3月4日に出た、NHKニュース「4年後めどにデジタル教科書 導入へ」というニュース。
文部科学省の有識者会議が、全国の小中学校と高校の教育現場に導入する方針を固めた、とのことです。デジタル教科書の良さは、間違いなくあると思っています。記事中にもあるように、児童生徒の学び方のスタイルは多様になるし、先生の教え方のスタイルも多様になると思うからです。
デジタル教科書は、通常、紙の教科書で教えている内容を、タブレット端末などを使って教えるもので、動画や音声を使うことで英語のヒアリングなどで学習の幅が広がるほか、文字や図を大きく表示する機能があることなどから障害のある子どもなどに細かい配慮ができるといったメリットがあります。
空間図形のところや、天体のところや、統計や実験などのシミュレーションなど、紙では説明しにくいことを授業の中に取り入れられるようになります。これは、大きなメリットだと思います。
ただ、このメリットを実現するためだけであれば、すべての小学校~高校まで、1人1台端末を用意する、ということは必須ではないな、とも思ってしまいます。
結局、どんなふうに教えたいのか、ということなのだと思います。1人1台の情報端末を持たせることの目的を「デジタル教科書を見る」ことだけに設定するなら、コストに見合わないように思います。
さっき例に挙げた、紙では説明しにくいところを授業で取り上げる、ということも、それだけならば1人1台なくても、先生がデジタル教材を提示するための1台ですむかもしれません。また、グループに1台程度の台数でも、やりたいことは実現できるかもしれません。
記事中にある、「『書く力』や『考える力』の充実」をめざすのであれば、デジタル教科書を購入するコストを削って、代わりにキーボード付きの端末を入れ、クラウドでデータを管理するようにし、みんなでぴあリーディングをしたり、共同作業をできるようにしたりする方が、目的である「『書く力』や『考える力』の充実」を達成できるのではないでしょうか。
個人的には、デジタル教科書が入ることで、学びのスタイル、教え方のスタイルが多様になるのは賛成です。ただ、デジタル教科書端末として1人1台を使うのはコストと見合うものであるのか、に興味があります。
そもそも、有識者会議って誰がいるのだろう、と思って検索してみましたが、それらしいのはヒットしない。“「デジタル教科書」の位置付けに関する検討会議”というのは出てきます。これだろうか。検討資料なども読むこともできますが、慎重な意見もたくさん出ているので、ここからどうして、「4年後めどにデジタル教科書 導入へ」というニュースになったのか、不思議です。まだこれから出てくるのでしょうか。
同じく3月4日付の教育新聞「デジタル教科書導入 有識者が4年後めどにで意見一致」では、以下のように書かれています。
一部報道では、この方針が固まったように報じられた。3月4日に開催された教育現場にICT活用を進める超党派議連の会議でもこれが話題にのぼった。しかし、同省の担当者は「まだ決まっていない。検討中だ」と述べるにとどめた。
これからどのようになるのか。きちんと導入の目的を明確にしてから、手段=デジタル教科書導入を検討してほしいと思います。
(為田)