教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

『子どもを「育てる」教師のチカラ 漢字&計算ドリル活用法』 ポイントメモ

 『子どもを「育てる」教師のチカラ 漢字&計算ドリル活用法』を読みました。アクティブラーニングも、21世紀型スキルも好きですが、基礎学力ももちろんとても大事で、こうした問題意識の本は手に取ってしまいます。
f:id:ict_in_education:20170527062148j:plain:w400

 全体が、「ドリルを効果的に活用する」と「ドリルをより積極的・発展的に活用する」に分かれています。

  1. ドリルを効果的に活用する
    1. 「やる気」にさせるドリル活用法
    2. 「学力」を確実定着させる活用法
  2. ドリルをより積極的・発展的に活用する
    1. ドリルの「何を」見るか
    2. ドリルを通して子どもを変える
    3. より発展的な活用法

 1ページから2ページずつ、全国各地の先生方が原稿を書いています。さまざまなドリル活用法を知ることができます。

ドリル(drill)は、「訓練」「反復練習」という意味がある。「訓練」や「反復」に対し、人が抱く印象は「苦痛」であったり、「面倒」であったりするのではないだろうか。そのように感じるドリルに意欲的に取り組めるようになるためには、取り組んだ結果、わかりやすい成長が得られなければいけない。(p.14)

 唯一絶対の正解はなく、学校ごと、クラスごと、先生ごとに、さまざまな最適解がある、というふうに思いますが、そのためにさまざまな引き出しを知ることができるというのは素晴らしいと思いました。

 以下、漢字ドリルと算数ドリルに分けて、個人的に気になった点をメモしたいと思います。ここから、ドリルや教材開発についてのヒントもたくさんありそうです。

漢字ドリル

 漢字ドリルのポイント。「覚える→練習する→確かめる」という基本を、“どのように”学習活動として定着させるか、ということかな、と思いました。そのための方略はたくさんありそうです。

  • 「学力」が定着しない活用法(p.20)
    • 機械的に”くり返し書かせるだけの漢字ドリルはNG。“授業時間内に”漢字ドリルの使い方を教える
      • 覚え方(ゆび書き徹底・間違えそうな部分に◯印)
      • 練習の仕方(短文を活用した漢字の使い方の意識付け)
      • 確かめ方(テストの仕方・誤字の訂正)
  • 漢字ドリルの覚え方を端的に言えば、「覚える→練習する→確かめる」に集約される。(p.20)
  • 「間違えそうな部分、2つに◯印を付けなさい」という指示も。←これおもしろいです。(p.20)

計算ドリル

 漢字ドリルと比較すると、自分的なメモは圧倒的に多くなった計算ドリル。先生方が、いかに細かく子どもたちの様子を丸付けから見ているかということがわかります。

  • 少し考えても解けないときは、これまでのノートをふり返ることはもちろんだが、先に答えを見るように伝えている。間違ったまま、わからないまま何問も解くという経験は、間違った方法を定着させたり、勉強嫌いを生んだりすることにつながる。(p.14)
  • 宿題でドリルを行っても自分で丸つけをするようにしている。中学年以降であれば可能。宿題のチェックの時間も削減できる。(p.14)
  • 『わかる』と『できる』には大きな差があるように、『解ける』と『説明できる』にも大きな差があるよ」と子どもたちに伝えている。(p.14)
  • きれいな字でノートに問題を問いている子がいる。それは素晴らしいことだが、小学生のなかにはそうしたことを崩せない子も多い。きれいな字にこだわってしまう。(p.14)
  • ドリルは多くの場合、書き込ませずにノートに書かせて使います。「くり返し」て使うことが前提。同じページをくり返すことで、タイムで自身の成長が実感できる。(p.24-25)
  • 学習時間は大変重要。同じ筆算を解くのに、A君は20秒、B君は2分かかったならば、宿題を終えた意味では同じだが、等価値ではない。「なんとか解ける」は「できる」うちに入らない。だから、くり返し練習をする必要がある。(p.25)
  • 使い方のルールとして教えておきたいこと:「わからない」を「わかる」にする。そのためにドリルを活用する(p.26)
    • ①解く。
    • ②答え合わせを行う。
    • ③「自信をもって解けた」問題番号に花丸。「悩みながら解けた」問題番号に◯。「わからなかった」問題番号に△を書く。
    • ④◯と△の問題だけをもう一度ノートなどに写して解く。(②に戻る)
  • 丸付けをしながら思うことだが、授業でしっかりおさえられなかったことは計算ドリルでも間違える子が多く出る。→丸付けは自分の授業への評価でもあるといえる。(p.35)
  • 「僕はかけ算が苦手だ」→「僕はかけ算が苦手なわけじゃなくて、4×9のかけ算を間違えやすいんだな」と気付ける。くり返しドリルを行うことで、つまずきポイントを意識して取り組めるようになる。(p.42-43)
  • 「子どもは計算ドリルに取り組むことが本来は好き」→意欲の減退が見られるなら、学習の結果であると捉えたい。(p.51)
    • ある問題を間違えたときに、ひとつの手続き(方略)を間違えて習得してしまうと、ページに出題されている問題すべてを間違える、ということがあり得る。こういった経験にくり返しさらされることで、無気力を学んでしまうのではないか。
  • 子どもはうっかり間違えない。どんなミスにも理由があるという基本姿勢をもって、子どもたちの誤答分析にあたることが大切。(p.51)

 最後の、「子どもはうっかり間違えない。どんなミスにも理由があるという基本姿勢をもって、子どもたちの誤答分析にあたることが大切。」というのは、なるほど…と思わされました。

まとめ

 こうしたドリルの活用法を見ると、教材側として工夫できる部分はまだまだたくさんあるな、と感じます。為田は、デジタル教材のカリキュラム開発に携わることが多いですが、こうした先生方が積み重ねてきた実践から得られる知見を、開発にまだまだ入れたいな、と感じました。
 モチベーション喚起、理解促進などの点において、まだまだデジタル教材でできることは多そうです。先生方が積み重ねた実践を含めて、より良い教材(別にデジタルだけで完結しなくてももちろんいいです)を作りたいと思います。


(為田)