教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

第4回古河市教育ICTフォーラム レポート No.5(2017年2月26日)

 2017年2月26日に、古河市とねミドリ館で開催された、第4回古河市教育ICTフォーラムに参加してきました。日程は2日間で、2月25日が「プログラミングデー in KOGA これならできる2020年のプログラミング授業」、2月26日が「教育ICTフォーラム 学びのゴールはプレゼンテーション」となっていました。

 今回は、2月26日に行われた、放送大学教授の中川一史 先生による基調講演「主体的・対話的で深い学びの視点とICT活用」の後半の様子を紹介します。

タブレット活用の特徴と展望

 次のテーマは、タブレット活用の特徴と展望です。ここで、中川先生は、タブレット端末活用の4つの特徴を、「PPAP」と表現しました。

  • Personal
    • 一人1台持っていること
  • Portable
    • いつでもどこでも使えること
  • All in one
    • すべてのことを1台でできる良さ。Iolani Schoolでも「タブレットで最後までできるの?」と訊いたら、付属のキーボードがあるので大丈夫だ、とのこと。
  • Platform
    • 考え方の拠点となる

f:id:ict_in_education:20170502164127j:plain

 タブレット端末一人1台の今後を考えるときには、発想の転換が必要だと中川先生は言います。教室にあるタブレット端末を、どこでどう使うのかは、先生がコントロールできます。ですが、一人1台になったら充分にコントロールをとれなくなる。もちろん、学習規律は最初は大事だろうと思うが、そこから子どもたちが思考のツールとしてイニシアチブを握れるようにしなければならない。ここの発想の転換が必要になります。
 いろいろな学校へ行って先生方とお話をしていると、この「コントロールがとれなくなる」ということについて、思い切るのが難しい、という言葉を多く聞きます。この発想の転換をできるかどうか、がタブレット端末活用の大きな分岐点になるのではないかと思います。

 情報をどう扱うかということについては、みんなが同じでなくてもいいのです。例えば、講演を聴くときであっても、「撮影する」「メモをとる」「メモをとらない」…自分なりの咀嚼ができれば何でもいい。タブレット一人1台になるなら、タブレットをツールとして自分でどのように使うのか判断をする力を身につけなければならない、と中川先生は言います。
f:id:ict_in_education:20170502164153j:plain
 ここで、デジタル教科書を実際に児童が使った例が示されました。デジタル教科書で、第2時と第4時とで、必要なものを書き込むが、第4時終了時に消えている部分があったりします。理解できた部分は消す、ということができる。こうした一度描いたものを消すという学び方は、紙の教科書ではできません。
f:id:ict_in_education:20170502164216j:plain

 児童個々の書き込みも、まったく違うことになります。同じ箇所に線を引いて…という授業の形ではなくなり、児童が一人ひとり、どういうふうに書き込めばいいかを考えるようにならなければなりません。「こうしたことができるようにならないといけない。それぞれ、児童生徒が何を使うか選べるようにならないと、パーソナルなICT機器を活用できないのではないか?」と、中川先生はこのパートを締めくくりました。
f:id:ict_in_education:20170502164236j:plain

プレゼン指導の留意点

 最後に、プレゼン指導の留意点についてです。中川先生は、「古河の子どもたちのプレゼンは上手。エヴァンジェリストのプレゼンも上手」とコメントをされていました。
f:id:ict_in_education:20170502164259j:plain

 かつて、中川先生はNHKで「伝える極意」という番組に出演をされていたそうです(今年の3月31日で終了)。この番組の中で伝えていたことを紹介してもらったので、以下にメモとしてまとめます。

  • 調べる
    • 伝える相手のことを知る。相手はどんな人?何をどこまで知っている?何が知りたい?→プレゼンは取材が命。
    • 現行の指導要領でも、書くところに調べること、適切な方法を選択することが重要な能力だ、と書かれている。
  • まとめる
    • 注目・説得・よびかけの順番に。写真の数をしぼり、印象に残る言葉を。プレゼンシートはシンプルに。→プレゼンは見栄えが命。
  • 伝える
    • 発表は「~ですか」「~ですよね」と話しかけるように。→プレゼンは双方向が命。

 この「調べる」「まとめる」「伝える」ということにプラスして、プレゼン4要素として、「内容」「方法」「相手意識」「目的意識」が必要です。これらをまとめあげ、「場数」を踏み、「熱意」を持って伝える、ということも大事です。こうしたポイントを踏まえながら、先生が授業の中でプレゼンテーションをする場を作り、そのためのプレゼン指導をしていくことが重要だと思いました。
f:id:ict_in_education:20170502164404j:plain


 また、伝えるバリエーションもさまざまです。

  • 示しながら話す(プレゼン、ポスターセッション)
  • 組み合わせて書く(新聞、パンフレット)

 さまざまな伝え方を子どもたちは体験するべきだと思います。スピーチ、プレゼンテーション、ポスターセッション、ガイドブック…、それぞれ違う目的があります。目的が違うので、当然それぞれ作り方も違います。
 現行の国語教科書では、すべての教科書会社のもので、「示しながら話す」「組み合わせて書く」は両方共、取り上げられています。伝える方法のバリエーションも意識することで、プレゼンテーションのスキルも“生きて働く力”になるのではないかと思います。
 これらのものをどういうふうに盛り込んでいけるでしょうか。「どんなふうにプレゼンテーションを学ばせるのか」「どんなスキルを身につけさせるのか」というカリキュラムを確立して教えている学校はまだまだ少ないと思います。そうしたカリキュラムを作るために、授業設計をするために、こうした視点は非常に重要だと思います。
f:id:ict_in_education:20170502164447j:plain


 No.6に続きます。

(為田)