クリスティーナ・A. ホルズワイス、ストーニー・エヴァンス『学校図書館をハックする 学びのハブになるための10の方法』を読みました。帯にある「「自分とカンケーねー場所」のイメージを壊す!」という言葉がとても好きで、手にとりました。
タイトルにあるとおり、学校図書館が「学びのハブになるための10の方法」=10のハックが書かれています。じっくり読んで、Twitterのハッシュタグ「#学校図書館をハックする」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。
まず、「ハック1 学校図書館のスペースを変える 図書館をデザインし直せば生徒はやって来る!」です。ここでは、そもそも、学校図書館がいかに魅力ある場所になり得るか、ということが書かれていました。
「問題――学校図書館は、見た目も機能もデザインされているとは言い難い。はっきり言って、居心地のよい場所としてデザインされていない」(p.4) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
「学校図書館も、家庭のインテリアを検討するときのように考える必要があります」→学校図書館担当者は「昔ながらの流儀に固執するのではなく、学校のなかで求められる多様な目的に沿うようなデザインを、生徒や教師に提供すべきなのです」(p.4) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
「よく整備され、居心地がよく、使いやすい空間をつくれば、学校にいるすべての人が図書館に行きたいという気持ちになります。そうすれば図書館は、「本オタク」だけの溜まり場から、はるかにダイナミックな場所に変貌します。」(p.5) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
学校図書館は、「学校にいるみんなを、読むことはもちろん、探究し、つなぎ、協働し、シェアし、そして創造することに誘うのです。」(p.5)→図書館は本がある場所だけではなく、さまざまなメディアを通じて、インプットとアウトプットを行う場所になり得る。 #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
ここまで読んで、工学院大学附属中学校・高等学校の図書館がまさにこうだったな、と思いました。訪問したときのレポートへのリンクを貼っておきます。
「学校がそうであるように、学校図書館も生徒が未来へのチャレンジを準備するための場所」(p.23)であることを、学校図書館員は説明すべき。学校図書館は「本があって司書がいればいいんだ。ほかに何もいらない」わけではない。 #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
「ノーム・チョムスキーが言うように、「五年前に教えたことを今も教えているのなら、その分野が終わっているか、もしくはあなたが終わっている」のです。」(p.23)→なんてズギュンと来る言葉…w #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
この、チョムスキーの言葉の重たいことよ…。
続いて、「ハック2 方針、手順、慣習を見直す 重要なこと、つまり「生徒」にフォーカスしよう」では、忙しい学校図書館員の仕事のなかで何をすべきか、ということが書かれています。
「今こそ、目の前の生徒のために学校図書館のプログラムをアップデートするべく考えはじめるときです。」(p.31) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
「「座って静かに」の時代はすでに過去のものなのです。今日の図書館は活気ある学びの場となっており、生徒たちが声を出して意見を交換することを促す必要があると同時に、ほかの教職員や管理職と協働する関係をつくりあげることが必要な時代なのです。」(p.31) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
僕が通ったSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)では、図書館はメディアセンターと呼ばれていたけど、CNS(Campus Network System)、データベース、AVの3つのコンサルタントカウンターがあって、学生をサポートしていました。コンサルタントは学生がしていて、職員の方も助けてくていました。まさに、この仕組みだったな、と読んでいて思いました。
次に、「ハック3 「図書館工房」をつくる すべての生徒に、体験を通した学びの楽しみを提供しよう」。図書館工房は、原書では「LIBRATORY(Library+Laboratoryの造語)」が使われているそうです。メイカースペースを作ろう、ということが書かれていました。
「現実を認めましょう!読むことは、生徒にとって「イケてない」ことなのです。読むことによって想像力を身につけたり情報を得たりすることができますが、一部の子どもにとっては(大人にも?)、それはとても困難なことです。」(p.54) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
「学校図書館は、すべての生徒が自分の興味関心を追求できる場所であるべきです。そうなることで、生徒は図書館に繰り返しやって来るようになります。(略)学校図書館がすべての人に寄り添い続けていこうとするのであれば、多種多様なリソースをもつ必要がある」(p.54) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
「学校図書館は、本を収集したり保存したりするだけの場所ではなく、生徒が対話でき、コミュニケーションやコラボレーションすることができる動的な場所でなくてはいけません。」(p.54-55) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
学校図書館が、アナログもデジタルもどちらのメディアにも触れられて、本を読んだり資料を調べるインプットも、文章を書いたりディスカッションで思考を深めたりするアウトプットも、両方でできる場になるといいな、と思いました。
図書館工房では、「つくるバリエーションはさまざまなので、生徒が創造するために、ノーテク、ローテク、ハイテクな材料などといった多様な選択肢を提供しましょう。また、新しい材料と使い慣れた材料の両方が使えるようにする必要もあります。」(p.62) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 3, 2021
新渡戸文化小学校のVIVISTOPで参観させていただいた、デジタルとアナログを行ったり来たりする授業を思い出しました。VIVISTOPも、まさに工房でした。
blog.ict-in-education.jp
「ハック5 図書館プログラムをイノベーティブにする 図書館のプログラムをデザインして、カリキュラムに命を吹き込もう」では、「学校図書館は、コラボレーションというよりは孤立している」(p.108)という問題が取り上げられています。
「学校図書館は、多様なプログラムをダイナミックに、かつコラボレーションで行う場であるべきですが、多くの場合、本の倉庫や貸出の場所としてしか機能していません。しかし、図書館は、生徒と教職員にとってそれ以上の施設になれるはずです。」(p.108) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 4, 2021
学校図書館は、「どんなカリキュラム(教科指導、部活、行事)でも支援できる最高の機器と多様なテクノロジーが揃う場所」(p.108)にすることができます、と書かれていました。GIGAスクール構想で、一人1台の端末が入ってきた時に、学校図書館は大きく変わるチャンスかも知れません。そして、それは先生方にとってもとても助かることなのではないかと思いました。
「ハック8 学校図書館の重要性を主張する 利用者にとっての価値を伝えよう」では、「ディジタル世界にあって、図書館は時代遅れだと思っている人がいる」という問題点が書かれていました。
テクノロジーを次々に導入しても「教師も生徒もついていくことができません。そうなると、学校図書館と学校図書館員は、ますます自分たちが解決の一部を担えると気づくことになります」(p.184)と、これからの日本の学校にもあてはまる問題点だと思います。
学校図書館の重要性を主張するために、学校図書館が「今いかに価値のあるものかを示すことで学校図書館に対する認識を変えることができます」(p.185)→Google Classroomとかで、「○○先生のオススメ」とか発信できそう。電子書籍で、みんなが同時に読めたらなおいい。 #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
オンラインで情報をとる生徒が増えたからと言って、図書館の価値は下がらない。「ウェブサイトや情報評価のプロセスを生徒に示すだけの専門知識」を「提供し、信頼できる情報源を教えたり、フェイクニュースや関連ウェブサイトの評価方法を教える支援が可能」(p.198) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
「生徒は、建物としての図書館施設を訪れているのか、遠くからオンラインカタログを検索しているのかどうかにかかわらず、印刷された情報を見つける方法を知っておかなければなりません。また同時に、電子書籍を探しだして使いこなす方法も知っておくべきです」(p.199) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
「学校図書館員は、多様なメディアのなかから情報を見つける必要があるときに生徒が頼る、一つの解決策となります」(p.199) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
「ハック9 グローバルなつながりをつくる 図書館の周りにある壁をぶち壊そう」では、ICTを図書館で活用する事例が紹介されています。
「一般的に学校図書館は、標準的な教室よりもはるかに広いスペースがあります。複数のクラスに対応した十分な座席数もありますし、生徒を分散させるための十分なスペースもあります」(p.206)→テクノロジーも整備されていれば、学びのコミュニティになれる。 #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
「地理の教師が図書館にやって来て、「ミステリー・スカイプ」や「ミステリー・ハングアウト」のようなウェブカメラを使って、まるでゲームのように、約1300キロ以上離れた学校と自分の地理のクラスが接続することを想像してみてください」(p.206) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
「また、バーチャルツアーをする、ゲストスピーカーや著者の話を聞くなどといったさまざまな体験機会もたくさんあります」(p.207) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
このあたりは、コロナ禍でZoomなどのツールを使う経験が学校に蓄積したこともあるし、GIGAスクール構想で一人1台端末が実現すれば、さらに幅広い使い方ができるようになりそうです。グルっと回って、図書館員の専門性が求められるはずだ、と思っています。
学校図書館の可能性:「学校の外とつながることで、教師や生徒はもっと広い世界にアクセスすることができます。またそれは、遠く離れた場所や、物理的に訪問できない専門家に対してバーチャルなアクセスを提供することにもなります。」(p.228) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
最後の「ハック10 いつでもどこでも読むことを称える 図書館、学校、地域のなかで読む文化を促進しよう」では、「読む文化」についてのコメントがされていました。
「「言葉」は、毎日どこにいても私たちを取り巻いています。その「言葉」を読む能力が欠けているということは、学びのコミュニティーから孤立してしまうことを意味します。」(p.230) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
「読むことは、多くの人が当たり前だと思って軽視してしまいがちなスキルですが、ほかのすべてにおいて学びの基本となるものです。」(p.230) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
「読むことに対する感じ方は大人になるまで続き、将来の学業に影響を与える可能性すらあります。ですから私たちには、本に抵抗がある生徒や本を読むのが苦手な生徒に出会ったら、彼らが読むことに喜びを見つけられるように支援する方法を探す必要が生じてきます」(p.230-231) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
「本を読まない子どもや読むことが嫌いな子どもが存在するとは思っていません。まだ読むこととつながっていない子どもが存在するだけです。子どもが読むこととつながるのは、本のテーマやレベルとは関係なく、話しかけてくる本に出合ったときです」(p.231) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
「生徒を導くには、「昔ながらの読書はこうだ」という考え方に縛られることなく、あらゆる形の読む姿を称え、大切にする必要があります」(p.232) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
読者同士を結びつけよう→「「読み友」をつくるために異学年の生徒を組み合わせるといった方法もあります。スカイプやグーグル・ハングアウトを使って、世界中の生徒と「読み友」としてつながることも可能です」(p.233) #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
「読み友」をつくるのは、学外に出なくても、まずは学内でGoogle Classroomなどで部屋を作ったり、グループを作ったり、というのでもいいかもしれないと思いました。図書委員さんや司書の先生がコミュニティをリードしていく感じで。 #学校図書館をハックする
— 為田裕行 (@Hiroyuki_Tameda) February 5, 2021
この、「読み友」をつくるという活動は、学外に出なくても、まずは学内でGoogle Classroomなどで部屋を作ったり、グループを作ったり、というのでもいいかもしれないと思いました。図書委員さんや司書の先生がコミュニティをリードしていく感じでやれば、学内での情報共有にICTを活用しながら、「読む文化」が作っていけるように思います。
こうして10のハックを読んできて、学校図書館がICTを活用することで「学びのハブ」になる可能性についていろいろとアイデアも出てきました。「読む文化」は、情報活用能力の大事な要素だと思っていますので、学校に実装できそうなアイデアは先生方にどんどん発信していきたいと思いました。
(為田)