教育ICTリサーチ ブログ

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第4回古河市教育ICTフォーラム レポート No.6(2017年2月26日)

 2017年2月26日に、古河市とねミドリ館で開催された、第4回古河市教育ICTフォーラムに参加してきました。日程は2日間で、2月25日が「プログラミングデー in KOGA これならできる2020年のプログラミング授業」、2月26日が「教育ICTフォーラム 学びのゴールはプレゼンテーション」となっていました。

 今回は、2月26日のクロージングセッションに行われた、茨城大学教育学部准教授 小林祐紀 先生によるプレゼンテーションの様子を紹介します。

 小林先生によるプレゼンテーションでは、最初に先生方の「ICTを使った指導力」について紹介されました。このなかで、小林先生は茨城県全体の数値を示しながら、「古河市だけでやれば、数値は平均を上回るでしょう。年間を通じて、ICT教育を市内の学校に向けて水平展開しているところに、古河市がしてきたことの価値がある」とおっしゃっていました。
これは本当にそのとおりで、なかなか水平展開が進んでおらず、ある学校のある先生ががんばっている、という状況にある自治体もたくさんあると思います。では、古河市はどのように水平展開をしてきたのか、そこで小林先生は、「種まきのトライアングルを意識する」と書かれたスライドを見せてくれました。
 トライアングルのそれぞれの頂点には、「総合学習」「教科学習」「家庭学習 特別活動」と書かれています。この3つの頂点がそれぞれ独立して存在しているのではなく、頂点がつながれてトライアングルになることに意味があるという説明をされました。
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  • 総合学習と教科学習の間は、「能力の系統性」によって結ばれます。教科で学んだ/身につけた能力が、総合学習で知識・スキルとして活用されるということだと思います。
  • 教科学習と家庭学習・特別活動の間は、「内容の連続性」によって結ばれます。教科学習の補充的かつ発展的取り組みとして、家庭学習や特別活動が存在するということだと思います。
  • 総合学習と家庭学習・特別活動は、「意欲の継続性」によって結ばれます。学校と家庭が意欲によって結びつき、学校で学んだことが生活の中に落とし込まれていく、というふうになることかと思います。

 それぞれの場面においては、先生によって人間関係づくりと価値のインストラクションが行われています。これらのことは、授業デザインの土台として、必要なことです。

次に小林先生は、「適切な難易度」と「リアルな課題設定」、「確かな見取り評価」、「枠組みづくり」と「せざるをえない場」という、授業をデザインする上で大切な3つの視点を示してくださいました。

 種まきのトライアングルが結びつき、それぞれの場面で先生がどのように働きかけていくことができるのか、ということについて考える機会になる説明でした。
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 また、小林先生は、ICTの活用方法について、児童に方法を選択させることが大切であると説明されました。例えば、発表などの表現をするときに、「模造紙がいい」「画用紙がいい」「タブレットがいい」とさまざまな選択肢があることが重要だと小林先生は言います。児童一人ひとりにあった学び方があり、表現の手段を「選べる」ようにすること、そのために、いろいろな方法を知っていることが重要だと思います。
 ICTを使いこなせるようになることで、手描きでも、ICTでも、どちらでも自分を表現できるようになり、どちらの方法をとるかを自分で選べるようになる。ここがゴールになってくるのではないかと思います。
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 最後に、小林先生は石川県のある小学校で、授業を見える化した事例を紹介してくださいました。45分間を1分間ずつマス目に分けて、「先生がアクティブになったところ」「児童がアクティブになったところ」「キーワードが出てきたところ」というように、色分けをしているそうです。
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 そのようにして授業の様子を見える化して、そのうえで授業後にレビューをしているとおっしゃっていました。「ICT活用へのエビデンスを…」ということもよく言われますが、こうした授業での先生と児童生徒の様子を見える化していくことからも、見えてくるエビデンスはたくさんあるのではないかと思いました。古河市の授業をこのようにして見える化したら、どんなふうな色分けになるのだろう?と想像してしまいました。
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 古河市でのICTの活用は、最初は各校が点の状態であったのが、エヴァンジェリストと子どもたちが育ってきたことで、ここからまたネットワークが広がっていくと思います。最後の挨拶に立った平井先生は、「今日はまだ通過点。日本中の教育が変わっていく。古河が引っ張っていく」と力強くおっしゃっていました。

 これからの古河市にも、注目していきたいと思います。

(為田)