国際政治記者の田中孝幸さんが書いた『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』を読みました。地政学とは、地理的な条件に注目して、軍事や外交といった国家戦略、また国同士の関係などを分析、考察する学問です。この本のなかでは、地球儀を見ながらさまざまな国のこと、国際関係のこと、戦争のことなどを学んでいくことができます。
先生役となるのはカイゾクと呼ばれる年齢不詳の男性です。高校一年生の大樹(だいき)と中1の妹・杏(あん)の兄妹に地政学について話していきます。
地政学は地形や地理的な条件という、人為的に決まったものではないことが大きく国家戦略など政治に関わりがある、とする学問ですが、地形や地理的な条件はテクノロジーの発達によって条件が変わることも多くあります。この本のなかでも、通信のためのケーブルを誰が管理するか、核ミサイルの発射施設をどこに置くか、などのテクノロジーの話が書かれています。
もちろん、インターネットやSNSなども出てきます。途中でカイゾクがインターネットやSNSについて語る部分もありました。
「昔は、遠く離れた国で起きたことが、すぐに自分の国に影響をおよぼしたりしなかった。でも今は、インターネットで情報は一瞬にして伝わる。そういう意味で、距離の意味は昔に比べてかなり小さくなった。悪意のあるうそや偏見に基づく情報も、世界中にすごい勢いで広がるようになった。技術は進歩して、世の中の環境は大きく変わったのに、リーダーたちやそれを選んだ人々の考え方は、それに追いつくほど進んでいない。むしろSNSで同じ考えの人たちが集まるようになって、さらに内向きになっている。現代人はインターネットという大きな剣を手に入れたが、それを十分、安全に使いこなせず、自分を傷つけているという状況になっている」(p.190)
地政学は過去の戦争のことを知るためにももちろん重要ですし、いまの世界で起こっていることを知るためにももちろん重要です。インターネットなどテクノロジーも取り込んで地政学も変わってきているのだということを知るのは大事だと思いました。
本の最後にカイゾクから出される質問と、それに答えた大樹と杏の答えとが、とても素晴らしいなと思いました。中学生・高校生がこれを読んでみて、世界のことについて日本のことについて興味を持ってくれたらいいな、と思いました。
(為田)