ナンシー・アトウェル『イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室』を読んでいます。じっくりひとり読書会ということで、ハッシュタグ「#イン・ザ・ミドル中」を使ってTwitterでメモを書いています。こちらをブログには章ごとにまとめていこうと思います。
今回は、第2章「ワークショップの準備」です。アトウェルの授業のコアとなる、ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップの準備が書かれています。準備の背景には、「それがなぜ必要なのか」という思想が現れています。
生徒との膨大なやり取りを可能にするための準備の工夫の積み重ね
授業については、準備が本当に大切だと思っています。配布するワークシート、記録するための用紙、教師で提示するものなど、さまざまな準備が必要なのは、教室で教えたことがある人ならば、誰でもすぐにわかることです。
『イン・ザ・ミドル』の第2章「ワークショップの準備」に入ります。手順が整っている、統制の取れた教室運営をすることが大切、ということ。そのためには、準備が必要だ、と。(p.56-57) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月10日
アトウェルの行っているライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップは、すぐに成果が出るものではなく、生徒たちが「練習、練習、練習あるのみ」というふうにするための工夫の積み重ねがすごいです。
「たとえ毎日書いたとしても、書くことの成長は遅々とした歩みです。言葉の慣習や概念を学んだり復習したり、成功したり失敗したり、そしてひたすら練習、練習、練習あるのみという点では、他のどの教科よりも数学を学ぶことに近いでしょう。」(p.60) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月10日
「だからこそ、国語の教師にできることがあります。生徒たちが定期的かつ頻繁に書く時間があるということは、教師にとっては、書き方を教える機会がそれだけあるということ」(p.60)週4日のライティング/リーディング・ワークショップ。毎回クラス全体にミニ・レッスンもする。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月10日
「書く時間に教室を歩き、生徒全員と少なくとも2日に1回は話をします。生徒は一つの作品を仕上げると、できる限りの修正をして、最終確認のために私に提出します。翌日、私はその書き手たちと個々に話をし」て、表現を作品の中から選んで教える。(p.60)これを年間20作品/人。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月10日
自分が書いた作品のなかで、一人につき20回以上、個別に先生から教えられる機会があり効果的。個々に話をする=カンファランスは日本では大変。訳者の澤田先生は、Googleスプレッドシートを使って優先的にカンファランスをする生徒がわかるようにしている。(p.60-61) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月10日
生徒同士での「ピア・カンファランス」や「グループ・カンファランス」も澤田先生はされているそう。なるほど。ピアでもグループでも、Googleドキュメントにコメントを残しておけば、ピア・カンファランスの様子を先生もレビューできるだろうか。やはり量が膨大になるか…。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月10日
Twitterであすこま先生からコメントをいただきましたが、やはりここは時間がかかる部分であるそうです。ICTで記録を残すことは簡単でも、「記録すること」は目的ではなく、「記録してレビューすること」が目的なので、何らかの工夫が必要だと思います。Googleフォーム→スプレッドシートに書き出す方法をちょっと試作してみようと思っています。
アトウェルの授業時間など
アトウェルの授業についての情報も書かれています。月曜日から木曜日まで、85分を1つのまとまりとして、7年生と8年生の合併クラスだそうです。
「インターネット文化がなくなることはありません。国語の教師はそれを受け入れ、同時に生徒たちが本を読むようにする必要があります。自分で読む本を選ぶよう誘いかけ、学校でひたすら読む時間を確保し、必ず自宅に本を持って帰って続きを読むようにします。」(p.66) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月11日
アトウェルの授業計画は、月曜~木曜まで、85分を一つのまとまりとして、7年生・8年生の合併クラス。「85分を、生徒が書き手や読み手として夢中で取り組めるように何ができるのか、何をしたいのかを主体的に予想したり計画したりできるように」設計している。(p.66) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月11日
授業計画も書かれています。ただ「どうぞ読みなさい/書きなさい」には当然ですがなっていません。それぞれが「今日の予定」を言うというところがすごいです。また、週末に書き手としての勢いを失わせないために、1時間書くことになっているのもすごい。ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップは、国語の授業への付け足しではなく、「国語の授業そのもの」だからこそ、時間をかけてしっかり行っているのです。
アトウェルのライティング/リーディングワークショップのスケジュール:1.「今日の詩」を読み、その詩を「ひらくように読む」(10~15分)2.書くこと、もしくは読むことのミニ・レッスン(5~20分)3.一人ひとりの書き手の今日の予定の確認(2~3分) →続く #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月11日
アトウェルのライティング/リーディングワークショップのスケジュール:4.書く時間。この間、できる限り多くの書き手とカンファランス(25~30分)5.アトウェルか生徒によるブックトーク。(10~15分)6.読む時間。この間、一人ひとりの読み手の状態を確認。(p.66-67) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月11日
火曜日と木曜日は、授業の最初の5分間、生徒は自分専用の書き取り練習用紙に載っている単語から、単語の学習。全員への宿題:平日毎日30分本を読むこと+週末に書き手としての勢いを失わせないため、週末は1時間書くこと。(p.68)→実践できる生徒すごい。レディネス作りが問題。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月12日
ライティング/リーディング・ワークショップは、国語の授業への付け足しではない。ワークショップそのものが国語の授業。ワークショップのなかで、理にかなっていて実際に効果もあることすべてを教える。(p.69) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月12日
書くことを教えるための工夫
アトウェルが積み上げてきた、書くことを教えるための工夫として、興味深かったのは、文法学習についての話です。
「文法学習は生徒の能力育成にはマイナスであることがわかっている」「会話を細切れにして教えたり、疑問文や感嘆文などの分類を教えたりするのは逆効果」という研究成果は出ている。(p.70) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月12日
文法学習や、文の種類の分類などを教え込むことで嫌になり、文章を書くことに負のインパクトを与えるのでは?教え方に問題があるのであって、その事自体はスキルとして必要ということなのかな。必要であればカンファランスの中で文法について触れることをするのだろうか。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月12日
「本当に必要だったのは、綴り、句読法、言葉づかいなど、実際にどのように書き言葉が使われているのかという知識や情報(略)そういう知識があって初めて正確に書くこともできますし、きまりの悪い思いをすることもないのです。」→生徒に必要な文脈で伝えるということ。(p.71) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月12日
ライティング・ワークショップとICTの関わり
アトウェルのライティング・ワークショップでは、PCを使って文章を書くことはどのように扱われているのでしょうか。
アトウェルのワークショップでは、PCを使って原稿を書くのもOK。使い方は生徒それぞれ。「必要なのは、それぞれが試してみて、生産性の高さと書き手の技を使う観点から、自分にとってのベストを見つけることです。」(p.74)→まったくそのとおり! #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月12日
完成原稿は出版気分を味わうために全員がPC入力。下書きを再検討する段階では、逆に全員が手書きを活用。画面上で推敲作業をするのは、「若い書き手たちにとってはかなり困難だということに気づいたからです。」(p.74)→こういう教育的効果からのPDCAこそ、学校ですべきこと。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月12日
「とはいえ、パソコンを使うことで、作品の分量も数も増え、色々な試みがたくさんできるようになりました。保存し、再編集し、加筆し、削除し、様式を変え、修正もする……というように、すべての生徒がパソコンの恩恵を受けています。」(p.75) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月12日
「とりわけ学習障害のある生徒にとってメリットははかりしれません。書き言葉の慣習にのっとり、文字の判読もしやすい作品が書けるので、教室の外の読者にも読んでもらえ、影響も与えられるからです。」(p.75) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月12日
毎授業の積み重ねがある。紙で行っている部分もあります。このあたりはデジタルでよりパワーアップできそう。教室にいなくても、いつでも振り返りができるようにしておくことも可能になります。
アトウェルの教室には70cm弱×80cm強の罫線付きの一束の紙をイーゼルに載せて、黒板のように使っている。保存できるので、生徒と一緒に過去の資料を見たり改訂したり、ミニ・レッスンに必要なことを書いておいたり、指示や宿題を書いたり。次年度以降の教材にもできる。(p.76) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月13日
「ライティング・ワークショップでは、翌年の授業でも使えるように、ミニ・レッスン、例示したこと、生徒の書いた上手な文章を残して、整理しやすくする必要があります」(p.76)→デジタルで、キーワードをタグつけて保存するといいかも。生徒と共有フォルダに入れる手も。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月13日
教室外観図がp.78に掲載。日本の教室とは全然違う。テーブルばらばら。ミニ・レッスンのエリアは中央、みんなで集まってレッスンを聴く。大きな本棚、PCも全員は使えないけどある。日本でだと、ラーニング・コモンズとして実現している学校がありそう。個が好きに学べる環境。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月13日
ライティング・ワークショップの進め方
ライティング・ワークショップも、「自由に書きましょう」という時間ではありません。アトウェルが、生徒たちのことを把握したうえで、どのようなことをするのかというベースは作って、時間を渡している感じです。
「一人ひとりの生徒が何を書き、何を読んでいるのか。本を読み終わりつつあるのか。宿題をしたか。作品は終わりそうな段階か…そうしたことを、私は毎日把握する必要があります。生徒が必要としている助けや、背中を押せるポイントも知らなくてはなりません。」(p.86) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月15日
アトウェルはライティング・ワークショップの最初に、その日の計画を生徒に口頭で言ってもらう(題材、ジャンル、計画)。理由は3つ:自分の執筆計画に責任を持ってもらう、クラスメイトとの共有、クラス全体での確認で書くプロセスに関する語彙を生徒に補強する。(p.86) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月15日
最後の「各プロセスに関する語彙を教えて補強する」というのは、「もう一度書き直す」を「下書き第2稿に入るのね」というふうに言い換えることだそうです。こうした部分は、授業でこそやる意味があると思いました。
ライティング・ワークショップで、アトウェルは生徒に語りかける。「自分がどんな人であるのか、あったのか、あるいは、どんな人になりたいのか。それに関わるような、価値のある題材を選びなさい」(p.94)。応えられる子どもたちすごい。問われて、今の自分でも何を書くか悩む。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月15日
PCを使うことも認められているが、ダブルスペースで書いて、2日に1回印刷し、スクリーンから離れて、鉛筆を持って、印刷した下書きを読む。パソコンの画面の範囲で考えるのではなく、テキスト全体で考える。(p.96)→これ、すごく大切。地味だけどICTを使うときに教えたいこと。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月15日
「パソコンで書く時は、ミスの確認をする段階で綴りの確認をする。入力ミスではない綴りの間違いがあれば、自分専用の書き取り練習用紙に、その単語を追加する。」(p.96)→日本で、漢字の間違い、表現の間違いなどについても同じような方法は可能だろうか? #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月15日
ピア・カンファランスの工夫
クラスメイトから意見を聴くピア・カンファランスについても、ただ「読み合いましょう」というふうにはなっていません。
生徒の作品について、クラスメイトから意見を聞くピア・カンファランスをしている。そのためには、静かな環境が必要。このときは、内容と文体のみを対象としたフィードバックに。(p.79) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月13日
アトウェルの教室にある、ピア・カンファランス用紙。「誰がそのエキスパートなのかを考える。そのクラスメイトは【いい動詞をたくさん知っている】ので、ピア・カンファランスで【五感に訴える動詞の選択】についての助言を依頼する」と、依頼内容を明確にする工夫。(p.100) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月16日
【 】の中をきちんと書いて、どんなことを依頼するのかを明確にしているのがいいと思う。これがないと、ピア・カンファランスのテーマが曖昧になりそう。 #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月16日
リーディング・ワークショップで期待すること/ルール
「リーディング・ワークショップで期待すること」は教室にいつもある。「できる限り大量に、できる限り楽しんで読もう。楽しく本を読むこと。マルカム・グラッドウェルが、上手になるには1万時間の練習が必要だ、と言っていることを心にとめよう。」(p.103) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月16日
リーディング・ワークショップのルール。「1.必ず本を読むこと。雑誌や新聞だけでは、読む練習としては量が不十分で、どんどん読めるようにもならないし、自分がどんな読み手であるかを見つけることもできない。」(p.104) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月16日
→この後に掲載されている、「生徒たちが考えたジャンル一覧」(p.105)にエッセイや短編もあるので、文量の問題ではないのだろうな。本に夢中になる「リーデイング・ゾーン」に入るため、1週間に7日、毎日最低30分の本を読む宿題が出ている。それだけ読めば多様になる?(p.102) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月16日
→いや、それより何より、こんなに本を読ませる、ということが今の日本の学校で可能だろうか…。「家で読んできなさい」と言って、読んできてくれるだろうか。自主学習ノートを毎日宿題にしている教室で、すごく質の高いノートが出てくる教室もあるので、環境づくりで可能か? #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月16日
アトウェルの学校「教師と生徒のための学習センター(Center for Teaching and Learning)」のサイトで、生徒がおすすめしている本を見ることができます。こうして、生徒たちが薦めたい本を見られるようにもなっています。
ライティング・ワークショップで期待すること/ルール
ライティング・ワークショップで、アトウェルが生徒に書き手としてできるようになってほしいこと:「自分自身と周囲の世界について学ぶ、練習の大切さを理解する、量をこなすことでよいものを生み出す、書き手の技のレパートリーを増やす、作品を書き上げる、…(続く) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月16日
…仕上げ作業に入ることのできる作品を持ってきて、私から書き言葉の慣習の校正を学ぶ、作品を完成する達成感を味わう、他の書き手に配慮する、教室の文具や備品を大切にする、書くたびに優れた文章を書こうとする、そして、書くことで何が得られるのかを見出す」(p.107-108) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月16日
他の読み手にも配慮をする、教室の図書コーナーを大切にする、読むたびに本に夢中になる、優れた文に浸る経験をする、そして、読むことで何が得られるのかを見出すこと」(p.108) #イン・ザ・ミドル中
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2018年9月16日
まとめ
膨大な量になってしまって、すでに読書メモじゃなくなっているぞ…。人によってピックアップする部分は違うと思いますが、僕は個人的には「文章を書けること、特に論理的に書けること、人に伝わるように書けること」を子どもたちにできるようになってほしいと思っています。
そのためには、推敲をできるようにしていくことが大切だと思っています。これは、デジタルで行うほうが圧倒的に効率がいいし、効果も高いのではないかと感じているので、情報端末を一人1台もってほしい、と思っているのです。こうした観点から、ライティング・ワークショップの準備のところはとても参考になりました。ダブルスペースで印刷させて、全体との関連を見ていく、とかは実際に仕事でしていることだし、授業内に落とし込むとこうなるのか、と勉強になりました。
第3章は、いよいよ「ワークショップ開始」です。楽しみに読み進めたいと思います。
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(為田)