教育ICTリサーチ ブログ

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書籍ご紹介:『学校図書館をハックする 学びのハブになるための10の方法』

 クリスティーナ・A. ホルズワイス、ストーニー・エヴァンス『学校図書館をハックする 学びのハブになるための10の方法』を読みました。帯にある「「自分とカンケーねー場所」のイメージを壊す!」という言葉がとても好きで、手にとりました。

 タイトルにあるとおり、学校図書館が「学びのハブになるための10の方法」=10のハックが書かれています。じっくり読んで、Twitterハッシュタグ#学校図書館をハックする」を使って、ひとり読書会を実施したのをまとめておこうと思います。

 まず、「ハック1 学校図書館のスペースを変える 図書館をデザインし直せば生徒はやって来る!」です。ここでは、そもそも、学校図書館がいかに魅力ある場所になり得るか、ということが書かれていました。

 ここまで読んで、工学院大学附属中学校・高等学校の図書館がまさにこうだったな、と思いました。訪問したときのレポートへのリンクを貼っておきます。

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 この、チョムスキーの言葉の重たいことよ…。

 続いて、「ハック2 方針、手順、慣習を見直す 重要なこと、つまり「生徒」にフォーカスしよう」では、忙しい学校図書館員の仕事のなかで何をすべきか、ということが書かれています。

 僕が通ったSFC慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)では、図書館はメディアセンターと呼ばれていたけど、CNS(Campus Network System)、データベース、AVの3つのコンサルタントカウンターがあって、学生をサポートしていました。コンサルタントは学生がしていて、職員の方も助けてくていました。まさに、この仕組みだったな、と読んでいて思いました。

 次に、「ハック3 「図書館工房」をつくる すべての生徒に、体験を通した学びの楽しみを提供しよう」。図書館工房は、原書では「LIBRATORY(Library+Laboratoryの造語)」が使われているそうです。メイカースペースを作ろう、ということが書かれていました。

 学校図書館が、アナログもデジタルもどちらのメディアにも触れられて、本を読んだり資料を調べるインプットも、文章を書いたりディスカッションで思考を深めたりするアウトプットも、両方でできる場になるといいな、と思いました。

 新渡戸文化小学校のVIVISTOPで参観させていただいた、デジタルとアナログを行ったり来たりする授業を思い出しました。VIVISTOPも、まさに工房でした。
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 「ハック5 図書館プログラムをイノベーティブにする 図書館のプログラムをデザインして、カリキュラムに命を吹き込もう」では、「学校図書館は、コラボレーションというよりは孤立している」(p.108)という問題が取り上げられています。

 学校図書館は、「どんなカリキュラム(教科指導、部活、行事)でも支援できる最高の機器と多様なテクノロジーが揃う場所」(p.108)にすることができます、と書かれていました。GIGAスクール構想で、一人1台の端末が入ってきた時に、学校図書館は大きく変わるチャンスかも知れません。そして、それは先生方にとってもとても助かることなのではないかと思いました。

 「ハック8 学校図書館の重要性を主張する 利用者にとっての価値を伝えよう」では、「ディジタル世界にあって、図書館は時代遅れだと思っている人がいる」という問題点が書かれていました。
 テクノロジーを次々に導入しても「教師も生徒もついていくことができません。そうなると、学校図書館学校図書館員は、ますます自分たちが解決の一部を担えると気づくことになります」(p.184)と、これからの日本の学校にもあてはまる問題点だと思います。

 「ハック9 グローバルなつながりをつくる 図書館の周りにある壁をぶち壊そう」では、ICTを図書館で活用する事例が紹介されています。

 このあたりは、コロナ禍でZoomなどのツールを使う経験が学校に蓄積したこともあるし、GIGAスクール構想で一人1台端末が実現すれば、さらに幅広い使い方ができるようになりそうです。グルっと回って、図書館員の専門性が求められるはずだ、と思っています。

 最後の「ハック10 いつでもどこでも読むことを称える 図書館、学校、地域のなかで読む文化を促進しよう」では、「読む文化」についてのコメントがされていました。

 この、「読み友」をつくるという活動は、学外に出なくても、まずは学内でGoogle Classroomなどで部屋を作ったり、グループを作ったり、というのでもいいかもしれないと思いました。図書委員さんや司書の先生がコミュニティをリードしていく感じでやれば、学内での情報共有にICTを活用しながら、「読む文化」が作っていけるように思います。

 こうして10のハックを読んできて、学校図書館がICTを活用することで「学びのハブ」になる可能性についていろいろとアイデアも出てきました。「読む文化」は、情報活用能力の大事な要素だと思っていますので、学校に実装できそうなアイデアは先生方にどんどん発信していきたいと思いました。

(為田)