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京都教育大学附属桃山小学校 授業レポート No.1(2020年1月15日)

 2020年1月15日に京都教育大学附属桃山小学校を訪問しました。3時間目に、若松俊介 先生が担当される4年2組の国語「初雪のふる日」の授業を見学させていただきました。
 授業の最初に若松先生は、「(これまでの授業で見つけた)ハテナをもとに読み深めたことを聴き合って…」とホワイトボードに書き、「それから、どうすればいいと思いますか?」と、児童が話し合い一緒に考える場をつくります。児童たちの言葉でめあてを組み上げていき、最後に若松先生が「グループで自分の考えを伝え、相手の考えを聴き、細かく、より深く読んでいきましょう」、と言って授業がスタートしました。

 話し合いを始める前に、それぞれの児童がどんなハテナを持っているかをもとにして、若松先生が作ったグループをモニターに表示します。それにしたがってグループ替えをして、話し合いを始めました。
 いままでにどんなハテナが出てきていたのかをロイロノート・スクールで表示をし、iPadのスプリットビュー機能でストップウォッチを表示して、話し合いの残り時間を見えるようにしていました。
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 グループで話し合いをしている間も、児童の机の上にはiPadが開いていて、自分がこれまでにしてきた思考を見ながら話しています。また、話し合いのなかで新しく思考を書き加えることもしています。
 思考の仕方は人それぞれなので、いろいろな書き方をしている児童がいます。こうして、自分にあった思考のまとめ方ができるようになっていくように授業が設計されているのだと思います。
 みんなそれぞれに自分がわかりやすいように思考をまとめているのが印象的です。京都教育大学附属桃山小学校では、情報活用能力を伸ばすためのメディア・コミュニケーション科(MC)を研究開発していますので、そうした授業のなかでも伸ばされているスキルなのだと思います。
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 若松先生の授業では、ノートは“先生がホワイトボードに書いたことを写すためのもの”ではなく、“自分の思考を書いていくもの”となっていて、それがiPad+ロイロノート・スクールになっています。先にあるのはノートの使い方であって、iPadがあればどんなクラスでも同じようにできるわけではないと、京都教育大学附属桃山小学校の授業を見ているといつも感じます。
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 若松先生は、ここで「白うさぎをどんな存在と捉えている?」と質問します。話の中で子どもを連れ去る白うさぎは、「良い」のか「悪い」のか。児童に、ホワイトボードにネームカードを貼って表してもらいます。こうした意見表明も、iPadを使ってみんなで共有することもできますが、若松先生はあえてホワイトボードを使っています。こうしてみんなが見える場で、ネームカードを話し合いながら少しずつ変えたりする様子をみんなで見ることができます。
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 これだけ意見が分かれる題材というのは、本当に面白いと思います。おそらく観点もそれぞれに違うので、クラスメイトの意見を聴いて、さらに自分で読み込んでみて、「ああ、こういうことかも」とどんどん変わっていく様子が見られました。
 グループの中でも、立ち上がって、みんなで話し合いをしています。立ち上がって、「僕はこう思う」というのを言えるのは素晴らしいと思います。これも、自分の考えを伝える力、伝え合う力、ということが養われている瞬間だと思います。
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 こうして立ち上がるほどに没頭して語り合う場面は、PBL学習などで急にできるようになるものではないと思います。PBL学習に取り組む前に、こうして教科の中で教材を使ってやるというところからスタートするといいのかもしれない、と感じました。

 授業時間残り5分で、若松先生は、「ふりかえりを書きましょう」と言います。ここから児童は、どんどんふりかえりを書いていきます。京都教育大学附属桃山小学校を他の小学校と比べて思うのは、圧倒的な出力の多さです。文字の入力量が本当に多い。
 キーボードは外付けキーボードを使っている児童も、ソフトキーボードを使っている児童もいます。iPadは学校のものですが、キーボードは個人持ちとなっています。児童が感じたことを思い切り書けて、それをすぐにフィードバックできる環境を用意することで、徐々に文字入力の速度も、文量も上がってくるだろうと思います。
 また、児童が書いたことに対して、適切にフィードバックを返したり、書けない児童をサポートしてあげたり、という先生の仕事があってこそ、これだけのふりかえりが書けるようになるのだと思います。
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 No.2に続きます。
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(為田)