教育ICTリサーチ ブログ

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授業で使えるかも:Google Earthを見ながら歴史小説『シナン』を読む

 夢枕獏さんの小説『シナン(上)』と『シナン(下)』を、友人に薦められて読みました。シナンは、ミマール・スィナン(Mimar Sinan, 1489年-1588年)とも表記される、オスマン帝国の建築家、土木技術者です。シナンのことは、まったく知らなかったのですが、オスマン帝国のスレイマン大帝の時代に生きた建築家で、物語を読みながら、オスマン帝国のこと、スレイマン大帝のこと、イェニチェリのこと、いろいろと知ることができました。物語もすごく好きです。

 キーワードとして何度も出てくる、聖ソフィア、そしてシナンが創り出すスレイマニエ・ジャーミー、セリミエ・ジャーミー。どれもすごく魅力的に描かれていて、Google Eathで検索して実物を見ながら読み進めました。ガイドブックで検索してみると、ビザンティン帝国時代に建てられた、キリスト教正教会の大聖堂を起源とする聖ソフィア(アヤソフィア)も、スレイマン大帝の名前が冠されているスレイマニエ・ジャーミーも、内部の360度写真と合わせて見ることができます。

 また、同時代の人として、ヨーロッパにはミケランジェロがいて、対話をするシーン(下巻 p.32-33)も出てきます(記録にはないそうなのですが)。

「仕事をしなさい」
ミケランジェロは言った。
「それ以外に答を得る方法はないよ。人に問わずに、仕事に問うことだ。自分の手に問うことだ。仕事をしなさい」
力強い声であった。
「様々なことが、我々を襲ってくる。病。死。権力争い。戦。女。それこそ数えきれないほどのものが、常に我々を襲ってくるのだ。しかし、どのようなことが我々を襲ってこようとも、我々には、仕事がある。この手がある。死後をとすることだ。自分のはらわたをひり出してしまうほど、仕事をしなさい。仕事をしなさい、シナン。仕事をすることだ。どのような不幸も、禍いも、我々から仕事を奪うことはできないのだ。我々が仕事を望む限りはね。仕事をしなさい。仕事をするのだ。これは、自戒の念を込めて言うのだが、結局、我々にはそれしかないのだ。仕事をしなさい。きみの仕事が、きみのその問いに答えてくれるだろう。仕事が、きみにその答をもたらしてくれるだろう。仕事をしなさい――」

 自分のやることを愚直に突き進んでいくシナンがかっこよくて、歴史小説でもあり、仕事小説としてもとてもモチベーションが上がりました。
 歴史小説の舞台をGoogle Earthで見ながら読み進めるのもおもしろいです。また、読んだ物語から歴史に興味をもったり、Google Earthで見た美術に興味をもったり、いろいろな繋がりが出てくるのだろうなと思っています。

(為田)