2021年5月21日に開催されたオンラインセミナー「192Cafe 私立小×GIGA~ICT先進校の現在地とヴィジョン~」に登壇させていただきました。192Cafeは、私立小学校の先生方が「未来の学び」について考えるオープンイノベーションベースで、為田は事務局を務めさせていただいています。
無料イベントでしたが、Peatixで増席した250名のチケットが完売、全員はご参加いただけませんでしたが、私立小学校の先生方だけでなく、公立小学校の先生方や教育委員会関係者、教育に興味がある多くの企業の方々にもご参加いただきました。ありがとうございました。
今回はKeynote Speechで「GIGA時代の1人1台端末で目指す学び」というテーマでお話をさせていただきました。今回のイベントは、僕のKeynote Speechの後で、分科会:さとえ学園小学校・敬愛小学校・関西大学初等部・宝仙学園小学校の4人の先生方によるプレゼンテーション、ライトニングトーク:長野日本大学小学校、明星小学校、加藤学園暁秀初等学校、昭和女子大学昭和小学校、成城学園初等学校、森村学園初等部の6人の先生方による実践紹介がありましたので、それらの事例を聴いて勤務校でのICT活用へと繋げるための評価軸になるような話ができればと思っていました。
そのなかでお話をさせていただいたのは、せっかく導入された一人1台の情報端末を、「先生が授業のために」使うフェイズから、きちんと「児童生徒が思考・表現のために」使うフェイズへと進んでいくように、ゴールを定めて使いましょう、という話をしました。
多くの学校に研修に行って、先生方と話していて、「いきなりそんな児童生徒に使わせられない」「まずは先生から」と言う学校もたくさんあることは知っています。別にそれでもかまわないと思っています。でも、その先に児童生徒が考えたり表現したりするために使う未来を見据えて使わないとダメだと思っているのです。
授業支援のシステムを使って、先生が課題を出して、端末から回答を回収している、ということでもって、「一人1台の情報端末を使いこなしている」と言ってしまうのでは、あまりに未来がないなと考えています。(使わないよりはずっといいので、スタートとしてはいいですけどね)
そうして一人1台の情報端末の利用に子どもたちが慣れてきたら、自由にどんどん使えるようにしてあげてほしいし、もっと言えば、デジタルかアナログか、どちらで学ぶかを子どもたちに選ばせてあげてほしいと思っています。そこが本来の学校が子どもたちに自分で学ぶ力をつける、というゴールになるのだと思います。
そんなメッセージをやわらかく伝えてみたいな、と思っていて、「デジタルとは子どもたちにとってどんなものになるべきなのか」という問いを共有してみました。
僕は、デジタルを子どもたちが使うようになることで実現するのは、子どもたちの能力を「拡張」するものだ、と思っています。目が悪かったらメガネをかけるように、自分がもっと上手に学べたり、覚えられたり、計算したり、人に何かを伝えたり、そのためにいつでも自由に使える道具になったらいい、と思っています。だから、能力の拡張だけでなく、学び方、考え方、伝え方、コミュニケーションの仕方、友達の範囲、あらゆることの「拡張」になればいいな、と思っています。
このあたり、もっと上手に伝えられるように、また「拡張」という言葉がそもそもあっているのかも含めて、これから表現を磨いていきたいと思ってFacebookに書いたら、多くの方からコメントをいただいて考えが広がりました。
そのなかで、帝京大学大学院教職研究科の為川雄二 先生が、以下のようにコメントをくださいました。
障害児者支援・特別支援教育の業界に、AAC(Augmentative & Alternative Communication)というタームがあります。意思表出に障害のある人が、何らかの道具(ICTを含む)を使って表出することです。ローテクでは五十音表の仮名文字を順に指さしして表出したり、ハイテクではICTを使った表出アプリもあります。かつて、このAACは「補助・代替コミュニケーション」と訳していましたが、近年では「拡大・代替コミュニケーション」と訳します。まさにテクノロジーでコミュニケーションを拡大する、という思想です。
為川先生が書いてくださった「拡大」という考え方、僕が感じていることと近いな、と思っています。こういう方面の情報も引用しながら伝え方を工夫してみようか、と思っています。
この「拡張」の考え方、しばらく考えてアウトプットしていきたいと思っています。研修の機会に先生方にもお話しさせていただきながら考えたいと思います。
(為田)