教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

教育 総合展 EDIX 東京 イベントレポート No.2(2021年5月13日)

 2021年5月13日に、教育 総合展 EDIX 東京に行ってきました。(当然ですが)今回のEDIXの出展ブースでも大きく取り上げられていたGIGAスクール構想の実現については、それぞれの自治体や学校によって状況が違うので、「こういうやりかたで!」という一つの正解があるわけではないと思っています。だからこそ、いろいろな自治体や学校での取り組みを知ることは重要だと思います。そうした観点で参加したセミナー「GIGAスクール構想の実現に向けた各地の取り組み」の内容のメモを共有したいと思います。

 登壇された先生方、そしてコーディネーターは以下の皆さんでした。

  • 登壇者
  • コーディネーター
    • 信州大学 名誉教授/一般社団法人 教育情報化推進機構 理事長 東原義訓 先生

 片山先生と曽根原先生はオンラインでの参加でしたが、このメンバーだと、都道府県教育委員会、市区町村教育委員会、学校とそれぞれ違う立場からの話を聴くことができます。また、コーディネーターの東原先生がおっしゃっていましたが、「3つのOSの導入を代表する東日本各地域のパネリストがその秘訣を語り合う」というのも、参加する価値があったと思います。
 また、それぞれの先生方のプレゼンテーションにおいて、文部科学省から3月12日に出た、「GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について(通知)」(PDFリンク)で見ることができる、本格運用時チェックリストとの比較をしてくださっていたのもよかったと思います。「GIGAスクール構想の下で整備された1人1台端末の積極的な利活用等について(通知)」は、「管理・運用の基本」、「クラウド利用」、「ICT の活用」、「研修・周知」、「組織・支援体制」の5つの観点が挙げられています。
f:id:ict_in_education:20210517140129p:plain

 以下は、為田が作成したメモであり、書き間違いや認識違いがもしあれば、それは登壇された先生方ではなく、為田の責任です。ぜひ、共有したメモの中に役立つものがありましたら、ご自身で検索をしたりリンク先の情報を見たりして、それぞれの自治体・学校で役立てていただければと思います。

つくば市立手代木中学校

 最初に、つくば市立手代木中学校の大坪先生のプレゼンテーションのメモです。

  • つくば市は進んでいた印象だったが、1人1台揃っていたわけではない。だから、GIGAスクール構想は良い機会になった。
  • 全児童生徒にPCを配布、PC持ち帰りの手引きを配布、インターネット利用状況アンケートをして、500台のルータを配布。
  • スクールローヤーを設置して、子どもたちが安心して使えるようにした。
  • 市内同時接続を考慮し、ローカルブレイクアウト回線になった。
  • 市内の先生が使えるように、活用イメージ・事例の共有を図る(図書コンテンツやWEBコンテンツ)
  • つくば市GIGAスクール構想 つくば市総合教育研究所のサイトで見られる。
  • つくば市先進的ICT教育のサイトでは、実践事例をタグで探すことができる。

 最後に紹介された、つくば市総合教育研究所のサイト、実践事例だけでなくパンフレットなどもたくさんアップされていて、とても参考になると思いました。

新潟市教育委員会

 次に、新潟市教育委員会の片山先生のプレゼンテーションのメモです。

  • 新潟市、167校。学校数167校、教職員4000人、児童生徒数60000人。
  • GIGAの「for All」誰一人取り残さない、を大事に。
  • 3つのOSの長所短所を考えて、iPadの直感的な使いやすさをとった。アプリはロイロノート・スクール、ドリルパークなど、スキルがなくても使えるもの。基盤はGoogle Workspaces for Education。
  • WiFiモデルで。
  • さまざまな課題が
    • 情報教育推進課がなく、意思疎通が…
    • 中学校に大型テレビが…
    • 指導者用端末が…
    • 充電保管庫のタイマーが…
    • ネットワーク帯域が…
    • アカウント配当の際に…
  • 新潟市立学校 GIGAスクール構想推進ガイドラインを策定。一人一人の先生方が読んでわかるように表現を工夫した。
    f:id:ict_in_education:20210517141427p:plain
  • 「パスワード管理を考えよう」の参考資料は漫画になっている。先生にも子どもたちにもわかりやすく。
  • 令和の学習過程を、全教科での事例を共有している
  • 情報モラル、デジタル・シティズンシップの考え方で、「新潟市GIGA宣言」を出している。小1から中3まで、今後高校まで含めて、「人が嫌がることをしない」など入れている。
  • 運用は自由に。壁紙を変えられるようにしているのは何故か、という意図も漫画で紹介している。
  • 地域・保護者の方向けにも、PTAとしても応援しましょうというリーフレットを作ってもらっている。
  • 課を超える、GIGA調整会議をしている。端末調達、研修、広報など、すべてが関わってくる。
  • 学童保育との連携
    • 学童保育にもWiFiがつながり、デジタルドリルなどはできるようになる。
    • 仲間作り、熱意・ビジョンの共有。一人でできる代物ではないのが、GIGAだと思う。他の課だけでなく、学校現場にも仲間を。

 多くの事例を紹介してもらえました。GIGAスクール構想によって端末をどう使うかということについては、学校・先生・児童生徒だけでなく、地域・保護者向けにリーフレットを作ったり、学童保育と連携をしていたり、実践のヒントがたくさん見つけられました。

相模原市教育委員会教育センター

 次に、相模原市教育委員会教育センターの渡邊茂一 先生のプレゼンテーションのメモです。

  • 相模原市GIGAで目指す教育「共に認め合い、現在と未来を創る人」というのを決めている。(相模原市におけるGIGAスクール構想の推進について内、相模原市の目指すGIGAスクール構想の実現による教育のイメージ
    f:id:ict_in_education:20210517142251p:plain
  • 相模原市GIGAスクール推進の工夫
    • 「量(=数字)」ではなく、「質」を目標にしている
  • 教育センターだけが頑張るような仕組みにしないことがポイントだった。
    • 行政、学校の教員、実績のあるメーカーが協力する。
  • 相模原市授業事例
    • 1年生がポスターをJamboardを使って作る
    • 4年生の総合的な学習の時間で、保護者へのアンケートをFormで作ったり、Scratchで読み上げアプリを作ったり。授業で慣れれば、クラスルームの方で自治活動が始まる。先生が「管理する」のではなく、子どもたちが自分たちで学校生活を楽しむツールとして使っている。
    • 中学校でも、社会の学習、総合的な学習の時間の時間、技術・家庭 技術分野の学習。手書きが苦手な子がコンピュータならばかける、ということも。
  • コンピュータは、「児童生徒が個人の意思で授業中に使えるようになる」というところを目指さなければならない。
  • 相模原市教育の情報化Webページ
    • 児童生徒が教員の想定の範囲を飛び越えることを目指す
    • まず児童生徒に端末を渡す。ルールは使いながら作っていく。
    • 小学校1年生から、どのような情報活用能力をどのような方法で育成するのかといったことを計画する。「1年生からローマ字で入力させてもいいですよね?」と問い合わせが来たりもする。

 渡邊先生がおっしゃっていた、「教育センターだけが頑張るような仕組みにしないことがポイント」というのは、とても大事な視点だと思いました。また、「どれだけICTを使ったか、を量で測らない」というのも、教育委員会から方針を発信する意味がとても大きいと思います。

長野県教育委員会

 最後に、長野県教育委員会 学びの改革支援課 参事兼課長 曽根原好彦 先生のプレゼンテーションのメモです。

  • 県教委としては、色々な市町村があるので、「動きたくなるメニュー提示」「動かざるを得ない状況作り」をしている。北風と太陽の太陽方式。
  • コロナ禍で、「いかにオンライン授業ができないか」ということを痛感した。
  • 教育クラウド出前講座。県教委がメニューを提示し、市町村教委や各学校が応募する。主体は学校であり、先生方にその気になってもらう。
  • Googleフォームを使って、各市町村に適時調査をしている。全県の様子、他市町村の様子を知ってもらう。
  • 長野県では、一人1IDの命名規則も決めている。
  • GIGAスクールやってみよう!!スタートガイド」を用意している。項目のクリックとQRコードでの読み込みを実装。
  • 長野県ICT教育推進センター
    • 「オールながの」で!
    • センター長に外部の有識者として、信州大学村松教授
    • センターと連携する協議会を運営。県の方向性を検討、共有している。
  • 令和3年度の目標「子どもたち全員が、クラウドによる「同時共同編集」ができる」
    • 県全体の具体的な目標としてこうしたものを打ち出している。
  • 県教委と市町村教委との連携ができているところは少ない。
    • 市町村だと小さいところもあって、自分たちだけではできない、というケースも多い。進んでいる自治体の知見を他市町村へ共有していくことが重要。

 市町村単位でいろいろと動いていくよりも、県全体で大きな方針を作って、それをベースに各市町村でできることを作っていく、という方が速いこともたくさんあると思います。

パネルディスカッション

 最後に、パネルディスカッションの時間もありました。コーディネーターの東原先生からの問いかけに、登壇された先生方が答えていく形式でした。特に自分で気になった部分をメモしました。

  • 環境整備の段階を超えた自治体だったと思う。理念・志が高い、というのが共通していると思う。「北風と太陽」という話もあったが、どうやったら「誰一人取り残さない」というのが実現できるのか?まだスタートできていないところにどういう提案をしますか?(東原先生)
    • 長野県の事例は羨ましい。共通でIDを作るところとかは、今からだと難しい。国の方から、各県の実態を把握して、StudyXでどう繋がりを作っていくか。OSの違いがあるけれど、僕らの目指すところは、どのOSでもできること。ただ、個別具体だと、それぞれの特性があるので、同じOSを採用した自治体同士の繋がりがあればいいと思う。(片山先生)
    • 神奈川県立高校はGoogleのIDを配布してオンライン授業を可能にしていた。そこに対して、小学校中学校がどう繋がっていくか、というのは議論になっていくと思う。(渡邊先生)
    • 長野県は信州大学とも市町村ともいい関係ができているということを感じる。市町村間で差はあるが、市町村のトップの要望を受けるときに、「長野県教育委員会でこういうのやっています」とお知らせすると、トップから市町村教育委員会へ話がいく、という新しいルートもできたりもする。(曽根原先生)
  • 3OSの違いについて(東原先生)
    • 文科省としては、どのOSがいい、とは言えない。それも当然。個別具体の失敗は、OSによってある。それぞれのOSで一長一短がある。自分のOSがいい」というのでなく、OSの違いを超えたところでのリテラシーが高まっていけばいいと思っている。(片山先生)
    • 次のOSの更新の時に、国がお金を出してくれるかは、疑問だと思っている。その時には、保護者の負担となる。そうなると、「好きなOS」というふうになるのではないか。OSの違いは、子どもたちは乗り越えていくだろう。問題は先生。3年くらいかけて、そうなっていかなければならないと思う。先生方は覚悟していかなければならない、ということ。(東原先生)

 学校、市町村教育委員会都道府県教育委員会では、状況も違うと思いますが、こうしてそれぞれの自治体や学校ごとに「どんなことができているのか」ということを共有するのは重要だと思います。僕自身、とても勉強になるセミナーでした。

 No.3に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)