教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

仙台市立六郷小学校 公開研究会レポート No.5(2018年12月7日)

 2018年12月7日に仙台市立六郷小学校の公開研究会「「対話」を通して学びを深める授業づくり〜学びの基盤としての情報活用能力を手がかりに〜」を取材させていただきました。
 授業検討会終了後、体育館でシンポジウム「「対話」を通して学びを深める授業とは」が行われました。パネラーは、関西大学総合情報学部の黒上晴夫教授、聖心女子大学文学部の益川弘如教授、東北学院大学文学部の稲垣忠教授でした。コーディネーターは仙台市立六郷小学校の菅原弘一校長でした。
 シンポジウムでは、会場からの質問をmentimeterで受け付けていました。mentimeterは、スマートフォンなどから回答できるアンケートサービスで、出された質問は会場に設置されたプロジェクタを使ってリアルタイムで映し出されていました。
f:id:ict_in_education:20190128141036j:plain

www.menti.com

 益川先生からは、知識構成型ジグソー法を中心にお話がありました。「楽しい活動をしたということは覚えていても、何について話し合っていたのかを忘れてしまうことがある。それを乗り越えるための学びの可視化の方法について考えたい」というお話は、身につまされる気持ちになりました。小学校の生活科や総合的な学習の時間での子どもたちの活動が「這い回る経験」だけになっていて、学習として成立していない実践が多々行われているという批判があったことを思い出しました。子どもたちの実態や学習内容に即した指導法、学習形態、学習環境などを不断に見直す「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善」を進めていくことを忘れてはいけないと改めて思いました。

 稲垣先生からは、情報活用能力を中心にお話がありました。六郷小学校の「情報活用能力育成カリキュラム」を「教科単元内に収まりの良いように開発」したものだと価値づけ、4年総合的な学習の時間の授業づくりのポイントなどもお話されました。ジグソーで知識を構成するというよりは価値判断が強いタイプの教材だったが、子どもの姿としてとても良い育ちが見て取れた」との講評がありました。情報活用能力は新学習指導要領において「学習の基盤となる資質・能力」の一つとして教科横断的に育成することが示されており、どの学校でも一定の指針を持って授業に取り入れていく必要があります。今回の公開研究会の参加者の多くは仙台市内の先生方だったと思いますが、六郷小学校の取り組みが仙台市以外の学校にも道筋を示してくれていると改めて感じました。

 黒上先生からは、シンキングツールを中心にお話がありました。中でも「シンキングツールに表されるものの多くは、アイデア。考えを作り出す方法を身につける、というステップに進みたい。理由を出すことでなく、出された理由を吟味するステージへ。」「シンキングツールは、総合的な学習の時間や特別活動で使い方に慣れておいてから教科内容に係るようになっていくことがよさそう。洗練された方法を使って教科内容を深める。」といった内容が印象に残りました。
 子どもたちがシンキングツールを学びの道具として使いこなせるようなるまでには段階があることは、小学校教員時代の経験から感じていたことでした。総合的な学習の時間や特別活動を充実させていくという視点からも、先生が、機会ごとに子どもたちに活用させること、単元のどのタイミングでどのシンキングツールを使うのかといった教材研究を深めること、先生自身もシンキングツールを実用的に体験しておくことの必要性を感じました。
f:id:ict_in_education:20190128141146j:plain

 今回行われた仙台市立六郷小学校の公開研究会は、たくさんの先生方が参加されていました。異校種の先生、仙台市内外の管理職、県外の先生や教育関係者、研究者も参加されており、全国的にも注目度が高かったのだと感じました。参加者が公開授業からたくさんの学びを得ただろうことはもちろんですが、菅原校長をはじめ六郷小学校の先生方、家庭・地域の皆さんの朗らかさと情熱を直に感じることができたことは、教育に関わる者として、この先を考えるに当たって大きな刺激となったのではないかと思いました。

(佐藤)