教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

奈良女子大学附属中等教育学校 授業レポート No.1(2022年10月19日)

 2022年10月19日に奈良女子大学附属中等教育学校を訪問し、二田貴広 先生の担当する5年生(高校2年生相当)の基盤探究Ⅱ(コロキウム類型)の授業を参観させていただきました。65分授業×2コマ連続で行なわれた授業では、受講している12人が3グループに分かれて「日本古典文学の学びのための360°動画教材」を作る活動をしています。

 この授業で作った360°動画教材は、2022年11月18日に奈良女子大学附属中等教育学校で開催される“「探究」的な学びをデザインする”をテーマにした公開研究会・SSH研究成果発表会で生徒たちが発表することになっています。
 今回作っている360°動画教材の題材は、平家物語宇治川の先陣」です。先日、各グループ1台のRICOH THETA(リコー シータ)を持って、宇治川へ撮影に行ってきたそうです。

 2コマ連続の1コマ目の授業で、自分たちで作成した360°動画教材を見て、成果発表の資料を作成していきました。

 自分たちで撮影してきた宇治川の360°動画を見て、以下の3つのことについて考えてもらいたい、と二田先生は生徒たちに言います。

  1. 平家物語』「宇治川先陣」の口語訳と、古文のみ(挿絵あり)からの情景のイメージ
  2. 実際に現地へ行ってどのようなイメージを持ったか
  3. 制作した動画と現地イメージとの差や共通点から考える古文の授業での活用方法

 自分たちで撮影した宇治川の360°動画を見て、テクストとして読んだ古文・挿絵・現地の3つでのイメージの差について考えていきます。また、その「差」はなぜ現れるのか考えてもらう授業になっていました。
 実際に「宇治川の先陣」の舞台である宇治川へ行って感じたことと、それを360°動画で見て感じられること、古文を読んで感じたことを比較しながら考えて、「360°動画のメリット・デメリットを考えて、古文の授業での利用価値を考えてほしい」と二田先生は言います。

 3つのグループのなかで、2つのグループはすでに動画編集が終わっていたので、二田先生からQRコードをもらって、自分のスマートフォンで360°動画にアクセスして、実際に見ていきます。スマートフォンの向きを変えることで、360°の宇治川の様子を見ることができます。僕も見せてもらいましたが、スマートフォンを横に動かせば、川のそばに立って目線を川の流れにそって動かしているように見えます。そのときに感じる川の流れはとてもリアルでした。上を向けば空が、下を向けば地面が見えます。古文で書かれている宇治川の描写を読み、この360°動画を見ることで、よりイメージを膨らませられそうだと感じました。

 生徒たちは自分のスマートフォンで360°動画を見ながら、発表資料を書いていきます。実際に撮影で宇治川を訪れて、川の流れを自分の目で見て、川の流れの音も聞いている生徒たちが、360°動画とどんな差があると感じているのかを、スライドに書いていました。

 360°動画と挿絵を比較して、それぞれのイメージにどんな差があるかも書いていきます。古文本文と、現代語訳と、挿絵と、360°動画と、現地へ行った自分の記憶を行ったり来たりしながら、どのようなイメージの差があるのかを考えていきます。

 自分たちで撮影しに行って編集して作った宇治川の360°動画と合わせて、インターネットで「宇治川の先陣争い」を検索して幅広い資料も見ていきます。表示される資料と手元の資料を突き合わせながら、さらに考えを深めていきます。

 No.2に続きます。
blog.ict-in-education.jp


(為田)