教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

エデュカッション“デジタル教材の「ユーザーからクリエイターに」”(2014年11月14日)

デジタル教材の「ユーザーからクリエイターに」

 11月14日(金)に電通国際情報サービス オープンイノベーション研究所(ISIDイノラボ)にて、エデュカッションが開催されました。今回のエデュカッションは、公立の小学校の先生方からのリクエストにより実現したものです。公立の小学校の先生方が、自学(授業の復習)や授業で子ども達がきちんと理解できるようにするためにARマーカー+動画で解決できないかとの議論をもとにして授業を企画し、それをプレゼンテーションするところからスタートしました。それぞれが授業を企画する形になっているのは、エデュカッションに参加している松田先生(多摩市立愛和小学校長)が、「教員が教材のユーザーからクリエイターに変わるように」という思いを持っているからです。テーマとしては、「時計の読み方」「四則演算のルール」などが提示されました。
f:id:ict_in_education:20141124063015j:plain
f:id:ict_in_education:20141124063039j:plain
f:id:ict_in_education:20141124063111j:plain

 動画を作成にするにあたってのいろいろな意見交換もできました。教室で実際に教えているからこそな観点がディスカッションできたのはとても有意義でした。例えば、授業を録画した動画を作る時も、「先生の顔が出ない方がいいか、出る方がいいか」という点について、意見を交わしました。先生方の自分の受け持たれている学級によっても違うし、単元の理解度によっても違うので、一概には言えませんが、例えば、「広く発信するのであれば、先生の顔はいらないと思うが、自分のクラスで復習用に見てもらいたいのならば、先生の顔を見ることで親しみがわくし、授業中のやり取りを思い出すかもしれない」というような意見が出ました。このように、授業の様子を明確にイメージして、そのためにテクノロジー(今回は動画教材)をどう使うか、という観点でディスカッションができるようになることこそが、今回のエデュカッションのねらいである、「ユーザーからクリエイターに」ということなのだと思います。
 また、単元の選びかたなどにしても、先生方がふだん教室で教えているからこそ、見えることがあります。例えば、児童がどんなところでつまづくのか、など。つまづきそうなところでは、アニメーションを使って視線をコントロールしたり、特に注意してもらいたいところをアップで見せたり、余計な情報が出ないように編集したり、というような、黒板ではなかなか難しい授業のやりかたを実現することができます。こうした点から、教育ICTをどのように学校へ導入するのかをディスカッションできたのが、とてもよかったと思います。

インストラクショナル・デザインとICT

 僕個人としては、「ユーザーからデザイナー」という方がよりしっくり来ます。先生方に、デジタル教材やデジタル機器を使った形で、「授業をデザインする(設計する)」というイメージを持っているからです。教育ICTリサーチでは、これを「インストラクショナル・デザイン(Instructional Design)」と呼んでいます。今までよりも、「わかる授業を作るために、どのように伝えるのかをデザインする」からです。「わかった!」と言ってもらうために、例えば動画を見せた方がいいこともあるし、Excelで試算をさせた方がいいこともあるし、電子書籍リーダーを使って全員で同じ本を読んでみた方がいいこともあるし、PCもタブレットも使わずに挙手させて発表させた方がいいこともある。そうしたたくさんの引き出しを先生方に持ってもらうこと。そこから最適なものを選ぶのは、先生方の経験と知見とノウハウがなければできません。引き出しを多くするのに、ICTが強力に先生方をサポートしてくれる。そうした形で先生方と関わっていきたいと考えています。
f:id:ict_in_education:20141124062933j:plain

 だからこそ、こうして先生方と話ができることは、とても有意義なことです。次回は来年1月の予定です。そのときまでに、学校訪問や学校でのICT研修講師の案件がいくつかありますので、それらをまとめて、プレゼンテーションをさせていただこうと思っています。そちらもまたお知らせしたいと思います。