僕は、基本的にはインターネットを使っての仕事とかコミュニケーションから、いい思いをさせてもらっていることのほうが多いと思います。その理由は、こうして書いているブログやSNSなどの発信から、広い世界と繋がれる実感をもつことができているという経験による部分が大きいと思っています。
ただ、それが誰にとっても同じなのかというとそんなことはなく、Twitterを見ても、「そんな言い方をしなくてもいいのではないか?」ということに出会ったり、もちろんフェイクニュースやデマなどがあったり、いろいろと大変なやりとり(炎上)があったり…。インターネットには、悪い面ももちろんたくさんあります。
これだけネットが発達している社会で、使うのが日常になっている状態なので、子どもたちにどんなふうな姿勢でインターネットに接するようにしていけばいいのか考えていかなくてはいけません。ネットリテラシーを学んでもらうだけで十分なのか、考えてしまいます。
そんなときに、評論家の宇野常寛さんが「PLANETS vol.10」のなかで提唱している「遅いインターネット計画」を知りました。読みながらTwitterにて書き出していた部分をまとめておきたいと思います。
まずは、宇野さんが書いた巻頭言からです。
「現在のインターネットは人間を「考えさせない」ための道具になっています。(略)市井のユーザー一人ひとりの生む「空気」によるボトムアップの相互監視によって、インターネットは息苦しさを増しています。」(p.12) #PLANETS10 #遅いインターネット
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
「そこで、僕は一つの運動をはじめようと考えています。「遅いインターネット計画」と読んでいるそれは、Google検索の引っかかりやすいところに、良質な読み物を置くことを目的とした新しいウェブマガジンの立ち上げとそれに連動する運動です。」(p.12) #PLANETS10 #遅いインターネット
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
「なぜ「遅い」インターネットなのか。それは、いまのインターネットの行き詰まりの原因はその「速さ」にある。僕はそう考えるからです。(略)インターネットの本質はむしろ、自分で情報にアクセスする速度を「自由に」決められる点にあります。」(p.12) #PLANETS10 #遅いインターネット
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
インターネットの武器(=利点)として「速さ」の方ばかり見ているが、実は「遅さ」もインターネットの武器だと思います。ゆっくり、じっくり読むこともできる。今までだったら出版されず目に触れなかったようあん考えや情報にも出会うことができる(ロングテイル)。そして、たくさんある情報をどれを読むか、「自由に」決められるということだと思います。
情報に触れるだけでなく、どの情報を選ぶのか、自分の持っている知識とどう組み合わせるのか、藤原和博先生がおっしゃる、情報編集力が必要になってくるのがこのあたりではないかと思っています。
続いて、巻頭座談会からのメモです。
巻頭座談会 いま必要なのはもっと「遅い」インターネットだ<接触編>を読む。座談会に参加しているのは、乙武洋匡×ハリス鈴木絵美×前田裕二×村本大輔+宇野常寛。 #PLANETS10 #遅いインターネット
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
宇野さん:今のインターネットは「速すぎる」。Twitterに書かれた140字には複雑な背景や歴史的な経緯があるはずなのに、そのコンテクストを全く無視し、リツイートされてきた情報に脊髄反射してゼロかイチかのジャッジを下す=切断的な処理をしてしまう。(p.15-16) #PLANETS10 #遅いインターネット
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
脊髄反射をせずに、じっくり情報に接して、自分で考えて判断をする姿勢はどこで身につけさせるべきか。ネットで「自分の意見にあった意見を選んで見る/読む」ことができるようになっているいま、脊髄反射をしないというだけでなく、自分が得ている情報が偏っていないかを自分でチェックするような力も必要になるはずです。こうした情報の読み方を、リテラシーとして学校で教えられるか、と自分の職業に引きつけて考えてしまいます。
宇野さん:情報を単純化して考えることをやめてしまう人たちは、昔からいる。マスメディアの時代はトップダウンの情報を受けてポピュリズムへ。SNSによってボトムアップに変化して、個人の隣地が常態化している。(p.16) #PLANETS10 #遅いインターネット
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
いいところだったのに、タイポがあって本当に残念(←すみません)。「個人のリンチが常態化している」です。
宇野さん:「だからこそ今のインターネット時代に合った形で、複雑なものを複雑なまま受け止めることができる世界をしっかりと意識的に確保しておくことが必要だと思う」(p.16) #PLANETS10 #遅いインターネット
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
学校でどんなことを身につけてもらって社会に出てもらいたいだろうか、と考えたときに、「複雑なものを複雑なまま受け止める」ということはぜひ教えたいと思います。個人的には、新しい学習指導要領で掲げられている「主体的・対話的で深い学び」でこうしたことが教えやすくなるのではないか、と思っています。そうした授業を作るお手伝いをしていきたい(あるいは、自分で教えていきたい)と思っています。
宇野さん:(「 #遅いインターネット 」世界を養うには)「僕は「誘惑モデル」でいくしかないと思ってる。「もっと勉強しろ」とか「正しいからこうしろ」って言っても人は絶対聞かないから、面白がらせるしかない。」(p.16) #PLANETS10
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
宇野さん:「僕はどちらかといえば民間のプレイヤーの仕事に関心があるし、政策提言的な「正しいこと」よりも文化的な「面白いこと」のほうに関心がある。(p.17) #PLANETS10 #遅いインターネット
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
宇野さん:「価値のある情報」は、量的にも質的にも残る情報。量的な問題=5年後、10年後にもしっかり残るものしか意味はない。質的な問題=世の中の見方自体を変える、もしくは多様にすること。(p.17) #PLANETS10 #遅いインターネット
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
宇野さん:この国のインターネットは失敗したと思う。結局、考えない人の集団を作っただけだった、1回失敗したプロジェクト。もう1回、メディアからプラットフォームへの2周目の道を頑張るしかない。(p.21) #PLANETS10 #遅いインターネット
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
宇野さん:即時性と双方向性はインターネットのアドバンテージであるが、デメリットでもある。まさに即時性と双方向に報復されて、僕らは今、SNSに振り回されてしまっている。僕の考えるインターネットの一番の価値は単純に「自由と平等」ですよ。(p.22) #PLANETS10 #遅いインターネット
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年1月7日
インターネットの価値は「自由と平等」。でも、それは「何でも言ってOK」というものではないし、この「自由と平等」を享受して社会が良くなるためには、ある程度の行動規範が必要だと思いますし、そのための成功体験のようなものも必要だと思います。逆に、軽い失敗体験を教室でしてもらうということも重要だと思うので、学校で「遅いインターネット」の考え方をベースにした、何かカリキュラムを入れたいな、と思います。まずは自分のホームである教室/学校からやっていこうと思います。
最後に、巻末座談会からのメモです。
朝読書。「PLANETS vol.10」の「巻末座談会 家入一真×佐渡島庸平×箕輪厚介×宇野常寛 いま必要なのは、もっと「遅い」インターネットだ <発動篇>」を読み始めます。 #PLANETS10
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年2月10日
宇野さん「日本のインターネットはTwitterという一つのムラになってしまったと思う。Twitter村の「潮目」というものがあって、それに乗るか逆張りするかの二択になってしまった結果、視点や話題の多様性がなくなっている。」(p.248) #遅いインターネット #PLANETS10
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年2月10日
宇野さん「もっとオープンな場所で、世界中のどこからでも無料で読める場所に良質なものを置いておきたい。」(p.248) #遅いインターネット #PLANETS10
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年2月10日
宇野さん「インターネットをいかにソーシャルから解放するか。もちろんいまのソーシャルなインターネットには十分威力があるし、それはそれでいろいろ面白いものが生まれていると思うんだけど、一回それを外して考えてみたいという実験なんだよね。」(p.255) #遅いインターネット #PLANETS10
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) 2019年2月10日
この遅いインターネット計画が、2019年4月19日にハフポストの竹下隆一郎さんが書かれている、「「本なんて売れないよ」と何度も言われた。それでもネットメディアが書籍を作る理由。」に繋がっています。
少しずつでも、こうして計画が前に進んでいっていて、いろいろな人たちがそれぞれの場所で、やれることをやっていく。自分も、自分の領域でできることをやっていきたいと思います。
「遅いインターネット計画」以外にも、本当に読み応えのある文章がたくさんあるので、また読み返そうと思っています。
(為田)