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書籍ご紹介:『大学の先生と学ぶ はじめての歴史総合』

 北村厚 先生の著書『大学の先生と学ぶ はじめての歴史総合』を読みました。歴史総合は「世界史と日本史を一緒に学ぶもの」ということは知っていましたが、実際にいままでの日本史と世界史の授業とどう変わるのだろう、ということを知りたくて手に取りました。

 著者の北村先生は、何年か前まで高校で世界史を教えていたということで、「この本を書くとき、教室で学ぶ内容と接続できるように、現場感覚をわすれないようにしたいと思った」(p.4)と書かれていました。

 読んでいて、歴史の出来事を3つの大きな変化で捉えてみていく、というのがすごくおもしろそうだと感じました。

歴史総合は世界史と日本史を一緒にして学ぶものだ。でもいったいどうやって、そのふたつを結びつけているのだろう? 歴史の出来事はそれぞれの国でバラバラに発生することが多いから、それらがかならず関係しているわけじゃない。だけど、とくに19世紀以降の世界と日本は、同じような方向へと変化していった。
大きな変化は3つある。①近代化、②大衆化、③グローバル化だ。これらの変化は現代にも続いていて、私たちにも関係しているんだ。これらは個別具体的な出来事ではなくて、時代を代表する、共通する現象とでも言えばいいかな。ちょっと難しいけど、こういうのを歴史的な概念という。
例えば近代化という大きな概念にはいろいろな要素があって、工業化とか市民社会国民国家の成立といった小さな概念がある。それらの概念はどこの歴史でもあてはまったり関係したりするけど、そこで起こった出来事は個別であって共通していない。(略)
近現代における概念は、世界でも日本でも共通して考えることができるから、個別の事例についてそれぞれの影響関係を考えたり、どこが同じでどこが違うのか比較したりすることもできる。概念が同じであれば、そこで起こる問題――たとえば工業化なら公害や貧富の差の問題なども共通してくる。これが概念によって世界と日本をつなぐということなんだ。
歴史総合では、こういった歴史的な概念が先にあって、個別の歴史的な出来事は概念を考えるための素材だとわりきって考えてみるといい。今までの歴史の勉強は、個別の出来事をおぼえることを目的としていたけれど、歴史総合ではぜんぜんちがう発想になっているのがわかるね。(p.10-11)

 読み進めていくと、実際に教科書で学ぶ内容を題材として説明がされていました。そのなかで、「産業革命は、なぜイギリスで起こったのだろうか?」と考えるところがありました。

じゃあさっそく、教科書の記述を整理しよう。このように歴史の原因を探究する場合、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)によって整理するとわかりやすくなる。

(いつ)18世紀後半に
(どこで)イギリスのマンチェスター
(誰が)綿工業の従事者が
(なぜ)インド産の綿布との価格競争に勝つために
(どのように)紡績・織布の工程を機械化して
(何を)綿布を安く大量生産した。

だいぶわかりやすくなったね。しかしこれだけではただ教科書の文章をまとめただけで、なぜそうなったのかまでは深められていない。
次にそれぞれの情報をほりさげていこう。ほりさげ方はいろいろあるけど、ここでは5W1HをすべてWhyに変換するのがやりやすい。例えば「(いつ)18世紀後半に」であれば、「なぜ18世紀後半に起こったのか?」という問いができる。(p.28)

 この、「5W1HをすべてWhyに変換する」というのは、あまり考えたことがなかったので、とても勉強になりました。こうした「Why」をつきつめていくための素材として歴史的出来事を見ていく、というのはおもしろいと思いました。そうした視点で教科書を読んで情報を整理し、考えていくということが授業の中でできたらいい、と思いました。

 これからもっと歴史総合の授業を参観させていただいて、先生方のお話を聴きながら、この本の内容も自分のなかに落とし込んでいきたいと思います。

(為田)