佐藤雅彦・大島遼・廣瀬隼也『解きたくなる数学』を読みました。NHKの「ピタゴラスイッチ」を制作しているメンバーが作った数学問題集です。実際の景色と数学の問題が行き来するように見せてくれる問題が全部で23問収録されていて、それぞれの問題で「論理の組み立て」+「抽象化」+「新しい考え方の枠組み」+「思考のジャンプ」の楽しさを感じることができます。
僕自身は、中学校までの数学は解法の丸暗記とパターン認識だけで逃げ切って、高校からの数学は苦痛以外の何物でもなかったのですが、「考えてみたいな」と思わされる問題ばかいです。少しだけ考えてみて、ページをめくって考え方と解説を読むと、「ああ!」と思える。そういう体験をしばらくしていなかったので、とても楽しかったです。
「偶奇性」や「鳩の巣原理」などの言葉も、すごく可視化されて腑に落ちるのです。
問題の提示の仕方、考え方と解説のビジュアルでの表し方など、算数や数学の教材(デジタルでもアナログでも)を作るときに参考になりそうだと思いました。
あとがき的に巻末で読める「この本はこのようにして生まれた」という文章の中で、佐藤先生が、「どこかの中学の入試問題の図が、実写のタイル(トイレの壁のタイル)に載っかっていたらどうだろう?」と考えた様子が書かれていました(p.129)。この、「テストの問題」をリアルの世界にもっていけるか、それを人にどう伝えるか、というところこそが、発問の肝だし、佐藤先生のものすごいところだな、と感じます。
現実の世界に数学の問題がデザインされると ――
ひと目で問題の意味が分かる。
ひと目で問題を解きたくなる。
このあと、中学2年生の息子にこの本を貸してあげようと思います。彼がどんなふうに読むのか、興味を持ってくれるのか、さらっと読んで他のことに興味を移してしまうのか、気になります。親子で読んでも絶対おもしろいと思います。
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巻末には、『解きたくなる数学』の著者たちがテキストにした本として、フォミーン、ゲンキン、イテンベルク『やわらかな思考を育てる数学問題集』(全3冊)とセルゲイ・ドリチェンコ『ロジカルな思考を育てる数学問題集』(上下巻)も紹介されていました。
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佐藤雅彦先生がSFCで研究会(ゼミ)を持っていた時期は、僕の在学時期とは重なっていないのですが、研究会の様子は、2003年の雑誌『広告批評』で特集されていて、この本も何度も読んだな、と懐かしく本棚から引っ張り出して読み返してみました。
(為田)