教育ICTリサーチ ブログ

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京都教育大学附属桃山小学校 授業訪問レポート No.1(2016年2月22日)

 2016年2月22日に、京都教育大学附属桃山小学校の木村明憲先生の授業を見学させていただきました。4回目の訪問となります(参考リンク:1回目の訪問レポート2回目の訪問レポート3回目の訪問レポート)。
 前回同様、木村先生の担任されている4年2組を朝の時間から帰りまで、ずっと見させていただきました。僕は、ICTが授業をどう変えるのか、そしてその授業で子どもたちがどう変わるのか、に非常に興味があります。だからこそ、1年のなかで何度か、クラスをずっと見させていただくのが、本当に勉強になっています。

実況中継:朝の時間

 朝の時間の最初は、合唱からスタートしました。合唱曲のカラオケを、PCを使って再生し、みんなで歌います。
 この日、歌詞をタイピングして、全員分プリントアウトして持ってきてくれた児童がいました。月曜日だったので、きっと週末に家のPCでタイピングして持ってきてくれたのでしょう。ICTの普段使いが進むというのは、こういうことですよね。ピアノができる人が合唱の伴奏をする、サッカーを習っている子が体育のサッカーで見本を見せる…コンピュータ得意な人がちょっとタイピングして文書を作成してきて、それでみんなが助かる。そんなシーンは、これからもっともっと教室で出てくるといいなと思います。例えば、「あ、社会の宿題に関係しそうなリンクまとめといたよ」とか、「先生の言ってた説明、書き起こしてフォルダに入れといたよ」とか、そうした言葉が教室で飛び交うようになるといいな、と思います。
 実際、仕事ではそんなふうになっていますし、以前に見学させてもらった大学のゼミの発表会でも、発表ファイルのやりとりとかは完全にそんな感じになっています。大学まで行かずとも、中学や高校でもそうしたやりとりをしている学校は出てきています。

 木村先生は、こうしてタイピングして作ってきてくれた児童のことをきちんとみんなに紹介もしていました。こうして、自分のもつ興味やスキルを活かして、他者の役に立てるのだ、ということを実感していくのでしょうね。
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朝のスピーチ

 スピーチでは、富士山、姫路城、原爆ドームの3つの世界遺産についての発表でした。スピーチをした児童は、その後でクラス全体からアドバイスを受けるのですが、「小さい写真のところは、(実物投影機で)ズームしたら見やすいと思います」とか「最後のところで、声の大きさが変わるのがよかった」とか「自分の考えたことが入ると、もっといいと思います」というようにコメントをもらいます。木村先生のクラスのいいところは、そうしてもらった意見に対して、スピーチをした児童が、「ありがとうございます」と応えられるところだと思っています。いつでも学べる姿勢ができているのがすばらしいなと、いつもこの朝のスピーチを見て思います。
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 児童は、手元にあるプレゼンテーションパワーチェックカードを使って、スピーチをした児童の評価をします。こうして明確にチェック項目がわかっていると、評価するときに何を評価すべきかがわかって非常にいいと思います。
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 それと、今回はスピーチへの感想で、「私も同じことを調べたんだけど、私はこう思いました」と自分にひきつけてコメントをした児童がいたのですが、この児童に対しても、「自分にひきつけて話すのがいいね」と先生が承認をしていました。これもとても大切なことだと思います。スピーチをした児童に対してだけでなく、スピーチへのコメントをした児童に対してもきちんとコメントを先生が返す、それらがまた、児童のスピーチへのコメント力を上げているのだろうなと思いました。

 木村先生のクラスを見学させていただくのは、今年度4回目です。木村先生の児童とのやりとりが、本当におもしろいです。放送大学の中川一史先生が講演でよく“授業における「からみ」と「ゆらぎ」が主体的・協働的な学びを作る、とおっしゃっているのですが、まさしくこのコミュニケーション場面で児童に「からみ」、そして子どもの思考の「ゆらぎ」を作り出し、導いていく感じが素晴らしいな、と思っています。
 木村先生に、どうやってこのあたりの、児童との距離感のつかみ方や、「ゆらぎ」を起こすための声かけの仕方など、身につけたのですか?どういうことに気をつけて、児童のスピーチに声かけをされていますか?と訊いてみました。

木村先生:
聞き手が話し手の話をどれほど主体的に聞けるかということがとても大切だと思います。学級だとどうしても,一人が話しその他が聞くということになりますが,その際に聞き手が自分一人に話しかけてくれているように聞くことが大切と話をしています。そして,友だちの話に何らかの反応(頷いたり,返事をしたり,自分の考えを話したり)をしながら聞くように指導してきました。人の話を自分に引き寄せながら聞くことができれば自然と自分なりの反応ができるようになり,子どもたちの議論の活性化につながるとともに,児童が主体的に考え行動する授業につながっていくのではないかと考えます。

 まさしく木村先生のクラスの子どもたちは、こんなふうだなあ、と児童たちの様子が頭に浮かびます。

 No.2へ続きます。
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(為田)