2021年10月7日にオンラインで開催された、WEBセミナー 「WEBQU×まなびポケットCBT~学級経営が学力向上に役立つ理由~」に参加しました。
第1部は、早稲田大学教育・総合科学学術院 教授の河村茂雄 先生による講演「WEBQUとは?開発者の視点から教育論を語る!」でした。講演の要点をまとめていきたいと思います。
なぜWEBQUが開発されたのか
WEBQUが開発された背景には、河村先生がもった「社会が大きく変わり始める実感」があったそうです。
- 2010年代初頭、人材育成のやり方が大きく変わると実感
- 大学生の就職の様子が変わってきた。言うことをきいているだけの学生よりも、自分の意見を言える学生が評価されるようになってきた。
- 資質・能力(コンピテンシー)。問題解決に繋がる能力。
- 認知能力:
問題場面で活用できる思考力・判断力・表現力など- 非認知能力:
自己に関する能力と、社会性に関する人と関わる能力- 非認知能力は従来、気質や性格だと言われていたが、これがスキルと捉えられて、育成することが目指されるようになった。
- 社会が変わってくる実感が出てきた
そこにさらに、以下のような学校教育の大きな急速な変化が出てきて、河村先生は「教師個人で対処できる限界を超えている」「これでは追いつけないな」と感じたそうです。
- 育成目標の変化・急拡大
- 主体的・対話的で深い学びへと学び方が変化。
- アクティブラーニング、インクルーシブな学び。
- 先生方の仕事の増大、多様化。
- ICTの積極活用
- 個別最適化。協働学習。
- スピードが求められていく。
- チーム連携
- お題目ではなく、しなくてはやっていけない。
- 人材不足。最少人数でずっとやっている。
- 働き方改革
- 仕事は減らない。徹底的に効率化するしかない。
- チームで、ICTを使いながら、という流れが来る。
「教師個人で今までどおりやっていてもだめ。次の10年は、いままでやってきたことをICTを使ってやっていこう」と考えた河村先生は、これまで学級生活の満足感を測ってきたQUをベースに、WEBQUを開発されたそうです。
学校にはなぜWEBQUが必要か
WEBQUは、子どもたちがWeb上で質問に答えることで「各児童生徒の特性と支援領域」「学級集団の状態の強みと弱み」が結果として提示される学級経営サポートシステムです。
WEBQUが、大きく変化を迎えた学校において効果をなぜ発揮できるのかを、河村先生は3つのポイントにまとめて説明しました。
- アクティブ・ラーニングを推進する学級づくりの指針が提供される
- いままでのQUでは、クラスの様子をマップで提供していた。そのマップを見て「どうすればいいか」を先生が自分で考えて次の一手を打っていた。
- WEBQUでは、先生が結果を自分で読み取らなくても、学級一人ひとりの児童生徒の状態もすぐにわかるようになっている。ハイリスク群の子どもたちを特定して抽出できる。コロナ禍で、孤独孤立も増えている。そうしたことが具体的に明示される。
- WEBQUでは、蓄積されたデータをもとに、「同じような状況で、うまくやっていた先生はこうやっていましたよ」と教えてくれるナビ機能を提供している。
- ナビ機能を利用するかどうかは先生が選べる(カーナビと同様。最後に道を決めるのは自分)。対応の指針があることで助かる先生がいる。
- 入力し終えたら、“瞬時に”分析されて、結果が出力される
- WEBQUの質問に子どもが答えると、すぐに結果が出る。
- 困っている子どもは、すぐに対応してほしい。すぐに校内研修ができる。先生のモチベーションが高まっているときに一気に活用できる。
- 学級集団づくりを、校内のチームで対応できるように、データを可視化し、共有・活用できるシステムを有している
- データを可視化、共有・活用できるようにしている。
- 紙で印刷すれば、担任の先生がしまってしまえば他の先生は見られない。
- 一人でやる時代は終わった。学年担任制なども出てきている。一人だとどうしてもミスが出る。複数の目でやっていく時代になってきている。
- 管理職も主幹教諭も結果を見られるように、管理職画面も主幹教諭画面もある。
- 学力テスト結果との関連検討機能もついているので、「わかっていないだけでなくて、学習意欲が落ちているのでは?」とか「やる気はあるけれどクラスでいやなことがあったのではないか」ということが分析できる。
WEBQUでどんなことがわかるようになるのか
WEBQUの結果画面では、子どもたち一人ひとりの診断結果を個人票として見ることができます。そのなかで、満足度得点や意欲得点、学級満足度を見ることができます。
また、いじめや不登校の問題、学習意欲の問題を確認することもできます。例えば、学級満足度尺度の結果をまとめて見ながら、「からかい」や「孤立」などの条件を設定して絞り込んで結果を見ることができるようになっています。
WEBQUでは、学級集団の状態を、安定度と活性度のバランスの視点でカテゴライズします。安定度と活性度について、それぞれスコアが高いとどうなるか、スコアが低いとどうなるかを、河村先生は以下のように説明されました。
- 安定度
- +:学級内の人間関係の落ち着き、型にはまった動き、団結力が高まる。
- ー:学級内の人間関係の固定化、同質的な行動ができない者を排斥する。新たな発想が生起しない。
- 活性度
- +:学級内の個人の個性が尊重される、自由に考えを発信しやすい。
- ー:メンバー間のつながりが希薄化しやすい、集団の統率がしにくい。
WEBQUでは、安定度5段階のスコアと活性度5段階のスコアのバランスを見ていますが、ここで目指すべきところも変化してきていると河村先生は言います。
- 安定度
- 「協働活動が最低限できればいいな」「リーダーが固定化しているかもしれないが、集団活動はできている」として、安定度のスコアが「4:固定化」で安心してしまっていた。
- これからは、「5:安定化」を目指さなければならない。アクティブラーニングは、フラットな人間関係のなかで、フラットに相互作用をしていなければいけない。
- 活性度
- これまでは「3:遂行的」のところを目指していた=遂行だけできていればよしとされた。
- アクティブラーニングをするようになると、言われたことを素直にやるだけではだめ。知識を「活用」し、新たに「創造」できなければいけない。
安定度と活性度のバランスで学級集団の状態を見るようになって、今までは「ゆるみ型」で終わっていたのが、「ゆるみ型-流動-停滞」であるとコメントが出せるようになったそうです。そして、どうすればいいかの「アドバイス」も出せるようになっています。
WEBQUを学校経営へどう活かすか
WEBQUには、管理職・主幹教諭が見られる画面があります。管理職・主幹教諭の先生方と校内のWEBQU担当者が連携することで、大きな学校経営の方針と校内のWEBQUの結果を常に突き合わせていくことができます。
WEBQUでは、ワンクリックで以下のようなデータを分析することができるそうです。
- 全国データとの比較
- 学校内での各学年・各学級のバラツキを把握する
支援すべき学級の優先順位、視点を把握する
- 校内の特別なニーズを持つ児童生徒を把握する
- 校内のいじめ・不登校の可能性の高い児童生徒を把握する
子どもたちは1年間でどんどん状態が変化していきます。WEBQUですぐに結果を見て、どうすればいいかを担任の先生だけでなく、管理職・主幹教諭も一緒に考えていくようにしなければなりません。
河村先生は、以下のポイントをWEBQUを使うことで実現できると言います。
- 学級経営は担任の先生に丸投げではダメ。学級経営の責任は、チーム学校で担う。最低限学年でチームを組みたい。
- 学級担任1人では、気がつかないこともあるし、気がつきたくないこともある。チームであたることでそこにも対応できる。
- はじめはQUの紙さえあればと思ったが、それを横から言葉で言ってくれる仲間がいることは大事。先生たちが協働するしくみがある。
こうしてWEBQUをチーム学校で使うことで、「学校経営の大きな方針のもとに、学級集団づくり、学級経営が行われていく」ことが実現されます。
「すべての教育活動が、組織対応で展開されていくようになる」ために、学校全体でWEBQUを活用することは有効だと感じました。
No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp
(為田)