サフィヤ・U・ノーブル『抑圧のアルゴリズム 検索エンジンは人種主義をいかに強化するか』を読みました。
最初に、著者がどういう目的意識でこのプロジェクトに取り組んでいるのかが書かれていました。
私は自分の仕事を実践的なプロジェクトだと考えている。その目標は、社会的不公正を根絶すること、そして中立的だとされるテクノロジーが抑圧を助長している現状を変えることだ。このような事例を取り上げる意図は、二つある。第一に、私たちは、ジェンダー研究、女性学、黒人/アフリカ系アメリカ人研究、メディア研究、コミュニケーション研究と接点をもつ、学際的な情報学や図書館情報学の研究・学問を必要としている。それは、アルゴリズム駆動型のプラットフォームが、いかに交差的(インターセクショナル)な社会歴史的文脈に位置づけられて社会関係に組み込まれているのかをより詳細に記述し理解するためだ。アルゴリズムと人工知能の正当性や社会的影響について疑問を投げかけている、さまざまな分野の多くの同僚たちの声に、この研究も加わることを願っている。第二に、現在、社会科学や人文情報学(デジタル・ヒューマニティーズ)の専門家には、活動家(アクティビスト)、オーガナイザー、エンジニア、デザイナー、情報技術者、公共政策立案者と対話することがかつてないほど求められている――人工知能による鈍感な意思決定が、人間の繊細な意思決定を負かしてしまう前に。なぜなら、公共セクターの情報業務の外部委託によってこれまで公有財産(パブリックドメイン)と考えられていたものの私有化がいかに助長されているのか、また企業あるいは企業に支配された政府によって、こうした慣行に介入する私たちの能力がいかに損なわれているのかを検討しなければならないからだ。(p.37)
実際に検索エンジンのアルゴリズムの結果がどんなふうなのかの実例もたくさん紹介されています。原著は2018年に刊行されているので、その頃のGoogle検索のアルゴリズムのことが書かれています。現在は同じアルゴリズムではないだろうと思いますが、「検索エンジンは○○○をいかに強化するか」という問いはいまでも有効ではないかと思っています。
アルゴリズムがどんな働きをしているのかをユーザーとして知ることはできません。アルゴリズムによって検索結果は変わるのだ、ということを知ることが大事だと思いました。
(為田)