の上に立って自分の探究を進める、ということもできるようになると思います。図書館という場で、アナログとデジタルの両面から学校としての知の蓄積を進めていくことができるのではないでしょうか。
No.3に続きます。
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(為田)