教育ICTリサーチ ブログ

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『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』 ひとり読書会 No.13「第13章 教育のためのゲーミフィケーションのデザイン」

 C.M.ライゲルース、B.J.ビーティ、R.D.マイヤーズ『学習者中心の教育を実現するインストラクショナルデザイン理論とモデル』をじっくり読んで、Twitterハッシュタグ#学習者中心のID理論とモデル 」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。

 今回は「第13章 教育のためのゲーミフィケーションのデザイン」を読んでいきます。ゲーミフィケーションも、ICTを活用するようになって教育の場に取り入れやすくなったと思っています。ただ「ゲームを使って学ぶ」というのとは違うというのが重要です。

 そもそも、僕らはいろいろな形のゲームに慣れ親しんでいます。ゲームはやめさせない工夫と、「もっとうまくプレイしたい!」「もう少しやりたい」とモチベーションを上手に高めるノウハウの宝庫だと思います。これをうまく学習の場に使えばいいのだと思っています。

 ゲーム要素とは何から構成されているのか、ということも書かれていました。

 ゲーミフィケーションには、2つのタイプがあると紹介されていました。

 「構造的ゲーミフィケーション」と「内容のゲーミフィケーション」のそれぞれについてポイントをまとめておきます。

  • 構造的ゲーミフィケーション
    • 「コンテンツ内容を修正または変更することなく、コンテンツの中を学習者に突き進ませるためにゲーム要素を適用すること」(p.351)
    • 「コンテンツ内容がゲームのようなものになるのではなく、コンテンツの周りの構造をそのようにする」(p.351)
    • 一般的な実装では、ポイントやレbれう、バッジ、リーダーボード(ハイスコア一覧表)、達成実績など、ビデオゲーム的なスコア要素を教育的文脈に適用する。
    • 完全週宇土区のためのクイズ問題が毎日送られてきて、ポイントやデジタルバッジを付与するというコンテンツは、学習的文脈での構造的ゲーミフィケーション
    • 行動主義とB・F・スキナーのオペラント条件づけの概念=外発的動機づけ理論に基づいている。
    • 「指導者に主な主導権があり、可変・固定比率の報酬システムを利用して外発的動機づけを提供する」(p.353)
  • 内容のゲーミフィケーション
    • 「ゲーム要素やゲームメカニズム、およびゲーム的思考を適用し、コンテンツ内容をよりゲームらしくするための方法」(p.352)
    • 「このタイプのゲームフィケーションの一般的な実装では、ストーリーやチャレンジ、好奇心、ミステリー、キャラクターなどのゲーム的要素をコンテンツに追加し、学習者を引きつける」(p.352)
    • タスクや活動が内発的に動機づけられているとみなして人間の動機づけを説明する、自己決定理論である。自己決定理論には3つの要素がある
      • 自律性:自分がコントロールできているという感覚であり、行動の結果を決定できると思うこと。
      • コンピテンス:チャレンジしたいという思いと完全習得したという感覚として定義される。
      • 関係性:他者とのつながりを感じたときに経験される。
    • 「自律性、コンピテンス、および関連性の感情を促進することを目的として、さまざまなゲーミフィケーション要素を利用するように教育コンテンツが変更される」(p.353)

 構造的ゲーミフィケーションと内容のゲーミフィケーションは、動機づけが外発的なものか、内発的なものかの違いはあるが、普遍的原理は共有しているとのことで、以下にまとめます。

  1. 学習者のエンゲージメントを掻き立てて維持する
    • 「学習者は、活動や意思決定、刺激への対応を通じて、学習過程に関わる必要がある。これは簡単に思えるが、ほとんどの学習者は教室で受け身になっており、授業の信仰に関わらないことに慣れている」(p.354)
    • 「シッツマンは、シミュレーションゲームがコース教材を受動的ではなく能動的に伝達した場合、比較グループに比べて、個人がより多く学んだことを示した」(p.354)
  2. 安全な環境にて明確に定義されたルールを前提に、有意義で重要な選択をするように学習者を促す
    • 「ルールはゲーミフィケーションの重要な要素である。学習者は、何が許されており何が許されていないのかの許容範囲を知る必要がある。そして学習者はこれらのルール内で決定を下すことができる」(p.354)
    • 学習者に自律性を与える必要がある。自律性=「学習者が個人的なゴールに関して、外部からの圧力がない状態で活動するときに経験する自発性と自由を指す」(p.354)
    • 「失敗することで学習者は、自分のアプローチや方略を再考する。そのため、ゲーミフィケーション経験に、より一層の内容の深みが追加されることになる」(p.355)
    • 「何かを達成するまでに何度か失敗することで、勝ったときに達成感を植え付けることができる」(p.356)
  3. 完全習得に向かう進歩を目に見える形で証拠として学習者に提供する
    • ゲーミフィケーションでは、学習者が教授過程のどこにいるのか、どこに向かっているのか、そして最終的な到達点まであとどのくらいあるのかを示す必要がある。発想としては、学習者が進歩を「見る」ことができる、ということである。」(p.356)
    • 「効果的なゲーミフィケーション環境ではゴールとフィードバックを活用して完全習得指向を徐々に染み込ませていく」(p.358)
    • 学習者は、ゲーミフィケーション環境でさまざまなフィードバックを受け取る。

 こうして普遍的原理を見てみると、「ルールが明確である必要がること」「主導権を学習者が握るべきであること」「さまざまなフィードバックを得られること」など、学校現場にも援用できる原理がたくさんありそうだと感じます。
 以前、Ludix Labの藤本徹 先生と福山佑樹 先生にしていただいた話ともリンクしていきます(というか、正直このときのプレゼンテーションの方が詳しくいろいろと伺えたので、この章の理解を大いに助けてくれています)。
blog.ict-in-education.jp

 直接デジタルでゲーミフィケーションを取り入れることがなくとも、ゲーミフィケーションのデザインの普遍的原理などは、学校経営、学級経営のなかにも活かすことができるのではないかと思いました。

 No.14に続きます。
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(為田)