教育ICTリサーチ ブログ

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常翔学園中学校・高等学校 授業訪問レポート No.1(2016年6月24日)

 2016年6月24日に、常翔学園中学校・高等学校大阪府大阪市旭区)を訪問し、授業を見学させていただきました。ICTを活用している授業の様子をレポートしていきたいと思います。

 常翔学園の目の前を阪神高速が走っていて、その下がずーっと遊歩道になっていて、通学路になっています。高速道路の下をずっと通って学校へ向かうことはあまりないので、とても新鮮です。

 第1回は、中学校1年生の理科の授業をレポートします。

元素記号を覚えるために動画を流す

 見学した中学校1年生の授業では、最初に元素記号についての小テストを実施していました。小テストの配布から採点までで、15分ほどかかり、その後で元素記号を覚えるための歌をモニターで映してテストの復習をしました。このときにかかった「スイヘイリーベ 魔法の呪文」という歌がおもしろかったです。一緒に口ずさんでいる生徒が多いことに驚きました。こうした手法で興味喚起して、覚えてもらうのはいい方法だと思います。

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実験の学習効果を上げるためにデジタル教材を活用する

 小テストが終わると、実験の説明に移りました。今回訪問した実験室では、教室の廊下側と窓側の天井に2列、モニターが設置されています。グループに分かれている生徒たちは、自分の見やすいモニターを見ることができるようになっています。それとは別に、教壇のところにスクリーンがあり、そこにモニターに表示されているのと同じものを表示しています。スクリーンの方が大きく文字や図などが表示されるようになっています。

 モニターに表示されていたのは、今回の実験について「どのように行うのか」という手順の説明と、実験の背景知識となる既習事項の復習のための情報でした。既習事項を確認できるようにPowerPointでスライドが準備されていて、それを投影するようにしていました。

 こうしてモニターを通じて実験の様子を紹介すると、写真を使うことができるので、プリントで配布するよりも情報を伝えやすいと思います。特に、今回の実験ではアンモニアを試験官の中に集めて、反応させるとどのような色になるか、ということを見るのが目的だったので、液体に色がつくということをカラーで見せられるのは、理解を速めるために非常に重要だったと思います。

 モニターに映し出されるのは、静止画像だけではありません。実験のさまざまな場面を動画であらかじめ先生が撮影してあったので、動画で見せながら説明をすることができます。
 すべてがPowerPointと動画で説明をされるわけではなく、プリントも配布して、プリントと連動して説明をするようになっていました。プリントの問題をみんなで考えて、空欄に書き込みをして、その解説を動画で見る、というふうに行き来していました。プリントと動画・スライドを、どのように役割分担をすると学習効果が上がるのか、今後その観点でブラッシュアップされていきそうな授業だと感じました。

 授業の終盤には、最後に自分たちでも実験をしてみました。この授業では、モニターで見せた実験と自分たちでする実験が同じものでした。「やる実験」と「見る実験」の違いは、学習効果にどのような影響を与えるのか、知りたいなと思いました。

 実験の手順については、事前に見てきてもらって、実験自体にもっと多くの時間を撮る、ということもできるかと思いました。あるいは、Excelなどで実験データをその場で入力して、リアルタイムで観察と考察をグループ単位で行わせるなども可能だと思います。
 モニターで見せる動画を、“どんな目的で”見せるのかを明確にしていくことで、より洗練された授業になっていくのではないかと、期待を持てる授業でした。

 No.2に続きます。
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(為田)