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なぎさ公園小学校 授業レポート No.2(2023年7月12日)

 2023年7月12日に、なぎさ公園小学校を訪問し、木下克志先生が担当する1年こごみ組の不思議 緑(生活)の授業を参観させていただきました。木下先生は、「ビオトープへ行って夏を探してきてもらいます」と言います。季節を五感で感じてほしいということを伝えます。

 ビオトープへ行く前に、ロイロノート・スクールで子どもたちにワークシートを配布します。子どもたちは五感のどれかで夏を感じて、写真でその様子をロイロノート・スクールに貼りつけます。
 ワークシートの中には、五感を表す“手”、“口”、“鼻”、“目”、“耳”のイラストが書かれたカードがあり、自分が五感のどれを使って夏を感じてきたかを、この五感のカードを写真につけることで表せるようになっています。

 木下先生が「“耳”のカードは、夏だとどんなことが感じられるかな?」と質問します。子どもたちからは「ジージーワ…って、セミの鳴き声!」というふうに答えが返ってきました。「“耳”のカードは音だから、写真じゃ伝わらないよね?そういうときは、動画でもOKです」と先生は言っていました。こうした説明をすることで、子どもたちは写真と動画のメディアの特性の違いについて考えることもできると思います。

 「夏だなあ、と思うものをたくさん写真・動画におさめてください」と先生が言い、みんなでビオトープへと出かけます。
 ビオトープへ向かう途中で通った校庭で、飛んでいるツバメを見つけて、「ツバメ!撮りたい!」と言っていた子もいました。ツバメはとても速く飛ぶので、写真だと撮影するのが大変ですが、動画で撮影してツバメが映っているところを画像に切り出すこともできます。iPadのカメラを自分の思い通りに使うなかで、映像メディアの特性を感じることにも繋がっていきそうだと思いました。

 ビオトープでも、いろいろなものを見つけてはみんなで写真を撮影し、話し合ったり先生に質問したりしていました。「夏を五感で感じよう」という課題のなかで、子どもたちはいろいろなことを発見していました。その発見をiPadで撮影して、みんなと共有することがこの活動でできます。

 教室へ戻ってから、ロイロノート・スクールのワークシートに写真を貼り付けます。写真の横に、五感のどれを使ったのかがわかるように五感のカードを写真の横において、感想を書いていきます。

 木下先生は、子どもたちが書いている文章を見ながら質問をして表現を広げていきます。例えば、触覚を使ったと手のカードを入れている子には、「さわってみて、どんな感じがした?」と質問をします。子どもは、「つるつるだった」と言って、ロイロノートのカードに書き加えていきます。感じたことを言語化させるところは、先生の手助けによってより可能性が広がるところだと思います。
 「カードを2つ使ってもいいですか?」という質問があがりました。“目”と“手”のように、五感を複数使って夏を感じていた子もいることがわかります。

 授業の終盤には、書いたワークシートを提出してもらって、クラス全体で見る時間をとりました。木下先生が「iPadをupside-downしてください」と言うと、みんなiPadを閉じて発表を聞く時間になりました。こうして決まり文句を作っておいて、iPadを使う時間とみんなで話し合う時間を区切っていたのが印象的でした。

 子どもたちが提出したカードを木下先生がホワイトボードにプロジェクタで映して、そのワークシートを書いた子に、「目と手で感じました。理由はきれいだったからです。あと、夏らしかったからです」というふうに説明をしてもらっていました。撮影してきた写真と、五感のどれを使ったのかのカードを見ながら説明が聴けるのがいいと思います。

 「“耳”で感じたカードは少なめですね」と先生が言っていました。五感のカードがロイロノート・スクールの提出箱で全員のワークシートを一覧するときにも見えるので、全体の傾向を見るための工夫として面白いと思いました。

 クラスのみんなが発表を喜んでするわけではありません。発表が苦手な子もクラスにはいます。この日も、木下先生が「これ、とてもいい写真だから、発表してみる?」と促してみても、恥ずかしがって顔の前で×マークを作っている子もいました。でも、何も書けていないわけではなくて、プロジェクタで映されているその子のワークシートには長い文章が書かれていました。
 口頭での発表は苦手でも、時間をかけて文章を書くことで自己表現することは得意な子はいます。無理に全員が同じように発表するのではなくて、発表しなくてもプロジェクタでワークシートを映してみんなに読んでもらうという方法もある授業は、表現の選択肢を広げてくれることに繋がると思います。
 こうした授業が多くあることは、先生方から子どもたちへの「プレゼンテーションでも、文章で書くのでも、どちらでもいいよ。自分の得意な方、好きな方で取り組もう」というメッセージにもなると思いました。

 No.3に続きます。
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(為田)