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京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.3(2018年3月8日)

 2018年3月8日に、京都教育大学附属桃山小学校を訪問しました。若松俊介先生が担任する5年2組の授業を見学させていただきました。4時間目に、ゲストティーチャーとしてお話をさせていただく機会がありましたので、今回はその様子をレポートします。
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「教育を仕事にするということ」

 若松先生からは、「どんな仕事をされているか」「どうしてその仕事を選んだのか」「やりがい、楽しいこと」「出てくる課題をどう解決されているか」「メディア活用について」などの話を、というリクエストをいただいていました。
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 そこで、最初に「どんな仕事をしているか」「どうしてその仕事を選んだのか」ということを説明しました。教育の仕事と言っても、先生、教科書を作る人、理科の実験で使う器具を作る人など、さまざまな関わり方がありますよ、という話をしました。そのうえで、「何になりたい」と「何をしたい」の2つの方向で、仕事は考えてみるといいという話をしました。
 僕が教育の仕事を選んだのは、実は「先生になりたいから」ではなく、「世界を平和にしたい」という「何をしたい」の方からだったんですよ、という話をしました。
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 そこから、「情報活用能力×メディアでできること」へと話を繋ぎました。桃山小学校では、メディア・コミュニケーションという授業があり、情報活用能力ということを一般教科の中でも使う場面を多く設計していると思っていますし、これから最上級生になる5年生に、「伝え方」について、ちょっと違う視点を持ってもらいたかったからです。
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 そして最後に、大学生のときにSFCでよく言われていた、「君たちは未来からの留学生」という言葉を紹介しました。SFCは今ではこのスローガン、使っていないかと思うのですが、僕は個人的にとても好きだし、大切な言葉です。未来のために必要なことを、いま学んでいるんだよ、ということを伝えることができたらいいな、と思いました。
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児童が書いてくれた自分ノート

 授業後に、若松先生が「自分ノート」に僕の授業を聞いて感じたことなどを書くことを宿題にしてくださいました。翌日、全員分のノートを若松先生が送ってくださいました。こうした子どもたちのフィードバックはとてもうれしいです。いくつか抜粋して、コメントしていきたいと思います。

 まずはいま桃山小学校で学んでいることとの繋がりを考えてくれたコメントから。

教育を仕事にするまでの過程がMC(メディア・コミュニケーション)でやっている桃山パワーアッププロジェクトと似ていて、人生などにもそういった考え方を使うことができるんだなぁと思いました。

 まさに、そのとおりだと思います。こうして、学校で学んでいることとこれからの人生とかリンクするような、ちょっとした閃きがあったなら、よかったと思います。

仕事というのは、生きていくために、ただお金をかせぐためにやるだけだと思っていた。でも、目的のための手段にもなるんだなという事がわかった。お金をかせぐのは生きて行くためでも良いけれど、その上になにか目標を一つ置ければ自然と何になりたいのかというのが見えてくると思う。これは、課題を解決したい時でも、使えるのかなと思う。

 これも、僕の話を聴いて、そこから「課題解決のときでも使えるかもしれない」と視点を展開しているのが素晴らしいと思いました。

 次は、ひとりひとりみんな感じ方も考え方も違うのだから、その人たちに合わせて伝え方を考えなくてはいけない、という話をしたことへのコメントです。

私が心にひびいてきたのは1人1人考え方は違う。だから色々な知識をもつ事が大切という事です。(略)色々な知識をもつために学校がそんざいするのではと考えました。

 知識はさまざまなことの土台・基盤となるものであり、知識をどう使っていくのかというところまでを、学校で身につけられるといいなと感じているので、こうしたコメントも非常にうれしいです。先生方をこれからも精一杯お手伝いするぞ、という気持ちにさせてくれます。


 10年くらいで社会は大きく変わるよ、という話をした後に、「社会が変わってきていることとかを、どうやって知ったらいいと思いますか?」という質問をしてくれた子がいました。その質問への答えに、「例えば、今日は“赤”を探そう、と決めて町に出ると、やたらと赤が目についたりすることもあるよ。」と、カラーバス効果(Color Bath効果)についてコメントしたのですが、さっそくやってくれた子がいたようです。これもうれしかったです。

今日私は、家に帰るとき、赤い物を見つけながら帰りました。GTの話がピンときたからです。そうしたら、「いろんな赤」に会いました。そして、もう何千回も通っている道だけど、今まで気が付かなかった物が見えてきて、なんだかいつもと違う町を歩いている気がしました。このとき私は、「いつもと全く同じ物も、見方を変えると全くちがう物に見えるなぁ」と思いました。だから、もしかしたら、なかなか上手く付き合えないな…と思っている人がいても、別のことを考えると、少しいい人に見えてきたりするのかな…?!と思いました。

 いろんなことを「知る」というのは、学校以外でもいろいろできる。同じ世界を見ていても、そこから何を思うかは人それぞれ。新しい視点を持ちながら、日々を過ごすというのは、小さいことだけど、大きな変化に繋がる可能性があることだと思っています。

 最後に、「未来からの留学生」という言葉にもコメントをもらいました。

自分は勉強はしょう来のためと考えていたけど、やりたい事のためだと考えが変わった。勉強は、やらされているのではなく、自分からやるものだと意識してやっていきたい。君たちは未来からの留学生というのも、自分らがこれからの社会を支えていったり創っていかないと感じられた。

 僕の話を聞いて、こうした未来へのモチベーションが生まれたのであれば、うれしいです。


 若松先生、貴重な機会をいただきまして本当にありがとうございました。

 No.4に続きます。
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(為田)