NHKスペシャル「NEXT WORLD 第1回 未来はどこまで予測できるのか」
新年1月3日(日)から、NHKスペシャル「NEXT WORLD 私たちの未来」のシリーズが放送開始されました。第1回は「未来はどこまで予測できるのか」。
http://www.nhk.or.jp/nextworld/
http://www.nhk.or.jp/nextworld/
番組では、30年後の2045年にどんな世界になっているのかをドラマ形式で描いています。また、2015年現在ですでにその土台となる技術が生まれているので、それらをドキュメンタリーで紹介しています。
2045年のドラマでは、一人ひとりが情報端末を身につけるなどして使っていました。腕につけるタイプ、タブレットタイプ、Googleグラスのようなタイプなどさまざまなものを使っていたのがリアル。さまざまな予測をAIがしてくれて、ユーザーにさまざまな情報を伝えてくれる未来。
情報端末が「便利だった」という感じでみんなが持ち始めるが、情報端末を持って使っていることが常識になると、状況が変わる、というナレーションが入りましたが、まさしくそうだな、と思います。一度持ってしまうと戻れないかもしれないなあ。
さまざまな事例が番組内で紹介されていました。この番組を見て、「便利だな」と思う部分と、「いや、ちょっといやだな」と思う部分と、情報の授業などでディスカッションをしてみたいな、と思いました。
以下、ディスカッションの題材として使えそうなところをメモ。
IBMのワトソン
IBM - Let's put smart to work.
- YouTube
番組では、IBMがいよいよAIを実用段階に、という紹介をされていました。人間には思いもつかないレシピを考えてくれる、シェフ・ワトソン。「人間には思いもつかない」というのは非常におもしろい観点だな、と思いました。「いや、この組み合わせはちょっと…」という思考の制約をまったく受けないのは、コンピュータ的だな、と思いました。
将棋の電王戦のときに、棋士の方が同じようにおっしゃっていたのを聞いたことがあります。「手としては思いつくけれど、怖くてその手は打てない」みたいなものがある、と。
サンタクルーズの犯罪予測
アメリカ、サンタ・クルーズの警察で、AIによる犯罪予測を導入しているという話。過去のデータから、どの地区を警戒する必要があるか、というのを、パトロール前に確認して、タブレットを持ってパトロールに出ていました。
ドキュメンタリーの中では、実際に予測された地点で不審人物を職務質問して、窃盗犯を逮捕していました。
ヒット曲予測
ヒット曲を分析するサービス。ヒット曲の持つ属性を分析して、それにどれくらいマッチしているかという観点から、曲をプロットしていた。で、ヒット曲群(画面上では hit clusterと書かれていた)に入っている曲は、ヒットするだろうと予測するもの。
で、このサービスを利用してプロデューサーが新しい才能を発掘していた。まあ、売り込みの曲数も当然たくさんだろうし、ある程度をコンピュータで予測した上で、予測結果のうえにプロデューサー自身の感性とか経験とかで選んでいくのかな、と。
若いプロデューサーだけでなく、業界の重鎮であろう、ベテランプロデューサー(ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのプロデューサー、と字幕が出ていた)も好意的に受け入れているとのインタビューされていました。
インターネット オブ シングス
毎年17パーセント、市場が成長すると言われているインターネット オブ シングス。コンピュータ以外もどんどんネットワークに繋がっていきます。日常生活で使うもの、歯ブラシなどの小さなもの、衣服などもすべてがネットワークに繋がることで、利用者のデータを大量に得て、人工知能にインプット、予測能力を向上させることができます。
ちょうど、インターネット オブ シングスについてのニュースが出ていたので、参考にリンク。
IoT市場、2020年には「2013年の約5倍」1290億円規模に--スパイスボックス調べ - CNET Japan
雇用の未来
オックスフォード大学のオズボーン教授が出したレポート「雇用の未来」によれば、現在の仕事の半分が、人工知能に取って代わられるそうです。
原文PDFはこちら。
http://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf
紹介している記事をリンクします。
オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」(週刊現代) | マネー現代 | 講談社(1/5)
番組では、人工知能が参考となる文書を選び、人間はそのサポートをしている弁護士事務所が紹介されていました。
未来を想像して、さかのぼって考える必要
2014年の年末に開催したイノラボエデュカッションSpecial School for 2020でも、「未来の社会、未来の生活がどうあるべきなのか、というところから逆算して、そこにたどり着くためのアプローチとして教育を考えるべき。」という発表があったのですが、まさにそうだなと感じています。
イノラボエデュカッションSpecial School for 2020(2014年12月26日) - 教育ICTリサーチ ブログ
番組で紹介されていたように、AIによる予測が今よりずっと日常的に行われるようになってきたとき、人間がすべき行動は何か。そのときに、人間が身につけておくべきスキルは何か。そうしたことを考えるタイミングなのだと思います。
自分自身で意思決定をするために何が必要なのか。論理的思考や倫理観なども必要なのではないかと思います。
また、コンピュータが提示する情報を飛び越えるために、自らが動いていくということも必要でしょう。
東浩紀『弱いつながり 検索ワードを探す旅』をベースに、情報科の授業を作ってみたい - 教育ICTリサーチ ブログ
こうしたことを教えるのに、情報の時間が使えたらいいなと思いますし、一人ひとりが情報端末を持つようになっていく学校現場で、これからのカリキュラムを考えていくときに、取り組むべき一つのテーマなのではないかな、と思います。
(研究員・為田)